016 もんじゃ
東京駅近くの、赤提灯が灯るもんじゃ焼きの店に足を踏み入れた。
店内は鉄板の熱気とソースの焦げる匂いが充満し、活気に満ちている。案内されたカウンター席に腰を下ろし、ふと周りを見渡すと、色んな言語を話す外国からの観光客が楽しそうに鉄板を囲んでいた。
(さすが東京だな……)
地元の駅前じゃ、まず見かけない光景だ。
「ご注文はお決まりですか?」
「もんじゃは明太子もちを。あと、生ビールと肉じゃがをお願いします」
「はーい、ちょっと待っててねー!」
威勢の良いおばちゃんの声と共に、まずはキンキンに冷えた生ビールと、小鉢にこんもりと盛られた肉じゃがが運ばれてきた。
ジョッキを掴み、喉を鳴らしてビールを一気に煽る。
「くはぁっ……!」
長時間の慣れないテレビ収録で乾ききった体に、冷たい炭酸と麦の苦味が暴力的なほど染み渡っていく。
すかさず、湯気を立てる肉じゃがに箸を伸ばす。
醤油と出汁の香りが鼻腔をくすぐる。よく煮込まれたジャガイモは、箸を入れただけでホロリと崩れるほど柔らかい。口に運べば、中までしっかり味が染み込んだホクホクの芋の甘みと、牛肉から溶け出した脂のコクが舌の上でじんわりと溶けていく。
そこにすかさずビールを流し込む。甘辛く濃厚な肉じゃがの余韻を、ビールのキレが爽快に洗い流す。何度やっても裏切らない、黄金の組み合わせだ。
肉じゃがで最高のスタートダッシュを切っていると、「焼いていくからねー」と先ほどのおばちゃんが、具材が山盛りになった大きな器を持ってやってきた。
熱せられた鉄板に油が引かれ、そこへ器の中のキャベツ、大きな明太子、切り餅といった固形物だけがドサリと落とされる。
ジューゥゥゥッ!!
快音と同時に、香ばしい匂いが弾けた。おばちゃんは両手に持った大きな二枚のコテを使い、カンカンカンッ! と小気味良い金属音をリズミカルに響かせながら、キャベツを細かく刻むように手際よく炒めていく。
キャベツがしんなりとしてきたところで、具材を鉄板の中央でドーナツ状に丸く広げ、見事な『土手』を作り上げた。
「それじゃ、汁を入れるよー」
土手の真ん中に、器に残っていた和風出汁の効いた生地が流し込まれる。ジュクジュクと煮立ち、とろみがついてきたところで、おばちゃんは一気に土手と汁をかき混ぜ、鉄板全体に薄く平らに広げた。
最後に青海苔がたっぷりと振りかけられ、海苔と焦げた出汁の香りが俺の鼻を強烈に刺激する。
「はい、もう食べれるよ。はがしで端っこからギュッと押し付けて、焦げ目を作りながら食べるんだよ」
おばちゃんが教えてくれた通り、はがしでもんじゃの縁を押し付ける。
チリチリと生地が焼ける音が聞こえてきたので、たまらずすくい上げ、フーフーと息を吹きかけてからそのまま口へ放り込んだ。
「熱っ……うまっ!」
出汁の効いた生地の強烈な旨味。そこに明太子のピリッとした辛味とプチプチ感、さらに熱でトロトロに溶け出した餅が絡み合い、口の中で濃厚なハーモニーを奏でる。そして何より、鉄板に押し付けて作った『おこげ』のカリッとした香ばしさがたまらない。
濃厚で熱々のもんじゃをハフハフし、すかさずビールを流し込む。
鉄板から直接コテですくい、焦がし、食べ、飲む。
(これは、ビールが足りなくなる!)
「ビールおかわり!」
「はいはいー」
無限のループにすっかり魅了されながら、俺は東京の夜の熱気ともんじゃ焼きを心ゆくまで堪能したのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。
これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!
ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。




