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047 二見興玉神社

日曜日。


伊勢の清々しい朝の空気を吸い込みながら、俺は夫婦岩で有名な『二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)』へと足を運んだ。


海に面した境内は、絶え間なく打ち寄せる波の音と、鼻腔をくすぐる潮の香りに包まれている。参道のあちこちには神の使いとされる『二見蛙(ふたみかえる)』の石像が鎮座しており、『無事にかえる』という縁起を担いでいるらしい。ダンジョンという危険と隣り合わせの場所に潜る身としては、これ以上なくありがたいご利益だ。


手水舎で手と口を清め、海風にはためくのぼり旗の横を通り抜けて拝殿へと向かう。


二拝二拍手一拝。


これからの探索の無事と安全を静かに祈願した。


参拝後、授与所で御朱印をいただく。夫婦岩と昇る太陽の力強い朱印に、流麗な墨文字が重なる見事なものだ。御朱印帳にまた一つ、旅の大切な思い出が刻まれた。




波打ち際の遊歩道を散策する。しめ縄で固く結ばれた大小の岩、夫婦岩の正面に立つと、荒々しく岩肌に打ち付けては砕け散る白波の迫力に、思わず時間を忘れて見入ってしまった。






昼――


潮風を浴びて歩き回ったせいか、すっかり腹が減った。参道から少し離れたところにある、地元で愛されていそうな渋い佇まいの和食処にふらりと入る。

小上がり席に腰を下ろし、お茶をすすりながらお品書きを眺める。


「せっかくだから伊勢海老を食べたいがやっぱり高いな……おっ、伊勢海老の味噌汁、これは手頃だな!」


豪華な姿造りも捨てがたいが、昼食には少しハードルが高い。俺は『お刺身定食』に単品の『伊勢海老の味噌汁』を追加し、さらにビールと枝豆を注文した。


あとは電車に揺られて帰るだけ。昼間から堂々と酒を飲めるのは、帰路につく旅行者の特権だ。




「おまちどうさま」


まずは冷えたビールと枝豆が運ばれてきた。グラスにトクトクと注ぎ、一気に喉へ流し込む。


「くぅーっ……!」


キレのある苦味と炭酸が染み渡る。真昼間から飲むという背徳感が、最高のスパイスとなって胃袋を刺激した。

ビールと枝豆でちびちびやっていると、メインのお刺身定食と伊勢海老の味噌汁が到着した。


「おお……」


大きなお椀からはみ出すように、真っ赤に茹で上がった伊勢海老の半身が豪快に鎮座している。立ち上る湯気からは、伊勢海老特有の香ばしい磯の香りが漂ってきた。


両手でお椀を持ち上げて汁をすする。


「はあーー、伊勢海老の出汁がしみわたるーー」


赤出しのキリッとした風味の奥から、伊勢海老のミソの強烈な旨味と深いコクが怒涛のように押し寄せてきた。エビの出汁が限界まで溶け出したスープは、もはや極上の和風ビスクだ。


殻の隙間に詰まった身を箸でほじくり出して頬張ると、ブリッとした弾力のある歯ごたえと共に、エビの強い甘みが口いっぱい無限に広がる。




そして伊勢海老の感動もさることながら、刺身も素晴らしい。新鮮なタイやカンパチは、噛み締めるほどにコリコリとした食感と上質な脂の甘みが溢れ出す。


ワサビをちょこんと乗せて醤油を少しつけ、口へ放り込む。魚の新鮮な旨味が口の中で見事な旋律を奏でる。


箸もビールも止まらない、至福のひとときだ。






すっかり満腹になり、心地よいほろ酔い気分で店を出る。

帰りの電車の時間まで少し余裕があったため、俺は再び海岸沿いへと足を向けた。


夕刻。海に沈みゆく夕日が、空と水面を燃えるような茜色に染め上げている。

オレンジ色の光を背に受け、黒々としたシルエットとなって浮かび上がる夫婦岩は、昼間の荒々しさとはまた違った、幻想的で厳かな美しさを放っていた。


ザザァーッという波の音を聞きながら、大きく深呼吸をする。


「いい旅だったな」


神聖な空気に触れ、美味しいものを食べ、すっかり心身がリフレッシュできた。しみじみと呟き、俺は夕日に染まる海に背を向けた。明日からはまた、騒がしい相棒とのダンジョン探索が待っている。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

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