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024 唐揚げ

ダンジョンを出て、更衣室で着替えを済ませると、外はすでに夕暮れ時だった。


「おじさん、今日も居酒屋いくの?」


リュックを背負い直しながら、リサが聞いてくる。初めての人型モンスターとの戦闘をこなしたせいか、いつもより少し声のトーンが落ち着いている気がした。


「いや、今日はスーパーで買い物して帰るつもりだ」

「ん。それじゃ、私も大人しく帰る。なんかどっと疲れたし。それじゃ、また明日!」

「おう、また明日」


手を振って駅の方へ歩いていく彼女の後ろ姿を見送り、俺はいつものスーパーへと向かった。


惣菜コーナーに直行し、黄色い割引シールが貼られている獲物を狙って品定めをする。今日の戦利品は、半額シールの貼られた『若鶏の唐揚げ弁当』と、20%引きの『マカロニサラダ』だ。

日用品や朝食用の食パンも忘れず購入する。




アパートに帰宅し、すぐに晩酌の準備にとりかかる。


グラスにたっぷりの氷を入れ、芋焼酎と水を1対2の割合で注ぐ。カランと涼しげな音が鳴り、芋のふくよかで甘い香りがふわりと立ち上った。


電子レンジで温め直した唐揚げ弁当の蓋を開ける。

フワッと立ち昇る湯気と共に、醤油とニンニクの強烈な香りが鼻腔を打ち据え、一気に胃袋が目を覚ました。




「いただきます」


まずはグラスを傾け、芋焼酎の水割りをひと口。冷たいアルコールが喉を通り抜け、一日の疲れを解きほぐしていく。


さっそく、一番大きな唐揚げに箸を伸ばす。

弁当特有の、湯気で少しだけしんなりとした衣。それに歯を立てると、中から熱々の肉汁がジュワッと溢れ出してきた。醤油ベースの濃い下味が鶏肉の芯までしっかりと染み込んでおり、噛めば噛むほどニンニクのパンチと鶏の脂の甘みが口いっぱいに広がっていく。


そこへすかさず、芋焼酎を流し込む。唐揚げの強烈な個性を焼酎の風味が優しく包み込み、油をさっぱりと洗い流してくれた。




箸休めに、マカロニサラダをつまむ。

マヨネーズのコクと酸味が効いたクリーミーなソースが、少し柔らかめに茹でられたマカロニにねっとりと絡みついている。シャキシャキとした玉ねぎとキュウリの食感が小気味良く、ピリッと効いた黒胡椒が良いアクセントになっていた。


この味、むしょうに食べたくなるんだよな。




濃厚な唐揚げ、まろやかなマカロニサラダ、そしてすっきりとした芋焼酎。この完璧なトライアングルに、箸もグラスも止まらなくなる。


「ふう……」


弁当箱を綺麗に空にし、残った焼酎を飲みながら小さく息を吐いた。




ほろ酔いの頭で、今日のダンジョン探索を思い返す。


リサの前でカッコをつけて近接戦闘でゴブリンを倒したが、思いのほか冷静に対処できた自分がいた。

肉を斬り裂き、骨を断つ感触は確かに生々しかった。だが、その直後にモンスターが光の粒子となって消滅する光景が、現実感を綺麗に奪い去っていくのだ。


「血が流れないからな……。本当にゲームみたいだな」


天井の蛍光灯を見上げながら、ポツリと呟く。

死体も残らず、血の一滴も流れない。まるでシステムによって管理され、作られた箱庭の中で遊ばされているような感覚。


ダンジョンが何のために存在しているのかは分からないが、俺はこの非日常のゲームに、すっかり適応してしまっているらしい。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

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