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057 行田ゼリーフライ

「行田ゼリーフライ、おまちどうさま!」


俺は紙の包みの中で湯気を立てる行田ゼリーフライを受け取る。


(小判の形の『銭(ぜに)フライ』訛ってゼリーフライか。お菓子のゼリーじゃなかったな。……わ、分かってたけど)


表面は黄金色にカラッと揚がり、ソースがたっぷりと染み込んでいる。ほくほくとした湯気と一緒に、ソースと香ばしい香りがふわりと立ちのぼった。


たまらず、かじりつく。

カリッと衣が小気味いい音を立てて割れ、中からほくほくの生地が現れた。噛むたびに練り込まれたニンジンとネギの甘みがじゅわりと広がり、おからとジャガイモの素朴な香りが鼻に抜ける。


ウスターソースの甘酸っぱさが全体の味をきれいに引き締めている。




「はふ、はふ……うまいな、これ」

あっという間に平らげる。食べ歩きにはちょうどいい大きさだ。


「さて、次は何を食べようかな……」

次のグルメを物色しながら歩いていると、ふと視界の端に妙なテントが映った。


「……何だこのテントは?」

黒い幕に、鈍く光る金属の看板。テントの中には、モンスターの素材で作られた防具がずらりと並べられていた。マップを広げてみるが、このテントの情報はどこにも載っていない。


「って、これレア店だ!」


足を踏み入れると、テントの奥の椅子に座っている虚ろな目のおじさんに話しかける。


「こんにちは」

「どれも最高の鎧だ」


目の前にウインドウが現れた。



【鎧】

大蛙の油革胴(守備力+15)……280G

火に弱いが、水属性のダメージを少し軽減する。


甲殻虫の重胸甲(守備力+24)……1,000G

打撃攻撃に対して耐性がある。


地竜の鱗鎧(守備力+38)……4,200G

地属性の攻撃を無効化する。


黒炎豹の革鎧(守備力+45)……9,800G

素早さが下がらず、回避率が上昇する。

闇と炎属性に耐性を持つ。


不死鳥の羽衣(守備力+58)……28,000G

ミスリルを超える防御力と高い魔法耐性を持つ。

装備中、体力が微回復する。




「おお……」


どれも一級品だ。俺はウインドウを開いたまま、スマホを取り出してリサに電話をかけた。


「リサ、まだ会場にいるか?」

『何ー? 今シロコロホルモン食べてるんだけどー』


スマホから、酔っぱらった声が聞こえてくる。


「レア店を見つけた。しかもモンスター素材の防具屋だ。最高の鎧が買えるぞ!」

『んぐ! すぐ行く!』

「行田ゼリーフライの隣だ」




通話を切って待つこと数分。人波をかき分けて、リサが息を切らしながら駆けてきた。


「お、来たな」

「こんなところにレア店が……どうすればいいの?」

「謎店と同じだよ。店員に話しかければいい」

「店員さんこんにちは! おお!」


リサの目の前にも、ウインドウが現れたようだ。その表情がみるみる輝いていく。


「不死鳥の羽衣、高すぎるでしょ! 黒炎豹の革鎧……買うに決まってるでしょ!」


「防具は装備しないと意味がないぞ。ここで装備していくかい?」

「イエス!」

「お、おい」


リサの服の上に、黒い革鎧が出現する。艶のある黒い革の表面に、炎のような赤い紋様が浮かんでいた。


「かっこいいー! それに軽ーい! おじさんも買ったの?」


「いや、地竜の鱗鎧と黒炎豹の革鎧で迷っている」


「えー、ゴールドたんまり溜め込んでいるんでしょ! 黒炎豹の革鎧、買っておそろいにしようよー、ねーねー、おそろいにしよーよー!」


腕をつかんでせがんでくる。




「分かった分かった。黒炎豹の革鎧を購入」

「防具は装備しないと意味がないぞ。ここで装備していくかい?」

「ノーで」


店番のおじさんが、カウンターの上に黒炎豹の革鎧をどさりと置いた。


「えー! 装備しないのー! ノリわるいー!」

「はいはい。食べたいのがあったら、奢ってやるぞ」


「富士宮やきそばと、横手やきそばと、ひるぜん焼そば!」

「……やきそば好きなのか?」


俺は黒炎豹の革鎧を『道具』にしまい、革鎧を着てはしゃいでいるリサに苦笑するのだった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

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