第6話
ないことをチャンスに気弱なユミーを……と二ベス考えていたが、これではあてが外れてしまう。完全に予想外だ。
「そ、そんな馬鹿な! ユミーは婚約破棄されるような……」
「婚約破棄したのは私の方ですよ。そもそもガソマ様の有責だって当の本人から聞いていないのですか?」
「ユ、ユミーに非があるように聞いて……」
「お前、社交界に出るのをサボっているから詳しく知らんのだな。伯爵令息のくせにまさか一週間も前の騒動くらい把握していないとは」
「う、うぐ……」
「私がした婚約破棄の前に自分が婚約破棄されていましたから、社交に出る顔がなかったのでしょう。今もほとぼりが冷めたとは言えませんが」
「……ッ!」
ユミーとバグタスに呆れられ痛いところをつかれる二ベス。だが、言われっぱなしなのが気に入らない二ベスは顔を赤くして勝手な反論を始めた。
「ふ、ふざけんなよ! そんな騒動を起こすくらいならユミーだって非があるようなもんじゃないか! お前みたいな気弱な女と婚約したがるような男なんてきっとろくな男じゃないんだろう! 一週間後に新しい婚約者ができるなんて知りの軽い女だな!」
「私の婚約者のことを何も知らないでよくそんなことが言えたものですね」
「二ベス、お前は本当に馬鹿だな。お前なんかが幼馴染だったなんて恥ずかしいぐらいだ」
「けっ! 俺もお前らみたいな面白みもない奴らが幼馴染で残念だよ! もう帰る! せっかく俺が来てやったのにな!」
二ベスはユミーとバグタスを睨みつけると、ズカズカとした足取りで自分の馬車に戻ってそのまま帰っていった。ユミーとバグタスは二ベスが長居することなく帰っていってくれてホッとした。
「いずれ二ベスが寄生虫のごとく近づいてくると思っていたが、その前にお前の婚約が決まってよかったよ」
「そうですね。でもまさか第三王子のロミュド殿下と婚約できるなんて私も思っていませんでした」
王宮の話し合いでユミーとロミュドは婚約することになった。その帰りに二ベスに出くわして幸せな気持ちから嫌な思いに切り替えられそうになったが、二ベスを追い返すことができて良かったとユミーは思った。
「二ベス様はガソマ様と同じパワハラ気質な感じで嫌だったけど、私がちょっと強気になるだけで追い返せてよかったです。そういう意味ではあの婚約破棄騒動は私に予想以上にいい経験になったのかも……」
「ははは、確かに気弱な雰囲気だったお前もたくましくなったと思うよ。さて、父上と母上にも報告しないといけないな。後、この件もロミュド殿下に報告しないと……」
二人は屋敷に入ってすぐに両親に婚約のことを報告した。両親ははじめ耳を疑ったが、バグタスが熱心に説明してユミーが顔を耳まで赤くして本当のことだと理解できて喜んだ。
「ユミー、おめでとう」
「今度こそ幸せになってね」
「お父様、お母様、ありがとうございます」
家族で喜び合っている中で、バグタスはある提案をした。それはユミーの婚約発表に関することだった。
「今週で王宮で行われるパーティーがあるからそこでユミーの婚約発表をしよう。王宮なら警備の厚いし、殿下もきっと賛成するはずだ」
「いい考えだ。グッドアイデアだバグタス」
「殿下と一緒なら当然ね」
「お兄様、ありがとうございます」
バグタスの提案で家族は嬉しそうにパーティーの予定の段取りを進める。ただ、そのバグタスだけは笑顔の裏に警戒を強めていた。それはパワハラ気質な者たちのことだ。
(あいつらは難癖つけてユミーに近づいて利用しようとするはずだ。結託して行動を起こす可能性もある。その前に奴らの前で今のユミーを見せつけて諦めさせてやる。王族の婚約者となったユミーを)
バグタスの予想通り、彼らは自分たちの状況打破のために結託してユミーを利用しようとしていた。バグタスとロミュドが示し合わせているとも知らずに。




