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012 鳥王族

店を出て、賑わい始めた通りを歩きながら、ふと脳裏にある疑問が浮かんだ。


(ダンジョンと一緒に出現した『謎店』のラインナップって、何処の街も同じなのか?)


俺の地元の駅前にある店と、この街の店。もし品揃えに地域差があるなら、色々な街を回ってみる価値がある。


予定は特にないし、腹ごなしの散歩がてら、この街の謎店に行ってみることにした。




厳重な警備員が立つゲートで探索者証を見せ、まずは武器屋のドアをくぐる。


カウンターの奥には、地元と同じように無表情のオヤジが立っていた。

「ここは武器屋だ」

オヤジのセリフと共に、空中にウインドウが現れる。




……完全に地元の駅前と同じラインナップだ。他の武器種のページをめくってみても、特に目新しいものはなかった。


隣の防具屋もこちら寸分違わず同じ品揃えだ。やはり謎店は全国共通の規格でシステム化されているのだろうか。




そう思いながら、三軒目の道具屋に入る。

「ここは道具屋だ」

無表情の店員の言葉と共にウインドウが開く。


薬草(HP小回復)…… 8G

毒消し草(毒回復)…… 10G

聖水(弱小モンスター避け)…… 20G

ポーションⅠ(HP回復)…… 100G

金の楊枝(石化回復)…… 150G


「ん?」


見慣れないアイテムが、リストの一番下に追加されていた。地元には無かったはずのアイテムだ。


石化か……。

想像して、背筋が少し寒くなった。完全ソロ活動をしている俺が、もしダンジョンで石化の罠やモンスターの攻撃を受けたらどうなるか。自分で道具を使えるわけがないのだから、その時点で完全にゲームオーバー、いや人生終了だ。


まあ念のために、石化した探索者を見つけた時用に少し買っておくか。

ウインドウをタップし、俺は『金の楊枝』を3つ購入して『道具』に収納した。




道具屋を出ると、その並びにもう一軒、地元には存在しなかった店舗を見つけた。

中に入ると、長い髭を蓄えた老人が無表情で立っている。


「ここは魔法屋じゃ」

老人の枯れた声と共に現れたウインドウには、魔法のリストが並んでいた。


小火球…… 100G

中火球…… 1000G

大火球…… 2000G


小水球…… 100G

中水球…… 1000G

大水球…… 2000G


小石球…… 100G

中石球…… 1000G

大石球…… 2000G


小風球…… 100G

中風球…… 1000G

大風球…… 2000G


なるほど。テントの店で買った魔法と比べるとだいぶ安い。もしかしたらその分威力が低いのかもしれない。その代わり、火、水、石、風と基本属性が揃っているようだ。


「テントの店の値段設定とだいぶ違うな……」


謎店の仕組みは、まだまだ分からないことだらけだ。


とりあえず、手数と属性のバリエーションを増やしておくのが得策だろう。俺は『小火球』『小水球』『小石球』『小風球』をタップして購入した。


『中』クラス以上の魔法は、お金に余裕ができた時でいいだろう。テントの店でだいぶ使ったからな。

手持ちの魔法が一気に増えたことへの密かな高揚感を胸に、俺は謎店の立ち並ぶエリアを後にした。




謎店を出て街をぶらぶらして駅前に来ると時間は既に夕方。


歩いていると、見慣れた黄色い看板がパッと目に入った。鳥料理で有名な全国チェーンの居酒屋『鳥王族』だ。


入り口のドアには、手書きのポップがデカデカと貼られていた。


『ゴールド払いOK!』


そういえば、税理士さんが「ゴールドで直接支払いができる飲食店が増えている」と言っていた。まさかこんな有名チェーン店まで対応し始めているとは。いや有名チェーンだから対応したのか。


「試しに食べていくか」




まだ外は明るいが、一杯ひっかけて帰るのも悪くない。俺は迷わずドアをくぐった。


「いらっしゃいませー!」


店内はすでにそこそこの客が入り、活気に満ちている。元気な店員の声に案内され、カウンター席に腰を下ろした。

タブレットで見慣れたメニューを見る。全品均一価格という、酒飲みにはたまらない安心感がある。




「とり釜飯、キャベツ盛、明太温玉ポテサラ。串は、ももたれとスパイス、なんこつ、レバー。酒はテラレモンサワーでいいか」


タブレットでさっさと注文する。懐が温かいと気兼ねなく注文できていい。


注文してすぐ、どでかいジョッキになみなみと注がれたテラレモンサワーと、山盛りのキャベツ盛、そして明太温玉ポテサラが到着した。




「いただきます」


まずはテラレモンサワーの巨大なジョッキを持ち上げ、グビグビと煽る。


「くぅーっ!」


強炭酸の刺激と、レモンの爽やかな酸味が喉の渇きを一気に癒していく。そして、この圧倒的なボリュームこそが、テラサイズの醍醐味だ。




喉が潤ったところで、キャベツ盛に箸を伸ばす。

パリパリと新鮮なキャベツに、塩昆布とごま油ベースの特製ダレが絡む。噛むほどにキャベツの自然な甘みが広がり、無限に食べられそうなほどサッパリしている。




続いて、明太温玉ポテサラ。


ゴロゴロとしたジャガイモの上に、明太子ソースとプルプルの温玉が鎮座している。箸で温玉を割ると、濃厚な黄身がとろりと崩れ出し、明太子とポテトに絡みつく。


一口食べると、明太子のピリッとした辛味とマヨネーズのコク、そして温玉のまろやかさが三位一体となって口の中で爆発した。すかさずレモンサワーで追いかければ、もう箸もグラスも止まらない。




「お待たせしました、焼き鳥です!」


絶妙なタイミングで、湯気を立てる串の皿が運ばれてきた。


まずは、もものタレから。大きくカットされた鶏肉は、炭火でこんがりと焼かれて表面がテリテリに輝いている。かじりつくと、香ばしい焦げ目から甘辛いタレと熱々の肉汁がジュワッと溢れ出し、鶏の旨味が口いっぱいに広がる。ネギの甘さも絶妙だ。


二本目は、もものスパイス。こちらはピリッと効いた塩コショウと特製スパイスが、鶏肉本来の脂の甘みを極限まで引き出しており、レモンサワーとの相性は抜群だ。


コリコリとした小気味良い食感のなんこつ、そして、外はカリッと中はトロリと濃厚な血の旨味を感じるレバー。どれも均一価格とは思えない満足感で、あっという間に巨大なテラレモンサワーが空になってしまった。




そして最後は、卓上でじっくりと火を通し、炊き上がった『とり釜飯』だ。


木の蓋を開けると、ふわりと出汁と醤油の優しい香りが立ち上る。しゃもじで底からかき混ぜると、綺麗なおこげが輝いていた。

茶碗によそい、一口頬張る。


鶏肉から出た旨味たっぷりの出汁を一粒一粒がしっかりと吸い込んだご飯。ホロホロに柔らかい鶏肉と、シャキシャキのゴボウの食感。そして、香ばしいおこげのほろ苦さ。


じんわりと胃の底から温まる、完璧なシメだった。




「ごちそうさま。ふぅー、いつも通りコスパ重視でテラサイズを頼んだが、量が多かったな。次からは、量より質にしよう」


腹をさすりながらレジへ向かい、店員に声をかける。


「ゴールド払いでお願いします」

「かしこまりました! お釣りは、こちらのクーポン券になります」

「はい」


ウインドウの『所持金』からゴールドを取り出しトレーの上に置き、お釣りと同額のクーポンを貰い店を出る。


まだうっすらと明るい空の下、満腹の腹を抱えながら、上機嫌で家路についた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『★評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。

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