041 ワイルドボアとゴブリンライダー
木曜日――
地下8階、これまでと同じような大草原が広がっていた。
「さて、地下8階からは、イノシシの強化版である『ワイルドボア』と、それに乗った『ゴブリンライダー』が新しく出てくる」
「ゴブリンライダーって、ワイルドボアの背中に乗って斧を投げてくるんだっけ?」
「そうみたいだな。初めて遭遇したら、まずは俺の全体魔法でゴブリンライダーとワイルドボアの両方を攻撃してみて、様子を見てみたい」
「OK。大会に向けて、私たちももっと強くならないとね」
「そうだな……ちょっと待ってくれ、溜まっているボーナスポイントを少し振り分けたい」
俺は空中にステータスウィンドウを呼び出した。
柏木湊
レベル16
筋力 :25
身の守り:25
素早さ :25
魔力 :25
運の良さ:26
ボーナスポイント:79
リサとパーティーを組んでダンジョンに潜るようになってからレベルが1上がり、現在はレベル16になっている。
ポイントを偏らせて特化型にするのも手だが、今後の攻略のことも考えると、バランス良くステータスを底上げしておきたい。
まずは、キリよく全部の数値を30まで上げてみるか。
柏木湊
レベル16
筋力 :30
身の守り:30
素早さ :30
魔力 :30
運の良さ:30
ボーナスポイント:55
一気に上げすぎて感覚が狂うと危険なので、少しずつ上げて様子を見ることにする。
「よし、待たせた」
「それじゃ行ってみよう!」
ウィンドウを閉じ、草原へと足を踏み出す。
歩き出した瞬間、俺は確かな変化に気づいた。
「体が軽い。……もう何も怖くない!」
「何言ってるの、おじさん」
某死亡フラグみたいな台詞を思わず口走ってしまったが、リサには通じず冷たいツッコミが返ってきた。
しかし、大げさでもなんでもなく、本当に体が軽かった。道中で遭遇した草原ウルフを相手に軽く剣を振ってみたが、踏み込みの速度も剣の軌道も一段階鋭くなっている。たった5ポイントの差で、これほどまでに世界が変わるとは。
そのまま警戒を解かずに進んでいると、俺の『索敵』が新たな気配を捉えた。
「ん! 前方に反応4! 2つずつの反応が重なって動いてる」
「いよいよゴブリンライダーね?」
「投げ斧に気をつけろ!」
俺が警告を発した直後、ダッダッダッ! と地響きのような激しい足音が迫ってきた。
高い草を掻き分けて姿を現したのは、ドラム缶ほどもある巨大なイノシシ――ワイルドボアだ。そしてその背中には、凶悪な笑みを浮かべて手斧を構えたゴブリンライダーが跨がっていた。それが横並びで2体、猛スピードで突進してくる。
「小火炎波!」
俺が火炎の波を生み出す全体魔法を唱えたのと、ゴブリンライダーが手斧を力任せに投擲してきたのは、ほぼ同時だった。
ガツンッ!!
咄嗟に構えた青銅の盾に手斧が直撃する。重い衝撃が、腕に伝わってくる。
その直後、俺の放った火炎の波が2体のワイルドボアとゴブリンライダーを飲み込む。
「ギャギャァァッ!」
激しい炎に包まれ、背中に乗っていたゴブリンライダーたちはたまらず絶叫を上げ、ボアから転げ落ちて光の粒子へと変わった。
しかし、炎の中から突き破るようにして、ワイルドボアが2体、止まることなく突っ込んでくる。
「トドメは剣でやるよ!」
「了解!」
リサが鋼鉄の剣を構え、即座に左のワイルドボアへと向かって駆け出した。
俺も右手にウルフソードを構え、右から迫るワイルドボアを真正面から迎え撃つ。
体中の硬い毛がチリチリと焦げ、鼻をつく嫌な匂いを撒き散らしながら、ワイルドボアが最後の力を振り絞って巨大な牙を突き立ててきた。
ステータスを上げた今の俺なら、このスピードにも余裕で反応できる。
突進を半身になってギリギリでかわし、すれ違いざまに無防備になった太い首筋へウルフソードを全力で叩き込む。
ズバァッ!
確かな手応えと共に首を裂かれたワイルドボアは、そのまま数メートル転がり、光の粒子に変わってゴールドを落とした。
息を吐いて振り返ると、リサも強烈な剣撃で、もう1体のワイルドボアにきっちりとトドメを刺したところだった。
「ふう……どうだった?」
俺が声をかけると、リサは剣を納めながら、頬を膨らませて唸った。
「むーー……」
「どうした?」
「やっぱり、私も魔法覚えようかな。おじさんの全体魔法、すごく便利だし」
「魔法を売ってくれる、レア店に出合えるといいな」
「絶対見つけてやるんだから!」
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ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。




