039 カラオケ
「な、だから言ったろ。ほとんどカットされてるって」
カラオケのパーティールーム。壁に設置された巨大なモニターに番組のエンドロールが流れるのを見届けながら、俺は肩をすくめて言った。
結局、俺がテレビに出演(?)した番組というのは、探索者の身体能力を検証するという名目の、運動会のようなバラエティ番組だった。
内容は完全に珍プレー好プレーをまとめた構成になっており、メインでカメラに抜かれていたのは、SNSで人気のイケメン探索者ばかり。俺みたいなくたびれたおじさんは、モブとして時間にしてわずか数十秒、チラッと映っていただけだった。
「うーん……確かに一瞬だったね。でも、チラッと映ってたけど、おじさん絶対手抜いてたでしょ」
リサがウーロン茶のグラスを傾けながら、ジト目で俺を見てくる。
「まあ、長丁場で途中から完全に飽きてたからな。それに、俺はフィジカル特化じゃなくて、平均的なステータスだから、あんな運動会じゃ目立たないんだよ」
口では適当な言い訳をしつつ、実際は、ステータスのボーナスポイントをほとんど振らずに温存しているだけなんだが……。
とはいえ、ゴブリンアーチャーのような厄介な敵も増えてきた。これから被弾のリスクを考えると、温存しているポイントを、そろそろ使った方がいいかもしれないな。
「もったいなーい。せっかくテレビに出るチャンスだったんだから、もっとグイグイとカメラの前に行って目立てばよかったのに!」
「勘弁してくれ。そういうのは、元気な若者たちに任せるよ」
俺はテーブルの上に残っていた、すっかり冷めてしまったピザとフライドポテトを、胃の中へと片付けていく。
「さて、番組も終わったし、そろそろ……」
俺が帰り支度を始めようとすると、リサが素早くカラオケのタブレットを手に取った。
「まだ部屋の時間あるし、少し歌っていこうよ!」
「いやいや、番組が始まる前に、散々歌ったじゃん」
「もう! あと一曲、一曲だけだから!」
リサがマイクを握りしめ、強引に曲を送信する。
イントロが流れ出し、ノリノリで歌い始める彼女を見て、俺は深くため息をつきながら再びソファに深く腰を下ろした。
――結局、『一曲だけ』という言葉が守られるはずもなく。
1時間、タンバリンを叩きながらリサの元気なソロライブに付き合わされる羽目になった。
カラオケボックスを出て、すっかり暗くなった駅前で「また明日ね!」と手を振るリサと解散する。
どっと押し寄せてきた今日一日の妙な疲労感を感じながら、俺は心に固く誓った。
今後もし、テレビの仕事が来ても、絶対に断ろう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。
これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!
ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。




