ブリザード
越冬隊だけになって1週間が経った。
二日前に基地周辺で不可解な爆発が起きた。もし軍事演習のものなら世界的問題になるかもしれない、自然的な爆発ならもしかしたら世紀の大発見があるかもしれないということで向かうことにした。
爆発地点は基地から約二十キロ。雪上車で一日はかかる距離だ。
天候を見ながら、五日間の調査計画が組まれた。
行くメンバーは、鈴前隊長、僕、二名の運転手、そして気象研究をしている前田さんと地質学者の石川さんの計六人で行くことになった。
計画では、雪上車は2台で行き、基地周辺は海が近く孤島のようになっていて、爆発地点は海の下の部分である可能性もあるので気をつけながら走るということで五日間での調査計画とした。
そして今日、朝食を食べ雪上車の点検や整備が終わると僕と隊長が前の雪上車に前田さんと石川さんが後ろの雪上車に乗りこんだ。
「気をつけてね〜」
と心配そうに小原さんは手を振り、見送りながら口にした。また、大勢の隊員たちが僕たちの見送りをし、僕たちを乗せた雪上車はゆっくりと出発した。
基地を出てから数時間、特に問題なく雪上車は決して速いとはいえないが確実に進んでいた。
車内では僕と隊長の二人。
隊長は、五十三歳という年齢に反して、鍛えているからであろうかとても見た目が若く、歳を聞かなかったら三十代と思われてもおかしくはないくらいである。
僕もこんな頼り甲斐のある人間になりたいと思える人でどうしたらこの人のようになれるだろうと考えていたら隊長が
「るいくん、南極での生活は慣れた?」
と静寂に包まれていた車内に気を遣って話を持ってきた。そういうところも隊長に憧れるところである。
わざわざ、気を遣ってくださったことをむげにするわけにはいけないので少しその質問について考えた後、少し気を遣いこう答えた。
「いや、慣れないですね。2回目の南極ですが、」
「そうだよね。私も6回来ても慣れない。だけど、南極は好きだし何回来てもワクワクするんだよね、こんな歳だけど。だって南極にはまだ探検されていない場所そして見つかっていない秘密があるかもしれないしね。るいくんもその秘密を見つけるために来たんだもんね?」
「はい、今回の爆発がその夢に関係あるかもしれないですしね」
「そうだね。見つかるといいね、るいくんが探している何か。」
「ゴトン」
そんな話をしていると、車内が大きく揺れ、僕たち二人は体勢を大きく崩した。
「大丈夫ですか?」
「はい」「はい、大丈夫です」
「少し車両の様子を見てきます」
「じゃあ、私もついて行きます」
そう言い、運転手と隊長は外に行きこの雪上車の様子を見に行った。
僕は今の揺れで倒れた荷物を整理することにした。
すると、椅子の下に落ちていた、1つのものが目に入った。
若い頃の隊長とロングでいかにも高嶺の花のような女性とのプリクラだった。
その後も車内を片付けていると、隊長たちが戻ってきた。
「どうでしたか?」
「特に問題はなかったよ。」
「隊長、この写真落ちてましたよ」
「あぁ、ありがとう」
「その女性、奥さんですか?」
「そうだよ。」
「とても美しい人ですね」
「可愛かった。そう、俺が守らなければならなかった」
隊長は震える手でプリクラを見つめ、数秒間の沈黙の後に絞り出すような声でそう話した。
「すみません、そうとは知らず」
「いいよ、私の未練がましくまだもっているだけで忘れたくても忘れられない幸のことを。」
……
あの日、ブリザードが来た。
幸はそれきり戻らなかった。
何も残っていなかった。
……
「すまない」
そう言い、隊長は涙を拭いた。
その後は順調に進んだ。
日が暮れるぐらいのタイミングでちょうど爆発現場の近くにつき、五百メートルほどのところに雪上車を止めた。
こうして、今日はここで一夜を過ごし、明日の朝一から爆発の調査をすることになった。
七時、目を覚め朝の支度をし、八時ごろに雪上車を離れ爆発現場へと向かった。
三十分ほど歩き、爆発の残骸周辺に着いた。
爆発の跡を見て、初めに思ったことそれは確実に自然的な爆発ではなく、誰かが起こした爆発に違いないと頭が訴えた。
なぜなら、爆発のクレーターの焦げ跡が幾何学的な模様としてできていて、そして何より夢と全く同じように、爆発でできたクレーターの中が光り輝いていたからである。
やっぱりだ。
あの光は、夢じゃない。
「おぉ、これはすごいですね」
そう石川さんは言い、写真を撮り始めた。
「なんか、光ってる場所もありますね。これはなんなのですかね?」
「そうですか?僕には見えないですが、位置の問題ですかね」
そう話す、隊長と石川さんの会話を聞きながらこのクレーターの中の光に圧倒されていた。
すると、「ゴォー、ゴーッ」と二度の強風が僕らを襲った。
その直後、雪と氷で混ざる吹雪が発生し、あっという間に視界が悪化した。
これがいわゆる「ブリザード」だ。
しかし、予兆が何もなかった。自然発生的にあり得るのだろうか。
そしてそのブリザードに巻き込まれてしまった。何もないこの場所で四人。
すぐに周りを見回した。
「隊長――」
自分が出せる一番の声をあげたが、周りには誰もいない。そして何も返ってこない。
「うっ」
苦しい、寒い。
意識がだんだん遠のいていく。
……
「ほんとにやってよかったんだよね?」
吹き荒れるブリザードの中、防寒具も着ずに立つ少女が二人。
「だって、姉様があの子を連れてこいって……それよりとりあえず助けないと姉様に怒られる」
「よっい、この銀髪の子だよね。他の人たちはどうする?」
「とりあえず、簡易バリアを張ったから大丈夫」
「じゃあ、早く戻らないとね」




