014 寿司
スーパーで晩飯を買いアパートに帰宅。さっそく晩酌の準備にとりかかる。
今日の戦利品は、スーパーの惣菜コーナーで買ってきた握り寿司、里芋とイカの煮物、そして焼き鳥のつくね(全品割引シール付き)。
グラスに氷を放り込み、芋焼酎と水を1対2の割合で注ぐ。マドラー代わりに箸でくるりと混ぜると、氷がカランと涼しげな音を立て、芋の甘くふくよかな香りがふわりと立ち上る。
「いただきます」
まずは、グラスを傾けて喉を潤す。芋の香りとすっきりとした心地よい刺激が、一日の疲れをじんわりと解きほぐしていく。
腹の準備が整ったところで、パック寿司のマグロの赤身をつまむ。
小皿の醤油に端をちょんと浸し、そのまま口へ。ひんやりとした舌触りの後、マグロの赤身特有の濃い旨味が広がっていく。シャリのほのかな酸味と、ツンと鼻を抜けるワサビの刺激がたまらない。
芋焼酎を流し込み口の中をリセットする。
お次は、焼き鳥のつくねだ。
レンジで軽く温め直したつくねは、表面のタレがツヤツヤと輝き、甘辛い香りを漂わせている。一口かじると、ふっくらとした鶏肉の中から熱々の肉汁がジュワッと溢れ出した。所々に混ざった軟骨のコリコリとした食感が良いアクセントになり、濃厚な甘辛ダレがこれまた容赦なく酒を要求してくる。
つくねを堪能した後は、里芋とイカの煮物に箸を伸ばした。
飴色に染まった里芋を箸でつまみ口に運べば、ねっとりとした独特の舌触りと共に、芯まで染み込んだ出汁の優しい甘さがじんわりと溶け出してきた。
続けて、一緒に煮込まれたイカの輪切りを頬張る。噛み締めるほどに、イカの旨味と甘辛い煮汁が口いっぱいに広がり、思わず頬が緩む。
ふと、寿司のトレイに目を落とした。
「あ、寿司のイカと、煮物のイカが被ってしまった。……まあいいか」
同じイカでも、刺身と煮物じゃまるで別物だ。
俺は寿司のイカを醤油につけて口に運ぶ。こちらは煮物と違って、コリッとした小気味良い歯ごたえの奥から、ねっとりとした強い甘みが絡みついてくる。これはこれで最高だ。焼酎のグラスを持つ手が止まらない。
イカの食べ比べを楽しんだ後は、エビの握りだ。
醤油をつけて、一口で頬張る。プリッとはじけるような弾力と、噛むたびに溢れるエビの濃厚な甘み。シャリと一緒に口の中でほどけていく至福の時間を、芋焼酎の水割りが優しく包み込んでいく。
ここで一旦、つくねに戻る。軟骨の小気味よい食感を楽しみつつ、次の標的を見定める。
次なる標的はサーモンだ。ほどよく脂の乗った身は、舌の上でトロリととろけ、まろやかな旨味が口いっぱいに広がっていく。
さらにイクラの軍艦巻きを口の中に放り込む。しんなりした海苔の風味と共に、プチプチと弾ける粒から濃厚な磯の香りと塩気が溢れ出してくる。
合間に里芋とイカの煮物を挟み、ホッと一息。ねっとりとした里芋の素朴な味わいが、なんとも胃に優しい。
その後、ネギとろ、タコ、カッパ巻き、玉子とささやかな宴を食べすすめ、寿司の最後を飾るのは穴子だ。甘いツメがたっぷりと塗られたふっくらとした身は、噛むまでもなくほろほろと崩れ、シャリと見事に調和して消えていった。
名残惜しみつつも、最後の一口になったつくねを平らげ、グラスに残っていた水割りをグイッと飲み干す。カラン、と氷が心地よい音を立てた。
空になったプラスチックのトレイを眺めながら、ふぅと深く満足の息を吐き出す。
「東京に行ったらうまい海鮮を食べるのもいいな」
テレビ番組への出演依頼という予想外の出来事はあったが、毎晩美味い飯と酒をゆっくり楽しめる今の生活は、控えめに言って最高だ。
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