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015 ロケ弁

テレビ番組の収録日。

俺は朝イチの新幹線に乗り込み、はるばる東京へとやってきた。


(まさか選ばれるとは……)


指定された東京駅近くの集合場所に着いた瞬間から、俺は強烈なアウェー感に苛まれていた。周りを見渡せば、派手な髪色や奇抜なファッションの若い探索者ばかり。地味なおじさんは、どう見ても完全に浮いている。


集合場所からバスに乗せられ、たどり着いたのは都心から少し離れた郊外の貸し切りスタジオだった。

というか、なんか見覚えがある建物と、運動場……。


(……ここ、よくAVの撮影に使われてるところだよな……?)


画面越しに見たことがあるであろう野外スタジオだ。まさか人生で一度くらいは来てみたいと思っていたセイ地に、こんな形で足を踏み入れることになるとは。




「はい、じゃあカメラ回しまーす! 探索者の皆さん、元気よくお願いしまーす!」


スタッフの掛け声と共に、いかにもバラエティ番組といったノリで収録がスタートした。

司会進行はテレビでよく見る中堅のお笑い芸人さんだ。プロの張りのある声で、場を上手く盛り上げている。


俺はというと、用意された体操服に着替え、集団の最後列で大人しく立っていた。


(テレビ番組の収録って、カメラのセッティングとか段取りでめちゃくちゃ時間がかかるんだな……)


社長の朝礼よりも長いオープニング撮影に、俺はカメラに映らないようこっそりとあくびを噛み殺した。




探索者集団の最前列を陣取っているのは、SNSでバズっているらしいイケメン探索者や美少女探索者たちだ。


そして、その最前列のすぐ後ろでは、少しでもテレビカメラに映って目立とうとする若者たちが、芸人さんのフリに合わせてわざとらしく大きなリアクションをしてはしゃいでいた。


俺みたいなパッとしない無口なおじさんは、当然のように後ろに追いやられている。




(無事に早いとこ終わってほしいな……)


そんな俺の願いとは裏腹に、収録は長時間に及んだ。


番組の企画内容は、探索者の実力検証と銘打った『徒競走』やら『重量挙げ』やら『障害物競走』など。筋力や素早さといったフィジカル面にボーナスポイントを全振りしている探索者が圧倒的に有利な競技ばかりだった。




結果として、最前列にいたイケメン探索者たちがどの競技でもぶっちぎりの好成績を叩き出していく。


(なるほど。これは、事前にあのイケメン君たちのステータスをヒアリングして、彼らが活躍できるように競技を設定したのかな? )


前職で接待やコンペの裏回しを嫌というほど見てきた社畜の勘が、囁いている。




やがて、待ちに待った昼休みの時間になった。


「ロケ弁、何気に楽しみだったんだよな。テレビ局の弁当って豪華なイメージあるし」


配られた弁当箱を受け取り、ワクワクしながら蓋を開ける。

中身は、塩おにぎりが二個に、唐揚げが一つ、玉子焼き、そして申し訳程度のたくあん。


「……まあ、こんなもんか」


素人に用意するお弁当なんて、こんなものなのだろう。

俺は軽めのロケ弁を平らげ、お茶で一息つく。おじさんの胃袋にはこれくらいで丁度いいが、若い探索者たちには絶対足りないだろうな。




昼休憩中、俺はトイレに行くついでに、ある意味有名なこのロケ地をぶらぶらと見学することにした。


スタジオの裏手に回った時のことだ。


おや?


物陰に、先ほどまでカメラの前で主役を張っていたイケメン君と美少女の姿が見えた。

気になって物陰からこっそり覗き込むと、二人は周囲の目を盗んで、かなり密着してイチャイチャしている真っ最中だった。


(美男美女、絵になるなぁ……。場所が場所だけに、その手の作品のみたいだ)


これ以上見ていて出歯亀が見つかると厄介なことになりそうなので、俺は足音を忍ばせてコソコソとその場を退散した。




午後に入ると、危惧していた通り、昼飯の量が足りずに空腹でイライラし始めたやんちゃな探索者たちが、競技の判定を巡ってちょっとしたケンカ(探索者視点)を起こすというトラブルがあった。


スタッフが慌てて仲裁に入ろうとするが、探索者でもない一般人には荷が重かった。現場は一時不穏な空気に包まれたが、なんとか強引にスケジュールを巻き、夕方には全収録が無事に終了した。




帰りのバスに揺られウトウトし、東京駅周辺で解散となった頃には、外はすっかり夜の帳が下りていた。

スタッフから、茶封筒に入った出演料の一万円と往復の交通費を手渡される。


「お疲れ様でしたー」


封筒を内ポケットにしまい込み、スマホで新幹線の時刻表をチェックする。

新幹線に乗れば、まだ今日中に地元へ帰れる時間だ。しかし……。


(せっかくタダで東京まで来れたんだ。それに、美味そうな居酒屋もリサーチ済みだしな)


軍資金も手に入ったことだし、たまには羽を伸ばしてもバチは当たらないだろう。

俺は一泊して東京観光を楽しんでいくことを決意し、予約サイトで手頃なビジネスホテルを検索しながら、ネオンが輝く夜の街へと歩き出した。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

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