第13話
ユミー達は呆れ、ノウヴァと二ベスは呆然、周囲の貴族も絶句、しばらく言葉も出なかったが、無関係の貴族の一言で状況が動く。
「――あれで、公爵令息か?」
一言がガソマへの批難なら、その後も同じく。
「――いい年してあの行動は……」
「――信じられない。王子殿下の前で」
「――ドパント公爵家、終わったな」
ガソマ・ドパント公爵令息への非難が一気に広がる。それも残された二人に聞こえる形で。
「……ど、どうすれば、いいのよ……」
「お、俺に聞かれても……」
ノウヴァと二ベスは我に返って自分たちの状況に絶望した。ガソマの関係者である自分たちもこの場では嘲笑の的に過ぎない。どうやって切り抜ければいいのか考え始めるが、さっさと去っていくしか無い……と考えつく前にバグタスが二ベスに話しかけてきた。
「二ベス、ずっと思っていたんだが何故お前はここに? このパーティーの招待状は持っているのか?」
「な、何を……突然何を言い出すんだ!?」
「いや、お前の家にパーティーの招待状を送る予定はなかったはずだったから不思議に思ったんだが?」
「う……」
バグタスは主催側にいるため、招待客はおおよそ把握している。だからこそ、ニベス・フェムジンム伯爵令息が招待客でないことも分かっていた。それなのにガソマとノウヴァと一緒に現れた時は驚いた。
「招待されたわけでもないのにパーティーに……それはどういうことかな。私も気になるな?」
「で、殿下……そ、その、これは……」
ロミュドまで気になって会話に加わったことでなんとか答えなければならなくなったが、二ベスは動揺して上手い言い訳が思いつかない。それをいいことにバグタスが勝手に言い当てた。
「二ベス、お前はガソマ殿と一緒に来たようだが、まさか友人だから付いてきたのか? 取り巻きか何かのように」
「な、と、取り巻きじゃ、」
「そうじゃないならどうなんだ? 招待客であるわけじゃないのに」
「く……」
バグタスの言う通り二ベスは公爵令息であるガソマについてきたのだ。ドパント公爵宛に招待状が届いていたため、ガソマは父親の代わりに出席することにしたのだ。その父に内緒で。
(バグタスが主催側だったなんて、クソ! 俺の家に招待状が来なかったのは嫌がらせなのか!)
言い当てられた二ベスは悔しくてバグタスを睨むが、バグタスは冷たい笑みを浮かべるだけだった。
そこにユミーも加わる。
「二ベス様、兄の言う通り貴方はまるで取り巻きのようではないですか。招待客であるわけじゃないのにパーティーに来るために、立場が上の相手について付いてくる。典型的な取り巻きの行動です」
「ゆ、ユミーまで……!」
「まあ、取り巻きという立場が恥ずかしいものと言うわけではありません。貴方の言動には、」
「もういい!」
ユミーが何か言おうとする前に二ベスは声を張り上げて遮った。そして、悔しさを押し殺したような顔でロミュドに告げる。
「で、殿下! わ、私は、友人であるガソマに頼まれて仕方なくパーティーに来たのです! 招待状もなく会場に入ってきたことは私も不本意でした! 今すぐ去ります!」
「ちょ、ちょっと……!」
早口で言った後すぐに二ベスは速歩きでパーティー会場から去ってしまった。ノウヴァが引き留めるようなことを口にしてもお構い無しだ。これで残されたのは彼女だけ。
「……あ、あの、私は……」
ガソマも二ベスもいなくなり、ノウヴァは二人が逃げた先を睨みながら一人で立ちすくんでいた。婚約者も友人も逃げてしまって頼れる人はいない。自分も逃げ出したいところだが出遅れてしまった。王族を前にしては、貴族らしい去り方をしないとプライドが許さない。
しかし、そのプライドはズタズタにされることになる。最も下に見ていた女によって。
「ノウヴァ様」
「な、何よ……!」
「ガソマ様と二ベス様に見捨てられて心細く感じることでしょう。その寂しさに心中お察しします」
「ゆ、ユミーのくせに……!」
「私もかつてはガソマ様と婚約していた頃に似たような思いをしておりました。婚約者に顧みてもらうことなく何もかも尻拭いをさせられる。一人で後始末を押し付けられて心細く寂しかったです」
「そ……それ、は……」
ユミーが感傷に浸るように語りだすのは過去の自分だった。ノウヴァの今の状況を自身と重ねて見えてしまったようだが、肝心のノウヴァは気まずくて視線をそむけてしまう。『過去のユミー』の苦しみの要因に自分も入っていることは自覚しているからだ。
「ですが、このままじゃいけないと思って婚約破棄に踏み切りました。そのおかげで今の私があります」
「……っ!」




