↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
30/61

030 趣味探し

日曜日。


朝の心地よい空気の中、俺は日課となっている庭のスライム退治をこなしていた。


『プシュー』


庭に湧いたスライムを木の剣で軽く叩き潰し、チャリンと落ちたゴールドを拾い上げる。


「さて、今日と明日は完全に休みだが……」


ストレスのない快適な生活を送るようになった今、社畜時代のように『休日はひたすら寝て体力を回復させる』という選択肢はなくなった。


地下7階以降の情報を探索者協会のホームページで調べ終えると、いよいよやることがなくなり、完全に暇を持て余してしまった。




「趣味でもあればいいんだけどな。趣味……自分の好きなこと……休日の昼間から飲み歩き……?」


ふと想像してみたが、それはダメ人間へ一直線な気がする。何か健全な趣味を探そう。家を出て、近所にある本屋へと足を運んだ。


ダンジョン探索も地下深くに進めば、いずれは日帰りできずに泊まり込むことになる。それを考えると、アウトドアやキャンプを趣味にするのもいいかもしれない。

アウトドアコーナーの棚の前に立ち、平積みされたキャンプ雑誌をパラパラと立ち読みする。


広々としたオシャレなテントや、座り心地の良さそうなチェアが紹介されているが、ウインドウの『道具』はダンジョン関連のアイテムしか収納できない。つまり、現代社会の製品はすべて自力で持ち運ぶ必要がある。


持ち運びを考えると、出来るだけ小さくて軽いものを選ばないとな……。いっそ折りたたみチェアだけ持っていって、アイマスクをして寝るか? いや、さすがにそれはキツいか。




雑誌のページをめくると、アウトドア用調理器具の特集が現れた。


「こういうのも必要なんだよな……。ダンジョン関連以外のアウトドア用品も入れられる、マジックバッグみたいな便利なアイテムが欲しいな」


そんな都合の良いものがあるかは分からないが、準備をしておくに越したことはない。


俺は初心者向けのアウトドア料理の本を何冊か立ち読みし、一番わかりやすくて良さげな一冊を選んでレジへ持っていった。






「さて、このあとはどうしようか」


買った本を入れた袋を提げ、あてもなく近所を少し歩く。

やがて、立派な鳥居を構える神社の前に出た。


「参拝していくか」


静かな境内に足を踏み入れ、手水舎で手と口を清めてから本殿へと向かう。

おもむろに賽銭箱の前に立った時だった。


「ん?」


年季の入った木製の賽銭箱のすぐ横に、やたらとポップな字体で書かれた真新しい看板が立てかけられていた。


『ゴールドでお賽銭OK!』


「……どういうこと?」


思わず声が出た。ダンジョンのモンスターが落とすゴールドが、お賽銭として認められたらしい。


そういえば以前、銀行が大量の硬貨を預かる際、手数料を取る様になったとニュースになった。その時、お賽銭で小銭が多い神社が困っていると放送してたな。


それに比べて、ゴールドならダンジョン協会に持っていけば手数料無しで現金化できる。御縁がある五円玉よりも、ゴールドの方が神社にとってありがたいのだろう。


神社の逞しさに感心を抱きつつ、俺は大きな鈴を鳴らしてから、ウインドウから取り出したゴールドを賽銭箱へと入れた。


二礼二拍手一礼。


目を閉じ、『ダンジョンで怪我をしないように』と、ひたすら祈願をする。




お祈りが終わり目を開け、ふと横を見ると、社務所に『御朱印』の案内が出ているのが目に入った。


「そういえば、テレビで年配の芸能人が御朱印集めをしてるのを見たな」


どうなんだろう、楽しいのかな?

社務所に飾られている見本の御朱印をぼんやりと眺めてみる。

墨で書かれた達筆で力強い文字。その上にドンと押された、鮮やかな朱色の大きな印。




……なんだろう。じっと見ていると、だんだん無性にかっこよく見えてきたな。

気がつけば、俺は社務所の奥で作業をしている巫女さんに声をかけていた。


「すいません、御朱印がほしいんですが」

「はい。ご参拝はお済みですか? 」

「はい」


「それなら御朱印帳は、お持ちですか?」

「いいえ、持ってないんですけど」


「それなら当神社のオリジナル御朱印帳もありますが、いかがですか?」

「あ、それでお願いします」

「はい。少々お待ちください」


笑顔が可愛い巫女さんが奥へ引っ込み、御朱印をしたためる準備を始める。


静かな境内で待ちながら、俺は新しく買った本と、これから手にする御朱印帳のことを考えた。

アウトドア料理と、神社巡り。俺の新しい趣味になるのだろうか。


数分後、巫女さんから声をかけられた。

こうして俺は、墨の匂いがする達筆な文字と鮮やかな朱色が美しい、初めての御朱印を授かったのだった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。