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003 謎の店

ダンジョンが現れて一ヶ月。

日本政府の動きは、異常なほど早かった。


政府の中枢に、現代ダンジョンラノベを熟読している政治家か官僚がいるんじゃないかというくらい、素早い対応だった。


まず『ダンジョン省』が設立され、『探索者協会』が発足。そして一般人がダンジョンを探索できるように『探索者制度』という法整備がまたたく間に行われたのだ。




そして俺は現在、探索者としてダンジョンに挑もうと準備をしていた。


ちなみにこの一ヶ月間、ずっとニートをしていたわけではない。

失業保険を申請し、アパートの庭に延々とポップするスライムを討伐し続けていたのだ。


現在のステータスはこうだ。


柏木湊

レベル15

筋力  :24

身の守り:24

素早さ :24

魔力  :24

運の良さ:25

ボーナスポイント:74


少しやりすぎたかなと思ったが、まあこれから未知のダンジョンに挑むのだ。レベルは高いに越したことはないだろう。


ちなみにボーナスポイントは、試しに1ポイントだけ『運の良さ』に振ってみたところ、案の定振り直しは不可だった。




『探索者協会』で無事に探索者証を手に入れた俺は、とある場所に来ていた。

ダンジョンと共に現実世界に出現した『謎の店』だ。


駅前にある寂れたシャッター商店街。そこの空き店舗に武器屋、防具屋、道具屋が並んでいる。


店前にはいかつい警備員が立っており、探索者証がないと中に入ることすらできない。店内で少しでも問題を起こせば一発アウトで探索者証を取り上げられる。二度と探索者になることはできず、そのまま警察のお世話になるという厳格なルールが敷かれていた。


買い物の決済には、当然ながら現金やクレジットカードは使えず『ゴールド(G)』が必要になる。


俺はここへ来る前、隣の空き部屋に出現した教会で『小・ヒール(100G)』『浄化(200G)』の呪文を習得済みだ。

現在の軍資金の残りは15,463Gとなっている。




現在、ゴールドは国や協会の取り決めで「1G=100円」の固定レートで取引されている。


最初は普通に金が使用されていると思われた金貨だが、現代技術の粋を集めても傷一つ付けることができず、溶かすことも不可能だったらしい。結果としてこの謎の店でしか使い道がないため、独自の通貨として機能しているのだ。


道具屋で売られている一番安いポーションが100G。つまり日本円にして1万円。


今後ダンジョン探索が盛んになり、命を繋ぐポーションの需要は爆発的に高まるだろう。「高価すぎて、いざという時に使うのをためらうのはよくない。だから1本1万円が妥当なラインだろう」というのが、お偉いさんたちの見解らしい。




俺の場合、アパートの庭に無限に出現するスライムを1分に1匹倒せば、1時間で60G(6,000円)、2時間で120G(12,000円)になる。


これだけで余裕で生活していける計算なのだが……問題がある。「ダンジョンに潜った形跡がない探索者が、一体どこで毎日ゴールドを稼いで換金しているのか?」と税務署や協会に尋問されたら、言い逃れができないのだ。庭のスライム湧きポイントが没収されたり、管理下に置かれたりするのは絶対に避けたい。


そのための、1日2〜3時間は家でスライムを討伐し、残りの時間はちゃんとダンジョンに潜って探索者として稼いでいるふりをしなければならない。






今日はとりあえず一番安い装備でいいからそれっぽいものを揃えておこうと思い、駅前の謎の店にやってきたのだ。




まずは、武器屋の暖簾をくぐる。

無表情のオヤジがカウンターの奥に立っていた。


「こんにちわ」

「いらっしゃい。ここは武器屋だ」


オヤジのセリフと共に、目の前にウインドウが現れた。




【剣】

木の剣(攻撃力+2)…… 5G

青銅の剣(攻撃力+11)…… 100G

鋼鉄の剣(攻撃力+33)…… 1,500G

ミスリルの剣(攻撃力+65)…… 12,000G


アイテムを売る




木の剣は、スライムがドロップしてすでに持っている。装備するとわずかに攻撃力が上がり、この一ヶ月のスライム狩りには大層重宝した。


ウインドウを操作して棍棒・メイスや槍、斧など他のページもチェックしてみたが、これと言って珍しいアイテムなどはなかった。


まあ、最初から目立つ武器を持って悪目立ちするのも嫌だから、まずは『木の剣』でいいか。


「キャンセル」


『キャンセル』と言うとウインドウがスッと消え、オヤジが再び無言で突っ立っているだけの空間に戻った。最近覚えたのだ。






「こんにちは」

「ここは防具屋だ。どんなようだい?」


隣の防具屋に入り、これまた無表情のオヤジに話しかける。

再び現れたウインドウから、服、鎧、盾、兜のタブを順番に確認していく。




【服】

布の服(守備力+4)…… 10G

布のマント(守備力+6)…… 50G

布のローブ(守備力+8)…… 80G


【鎧】

革の鎧(守備力+12)…… 150G

青銅の鎧(守備力+18)…… 500G

鋼鉄の鎧(守備力+32)…… 2,400G

ミスリルの鎧(守備力+50)…… 15,000G


【盾】

木の盾(守備力+4)…… 50G

青銅の盾(守備力+7)…… 250G

鋼鉄の盾(守備力+14)…… 1,200G

ミスリルの盾(守備力+30)…… 8,000G


【兜】

革の帽子(守備力+2)…… 80G

青銅の兜(守備力+7)…… 250G

鋼鉄の兜(守備力+16)…… 1,000G

ミスリルの兜(守備力+30)…… 9,000G


アイテムを売る




鋼鉄装備などを着込むと、初心者が多いであろう現段階のダンジョンで完全に浮いてしまう。かといって布の服では心許ない。


俺は『革の鎧』と『木の盾』と『革の帽子』を購入した。チャリン、チャリンと小気味よい音が鳴り、オヤジがカウンターの下から真新しい革の鎧、木の丸盾、そして革の帽子を取り出す。


「ここで装備していくか? 防具は装備しないと意味がないぞ」

「キャンセルで」


いくらなんでも、駅前でフル装備に着替えて練り歩くのは勘弁だ。ステータスウインドウの『道具』にすべて収納し、店を出た。


ステータスの『道具』コマンドは、ダンジョン関連のアイテムなら収納ができるようだ。






最後は道具屋だ。

やはり無表情のおばちゃんがカウンター越しに立っている。


「いらっしゃい。お探しのものはなにかな?」




薬草(HP小回復)…… 8G

毒消し草(毒回復)…… 10G

聖水(弱小モンスター避け)…… 20G

ポーションⅠ(HP回復)…… 100G


アイテムを売る




俺はすでに『小・ヒール』を覚えているので、薬草やポーションは必要ないはずだ。しかし、ダンジョン内で何が起こるかは分からない。魔法が封じられる罠があるかもしれないし、MPが尽きて魔法が使えなくなるかもしれない。不意の奇襲でひどい毒状態に陥る可能性もある。


俺は念のため、毒消し草を5個、聖水を3本、そしていざという時の切り札としてポーションⅠを3本買っておくことにした。ちなみに薬草はスライムが落として『道具』にたっぷりとある。


これで準備は完璧だ。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

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