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038 テレビ

水曜日の朝。


受付カウンターで探索者証を提示し、いつものように手続きをしていると、顔馴染みの受付嬢がニヤニヤとした笑みを浮かべて話しかけてきた。


「柏木さん、今日は楽しみですね」

「ん? 何がですか?」

「もう、恥ずかしがってるんですかー? 柏木さんが出演したあのテレビ番組の放送、今日ですよ」

「あー、そうなんだー」


俺が気まずさから適当な返事をすると、横にいたリサがバッと身を乗り出してきた。


「なになに!? おじさん、テレビ出るの!?」

「そうなんですよ、リサさん。柏木さん、パーティー組んでるのに話してなかったんですか?」


受付嬢が楽しそうに水を向ける。俺は慌てて手を振って否定した。


「いや、テレビって言っても、別に目立った活躍なんてしてないから。どうせ俺のところなんて全カットされてるよ」

「えーっ、本当にカットされてるか、しっかりこの目で確認しないとね! よーし、今日は早めにダンジョンから出よう!」


「おいおい……」

「今日の目標は、おじさん用の『草原ウルフのキャップ』をドロップさせること! いざ出発!」


リサは自分の頭に乗った緑色のウルフキャップをポンと叩き、意気揚々と転移陣の部屋へと向かっていった。




地下7階に降り立ち、俺たちは大草原の探索を開始した。

膝ほどもある草を掻き分け、モンスターの群れを狩っていく。


戦闘をこなしながら、俺は心の中でひたすら祈っていた。


(どうかこのまま、新しい階層の探索とレベル上げに夢中になって、テレビ番組の件なんてすっかり忘れてくれますように……)




昼過ぎ。

リサが鋼鉄の剣で仕留めた一匹の草原ウルフが光の粒子となって消えた後、そこにはゴールドと共に、もふもふとした緑色の帽子がぽつんと落ちていたのだ。


「やったー! レアドロップだ!」


リサが歓声を上げて拾い上げ、有無を言わさず俺の頭にスッポリと被せてくる。


「うんうん、おじさんも似合ってるじゃん。これで二人でお揃いだね!」

「……まあ、防具としての性能は悪くないからな。これで少しは安全になるか」


もふもふの耳当てがついた緑のウルフキャップを被ったおっさんと、若い女の子のペアルック。端から見たら一体どういうパーティーに見えるのか、あまり深く考えないようにした。


「よーし、目標のドロップ品も出たし! 帰ろう!」


リサは弾んだ声で言い放ち、地上へ向かう階段の方へとくるりと踵を返した。


「もう上がるのか? まだ時間はたっぷりあるぞ。せっかくだからもう少し稼いでいかないか?」


俺が必死に探索の継続を提案するも、リサはニカッと悪戯っぽく笑って言い放った。


「何言ってるの! 早く帰って駅前のカラオケのパーティールーム借りて、大画面でおじさんの勇姿を鑑賞しなきゃいけないんだから!」


……どうやら、テレビの件は1ミリも忘れていなかったらしい。


俺は大きなため息を一つこぼし、意気揚々と風に揺れる大草原を戻っていく緑の帽子の相棒を、重い足取りで追いかけた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

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