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056 KC Brisket & Burnt Ends

土曜日。


『ご当地グルメフェスティバル』の会場の河川敷は、朝から大勢の人で賑わっていた。醤油と肉の焼ける匂い、甘酸っぱいソースの香り、スピーカーから流れる軽快な音楽。人の波がゆっくりと流れていく。


「こういうの初めて来たが、賑わってるな」

「わざわざ旅行しなくても、ご当地のグルメが食べられるからね」


リサが笑いながら、入り口でもらった会場マップを広げる。





目当てのBBQ店のテントの場所を目指す。アメリカ国旗がはためくテントの前には、もう行列ができている。看板には力強い字で、『低温でじっくり12時間! ダンジョン肉使用! 本場カンザスシティのブリスケットサンドイッチ』と書かれていた。


「始まったばかりなのに、もう並んでるのか。さすがだな」


俺たちも列に並ぶ。ほどなくして俺達の番に、星条旗柄のエプロン姿の店員さんがこちらに気づき、手を振った。


「こんにちは。大盛況ですね」

「おかげさまで! 何にしますか?」


「当然、ブリスケットサンドイッチとバーント・エンズ。あと、ブルーバードのアンフィルタード・ヒートを」

「私も同じのをお願い!」


「はい、ただいま!」




数分後、店員さんが料理を手に戻ってきた。紙に包まれたサンドイッチと、大きな紙コップに盛られたバーント・エンズ。ビールは紙コップに注がれている。


「相変わらず、美味そうな匂いだ」

「それじゃ店員さん、頑張ってね!」

「ありがとうございます。またお店に来てくださいね!」




料理を受け取り、人混みを抜けて河川敷へ向かう。


土手の斜面のコンクリートの階段に、二人並んで腰を下ろした。


「サイズは控えめだな」

「他の料理も食べたい人が多いからね。いろいろ回れるのがいいのよ」


「それじゃ、冷めないうちに食べるか」

「そうね。乾杯!」

「乾杯!」


紙コップをこつんと当てる。濁りのある淡い黄金色のビールが、きめ細かな泡をまとって揺れる。


まずは一口。

ふわりと柑橘の香りが鼻を抜け、やわらかな小麦の甘みが舌の上に広がる。ホップの苦味は控えめで、喉を滑り落ちる冷たさが心地いい。昼から飲むビールの背徳感が、旨さを倍増させる。


「ぷはぁ……昼から飲むビール、最高だな」




まずは待ちに待ったブリスケットだ。


ふわふわのバンズを持ち上げると、こぼれそうなほどたっぷりのブリスケットが顔を出す。ひと切れが厚く、断面にはスモークの淡い紅色の『スモークリング』が浮き上がっている。表面は黒く色づき、まるで『樹皮(バーク)』のような香ばしい衣をまとっていて、そこに甘酸っぱいカンザスシティ風のBBQソースが艶やかに光っていた。


目いっぱい口を大きく開けてかぶりつく。その瞬間、ほろりと肉の繊維がほどけた。スモークの香ばしさが鼻に抜け、噛みしめるたびに肉汁があふれ出してくる。低温で何時間も燻された肉は、歯がいらないほどに柔らかい。脂の甘みがじゅわりと広がり、濃厚な旨味が口いっぱいに満ちていく。


そこへ、ソースの甘酸っぱさとピクルスのシャキッとした酸味が飛び込んできて、味の輪郭を一気に引き締める。


「やばい……これ、美味すぎる」

「ビールと一緒に食べると、無限に食べれるわね!」


ビールで口直しをして、もう一口。肉の脂と甘いソース、ピクルスの酸味、ビールの軽やかな苦味が、ひとつの流れになって胃袋に落ちていく。





続いて、バーント・エンズ。


紙コップを覗き込むと、角切りの肉がつやつやと輝いていた。表面は黒い樹皮(バーク)で覆われ、キャラメルのようにとろりとしたソースが絡んでいる。竹串で刺し、そっと持ち上げる。


ひと口で頬張ると、ほろりと崩れるほど柔らかく、表面のカリッとした焦げ目と、中のとろける肉の食感が同時に押し寄せてくる。濃縮された肉の旨味と脂がじゅわっと弾け、甘く香ばしいソースが舌に溶けるように絡んだ。スモークの香りとキャラメルのような甘みが後から追いかけてきて、思わず目を閉じてしまう。


ビールをあおると、甘辛いソースの余韻が洗い流され、次のバーント・エンズへと手が伸びる。


「カンザスシティBBQの至宝と言われるわけだ」

思わず声が漏れた。


「これ、おつまみにもおやつにもなるね。止まらないやつ!」

リサもバーント・エンズを気に入ったようだ。




ブリスケットサンドイッチも、バーント・エンズも、気がつけばきれいに食べ尽くしていた。


「「ごちそうさまでした」」

二人同時に手を合わせる。


「さてと、本場のBBQも食べたし、どうしようかな」

「私は気になるグルメがあるから、行ってくるわ」


「おう! それじゃ、また月曜日に」

「じゃーねー、またねー」


手を振りながら、屋台の並ぶほうへ軽い足取りで駆けていくリサ。


俺は入り口でもらったマップを広げた。


有名どころの富士宮やきそばに、厚木シロコロ・ホルモン、横手やきそば、十和田バラ焼き。その他にも、美味しそうなグルメの屋台がこれでもかと並んでいる。


「胃袋の容量は有限だ。これは計画的に回らないと!」




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

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