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南極観測隊

 南極大陸に来て、三十二日目。

 僕は生きている。

 心が透き通るような空と、終わりのない水平線。

 沈まない太陽にも、もう慣れた。

 銀色の髪に雪と氷に太陽が当たり僕はいっそう輝いているように見える。

 気分が良い。


「るいくん〜、運ぶの手伝ってくれなーい?」


 そう呼んだのは、栗毛の彼女だ。

 彼女の名前はえっと‥小原千尋。

 僕はいつも、その苗字が「おはら」だったか「おばら」だったか分からなくなる。いや、「こはら」、「こばら」だったかも

 そうたしか、


「こはらさーん、すぐ行きまーす!」

「ちょっと、私、こはらじゃなくて「おはら」なんだけど、それより早く手伝ってよね」


 おはらさんは、少し笑みをうかめ、そう言い残し、そそくさとその荷物を少しはずれのコンテナへと行った。

 僕はそんな小原さんを見送り、一度基地に戻って着替え、言葉通りすぐに向かった。


 7時。まだ眠気の残る身体を引きずって外に出ると、すでに何人かが作業を始めていた。

 朝の料理をつくる隊員、車両の整備をする隊員、発電機の管理を行う隊員など設営隊員が目まぐるしく働いている。

 もちろん、僕ら研究隊員も働いている、気象の観測、地質調査など、そうここでの朝は大切なのだ。

 少しでも怠れば、少しでも命につながるかもしれない。



 朝食を食べるために、食堂へ行った。

 今日の朝食は、焼き魚、味噌汁、卵焼き、ザ和食でこころがあったまる。


「おぉ、おいしそう」

「おっ、るいくんおはよ!昨日はよく眠れた?」

「はい、バッチし眠れました。今日も朝からお疲れ様です。」

「ハハっ、これが仕事だからね。るいくんもI日頑張って」

 

 そんな会話を料理隊員とし、毎日3食こんなに美味しい料理を食べられることに感謝をし、そんな朝食を手に取り、いつもの席に座る。

 席は1つの机に5、6席が囲うようにある。

 そして、僕は、いつも1番奥の机の窓側の席に座る。

 この場所は、食堂にいる全員の顔が見え、落ち着く。

 そして今日も一日が始まるのだと実感する。

 そんなふうに安らいでいると


「るいくん、さっきは手伝ってくれてありがとう。助かった〜」

「いえいえ、小原さんがほとんどで僕ほとんど手伝ってませんから」

「うわー、ちょー大人の返しされたー。るいくん、18歳なのにほんとめっちゃちゃんとしてるよね」

「小原さんが年相応ではないんじゃないですか?」

「そう、若く見える?」


 小原さんは、そう言いながらそこまで長くない、ショートボブだろうか髪を耳にかけ少しキメていた。

 

「まぁ、若く見えますよ」


 少しうつむき、小原さんの手を見て言った。


「そういうところは年相応なんだね。」


 と言い、ニコッと笑った。


 全員が集まったところで、隊長が


「明日は越冬成立式です。最後の一日も頑張りましょう。いただきます。」


 ”いただきます“

 

 そう言い食事の挨拶をし、大勢の人が食べ始めた。

 僕もまずは、身体を温めるために味噌汁を飲もうと茶碗に手を伸ばしそうとしたとき斜め前の鈴前さんが声をかけてきた。鈴前さんは、僕の直属の上司である。


「るいくん、明日は越冬成立式だよ。これから一年頑張らないとね。」

「そうですね。頑張らないといけないですね。少し寂しくなりそうですね。」


「そんなことないよ。私も一緒だから」


 小原さんが誇らしげにそう言った。


「そして、わたしもいる。」


 鈴前さんまでも誇らしげに言い、僕はそんなこと考えているべきではないなと思い、


「そうですね。ありがとうございます。」


 と言い、ゆっくり味噌汁を飲み込んだ。

 少し冷えた身体に、じんわりと熱が戻っていく。


 ……


 朝食を食べた後、僕は早速、研究をするため基地を少しはずれのコンテナに移動するため外へ出た。

 外に出ると、音が消える。風の音すら遠く、世界から切り離されているようだった。

 コンテナの重い扉を開けると、外の冷気とは対照的にコンテナの中は観測機器から出る排熱によりコンテナ内はほんのり温かく、僕はこのコンテナ内が好きだ。

 早速、常に記録されている地震計に異変がないか、また、地磁気データも見た。

 今日も特に異変はない。

 そして、記録をして他のデータにも異変がないことを確認するとコンテナの扉に手をかけ、コンテナを出た。


 昼食後、僕は小原さんに呼ばれ、手伝いを頼まれた。彼女は南極にいる微生物や動物などの生物研究をしていて、よく手伝いを頼まれる。今は、氷の中の微生物なことについて調べているらしい。

 その手伝いが終わり、施設内を歩いていると「ゴトン」何かが落ちる大きな音がした。

 その音が聞こえた方に行くと、夏隊の人たちが荷物を片付けていて、荷物を落としたらしい。

 そのまま、僕は夏隊の人たちの荷造りを手伝っていいくことにした。

 

 そんなことをしていると時刻は16時になっていた。

 自室に戻り、今日の記録と報告書を作る。


 作業が終わり、リラックスしていると良い匂いが食堂からし、自然と足が食堂の方に向いた。

 食堂の方へ行くと、たくさんの人がいて、盛り上がっていた。

 夏隊が帰る前日と言うことで、今日の夕食は蟹鍋らしい。豪華だ。

 小原さんは、子供のように喜んでいる。

 まだ、これからもいるというのに。

 そう思いながら、僕はいつもの席に座った。

 そして、隣のテンションが上がっている小原さんが声をかけてきた。


「るいくんは、蟹鍋食べたことある?」

「ないですよ」

「ないのに、なんでそんな冷静なの?だって蟹鍋だよ!」

「だって、食べたことないですから」

「えー、それでもわかるじゃんだいたい。はい、じゃあ、食べよ」


 そう言って、小原さんは僕のお皿に鍋から取り分けた。


「いただきます」


 ぱく、美味しい。身体中が温まっていく。冷えたところで食べる鍋は心までも温まっていく。


「おいしいでしょう」


 小原さんはニコッと笑い、まるで自分が作ったみたいな顔をし僕を見た。


「はい、美味しいです!」


 そういうと、小原さんも鍋から取り分け、食べ始めた。

 僕は鍋に夢中となり、黙々と食べた。

 こうして夕食を食べた後、リラックスしていた時

 

「そういえば、るいくんってなんで越冬隊に?」


 小原さんがいきなり聞いてきた。そういえば、言っていなかった。

 他の人には散々話して、「あんたそんなために南極観測隊へなりたいなんて頭おかしいなぁ」とか「その夢叶うと良いね」とか貶されたり、時には応援されたりする僕が越冬隊にいや、南極に来た理由。


「バカにしないでくださいよ」

「バカにしないよ」


 

「僕が8歳のある日、夢を見たんですよ。南極の地下が光り輝き、そこで暮らしている人を。僕は思いました、その瞬間直感的に行かなければいけない。南極の地下にはまだ誰も見つけていない秘密があり、誰かが僕を呼んでいるのだとそう思い、南極観測隊になったんですよ。へんですよね?」



「変じゃないよ。全くめちゃくちゃ良いよ。じゃあ、見つけないとね。南極の地下の秘密。」


「はい」


 こうして、南極の生活のI日が終わる。


 ……


 翌日、夏隊や前回の越冬隊の見送りをし、越冬成立式を行なった。

 そうして、越冬隊としての一年の生活が始まった。

 


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