第14話
ノウヴァはユミーを睨む。ユミーが成功させた婚約破棄の件でノウヴァの状況は悪い方向に変化したからだ。夢見た婚約生活とは違い毎日が辛くなった。自業自得かもしれなくてもノウヴァはユミー恨まずにはいられない。
「知っての通り、婚約破棄はうまくいきました。ガソマ様の有責で破棄できるだけの証拠は揃えましたこともありましたが、成功の理由には味方の存在がありました」
「味方……?」
「私の味方、婚約破棄のために力になってくれた方々です。それは私の両親とお兄様、伯爵家で生まれた時から世話になった使用人の皆」
「……っ」
「それに学生時代から親しかった多くの友人達、ドパント公爵邸で苦労を分かち合った執事や侍女といった使用人の方々、さらには仕事の過程で世話になった商人の方々」
「なっ……」
「多くの人々と力を合わせて伯爵令嬢である私は公爵令息に婚約破棄を突きつけて勝利を収めたのです」
「……っ!」
ノウヴァは目を見開いて驚いた。あの婚約破棄に至る過程でそれだけ多くの人達が動いていたこと、ユミーがその中心……自分が下に見ていた女にそれほど多くの味方がいたことに。
「ノウヴァ様、貴女は侯爵令嬢ですが私とは違う。ここに貴女を助けてくれる味方がいないのは貴女もガソマ様と同じだからです。誰かに責任を押し付けるばかりで楽だけしたい。そんな人達を助けたいと誰が思うでしょうか?」
「そんな、そんな……」
「貴女は今の状況を二人のせいだと考えていると思いますが、貴女自身の責任でもあると自覚してください」
「わ、私、は……っ!」
ノウヴァは膝から崩れ落ちた。涙が溢れてくるが、涙を拭うことも手で顔を覆うこともできなかった。彼女の頭の中には後悔という感情で支配されていたのだ。ガソマと関わった後悔、ユミーを陥れようとした後悔、自分の行いに対する後悔……思い返せば後悔が止まらない。今まさに恥をかいていることすら気が付かないほどに。
ただ、後悔してももう遅い。遅すぎた。
◇
結局、ノウヴァはロミュドの指示で使用人によって別室に連れて行かれた。連れて行かれながらもノウヴァは泣き続けるばかりだった。
パーティーが終わった後、ユミー達は三人で話し合っっていた。
「……同情はできないが流石に可哀想になったな」
「まぁ、パーティー会場で醜態を晒すことになりましたからね」
「私も、もう少し控えるべきだったかしれません……」
「だが、彼女とガソマのしてきたことを考えればこうなっても仕方あるまい」
ノウヴァのしてきたことは褒められたことではない。侯爵家の出自であることをいいことに我儘で傍若無人に振る舞い、婚約者がいる相手と浮気をする。その上、ユミーのような下の立場にいるものに対して高圧的に接する始末、救いようがない。それはガソマと二ベスも同じことだった。
「他の二人の男はどうしますか?」
「ガソマと二ベスの二人の処遇はそれぞれの親に通達すれば済むさ。王家からの苦情という形でな」
「あの二人は有責で婚約破棄を受けて日も浅い身です。それで今日の出来事となれば、家から相当のお叱りを受けるでしょうね。自業自得ですが」
ガソマも二ベスも婚約破棄されて親から叱られた身だった。特にガソマが受けた処遇は厳しいものだったため、今度は貴族籍をなくすかもしれない。二ベスもどうなるか分かったものではない。
「ノウヴァ嬢はもういいかな。ただでさえゾディアーリ侯爵の屋敷から追い出されているし」
「いいえ、殿下。筋は通すべきです。なんなら私のグレード伯爵家からゾディアーリ侯爵に通達します」
「……彼女もまた失うことになるのですね。ですが、後悔して心を入れ替えてほしいのですが……」
結局、ガソマも二ベスの家には王家から、ゾディアーリ侯爵家にはグレード伯爵から苦情を通達されることとなる。その結果、彼らには厳しい処分がくだされた。




