028 ゴブリンソード
翌日。
俺たちは地下1階のワープ部屋の水晶に触れて地下5階のワープ部屋へと飛んだ。
そこから階段を下り、地下6階へ進む。
「おおーっ、何度見てもすごい景色!」
リサが眩しそうに目を細めた。
目の前には、どこまでも続く青々とした大草原が広がっている。風が吹き抜け、草が波打つ様は、ここが地下深くであることを完全に忘れさせてしまう。
「さて、ここからは複数のモンスターが襲ってくる。連携についてだが、とりあえず俺が右側のモンスター、リサが左側のモンスターを担当するということでいいか?」
「了解! とりあえず、それでやってみよう」
俺たちは草原の彼方、地平線にそびえ立つ、次の地下7階への階段があるという巨大な木に向かって歩き出した。
足首まである草を掻き分けながら進んでいると、すぐに俺の『索敵』スキルに反応があった。
「ん、索敵に引っかかった。前方から5体。真ん中を魔法で殺る」
「オッケー!」
背の高い草むらの向こうから、ボロボロの武器を持ったゴブリンが5匹、奇声を上げながら一斉にこちらへ向かってきた。
「火の矢!」
俺は先制攻撃として魔法を放ち、真ん中を走っていた1匹を正確に撃ち抜いて火だるまにした。そのまま光の粒子になって消える。
「打ち合わせ通りにいくぞ!」
「ラジャー!」
俺は腰からウルフソードを抜き放ち、右側2体のゴブリンに向かって駆け出した。
すれ違いざまに1匹目の首を薙ぎ払い、そのままの勢いで剣を返し、2匹目の胴体を深々と斬り裂く。
全く手応えのないまま、2体のゴブリンは一瞬で光の粒子へと変わった。
左側を見ると、リサも鋼鉄の剣を鮮やかに振るい、担当の2体をあっという間に沈めていた。
「ふふん、楽勝だね!」
リサが剣についた光の残滓を払うようにスイングして、得意げに笑う。
足元を見ると、討伐報酬のゴールドと共に、錆びた短い剣が落ちていた。
昨日、ネットの掲示板で『誰が使うんだよ』と馬鹿にされていたゴブリンシリーズの装備だ。
「噂の『ゴブリンソード』か……。念のために、鑑定してみるか」
俺は地面から薄汚れた剣を拾い上げ、『鑑定』スキルを発動させた。
【ゴブリンソード:攻撃力+1。刃こぼれが酷く、赤錆に覆われた粗悪な剣。武器としての実用性は皆無だが、ダンジョンアイテムの好事家の間では需要があり、珍しいアイテムと交換してくれるらしい】
「へえ……弱いけど、コレクターがいて珍しいアイテムと交換してくれるみたいだな」
「えっ、そうなの? そのコレクターって、どこにいるの?」
「……さあ?」
首を傾けるリサに、俺は肩をすくめて答えた。
謎の店で二束三文で買い叩かれるだけのゴミアイテムだと思っていたが、そういう用途があったのか。
しかし、肝心の『コレクター』がどこにいるのか分からなければ、今のところはただのガラクタでしかない。
「まあ、いつか会えるだろう。売らずに持っておくか」
俺はとりあえずゴブリンソードを『道具』に放り込んだ。
その後も、地下7階へ続く巨木を目指して歩を進める。
『索敵』スキルを頼りに、モンスターの反応があればあえてそちらへ向かって討伐し、ゴールドを稼ぎながら進んだため、俺たちの歩みは右へ左へと大きく蛇行することになった。
時折現れるオオカミやイノシシの群れも、リサとの連携で驚くほどあっさりと片付く。
そして、お昼頃。
俺たちはようやく、地下7階へ降りる階段がある、天を突くような巨木に到着した。
太い幹の根元に、ポッカリと地下へと続く階段が口を開けている。
「ふう、今日はここまでだな。ここで昼飯を食べて、来た道を帰るか」
「うんっ! お腹ペコペコ!」
吹き抜ける爽やかな風と、一面の緑。どこからか鳥のさえずりまで聞こえてくる。
「なんか、ピクニックみたいだったね!」
リサはリュックから取り出た、サンドイッチを頬張りながらリサが笑う。
モンスター討伐の直後とは思えないほど、のどかな昼下がり。俺も持ってきたパンの包みを開けながら、この奇妙で心地よい非日常の光景に、思わず頬を緩めるのだった。
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ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。




