第12話
当然だ、こんな場所で互いに言い争えば注目の的だ。
「こ、これは……」
「そ、その……」
「貴方達は言い争いの中で目的を口にしていましたね。言っておきますが、私がガソマ・ドパント様とよりを戻すなど絶対にありえません。たとえ婚約者がいなくても」
「そ、そんなこと」
「自分の行いに責任を持たない男なんてどんな立場であっても願い下げです。勿論、二ベス様も同じことです」
「な、何……!」
ユミーの言葉にガソマはショックを受けたような顔で後ずさる。二ベスも驚きを隠せない。ユミーのことを普段は気弱な令嬢と思い込んでいただけに、強気な態度で攻め立ててくるとは思っていなかったのだ。
しかし、ガソマは現実を受け入れられず更に余計なことを言い出した。
「ち、違うんだユミー……ユミーとよりを戻すという話は、ノウヴァが考えたことで……別に僕は乗り気だったわけで……」
「……?」
「は?」
「え? ちょ、ちょっと何を言ってるの!?」
ガソマはあろうことか今の婚約者であるノウヴァに矛先が向かうような発言を始めた。先程、二ベスのせいにしていたのに今度は婚約者のせいにする……意外な展開にユミーは言葉も出ない。二ベスも信じられないものを見るような目になり、当のノウヴァはだんまりから一転して否定を始めた。
「なんで私に話を向けるのよ!?」
「だ、だって……」
「貴方が仕事が楽になるからって言うからユミーを第二夫人にするって話に賛同したのに!」
「お、おい……!」
今度はノウヴァと言い争う……のではなく、ガソマが一方的にノウヴァに怒られる展開となった。しかも、自分たちが不利な発言まで口から出てくるしまつ。不味いと思った二ベスは止めようと思ったが、ここでロミュドが話に入ってきた。
「なるほど、ガソマ殿はあくまでも自分が言いだしたことではない、と言いたいんだな?」
「そ、それは……事実でありますので……」
「ちょっと!」
「おい!」
自分に非がないことを貫こうとするガソマにノウヴァと二ベスは怒りに満ちた目で睨む。ただ、ガソマは動揺するあまりに二人の眼差しに気にしていられなかった。
「……ガソマ殿、私は非常に残念な気持ちだよ。まさか友人のニベス・フェムジンム殿や婚約者のノウヴァ・ゾディアーリ嬢に責任を押し付けようとするとはな」
「で、殿下……」
「公爵令息という立場の男であれば、そのくらいの責任は自ら取ってほしいものだったが……」
「う、うう……」
ガソマは言葉に詰まる。助けを求めようにも味方であるはずのノウヴァと二ベスからは敵対の視線を向けられている。無論、周りで見ている貴族たちも嘲笑うだけ。
更に敵は増える。バグタスも会話に入ってくる。
「ガソマ殿、私や殿下の疑問に答えずに責任を他者に押し付けようとする姿勢は人格を疑われても仕方ないことだと思う」
「ば、バグタス殿! これは、仕方ないことで……!」
「どう仕方ない? 貴方の問題なのだが?」
「……!」
ガソマへの周囲の視線は厳しさをまずばかり。婚約破棄する前も後も自分の行動に責任を持たなかった結果であるから自業自得だ。ユミーはそんな彼を見ていると元婚約者だったことが恥ずかしくなってしまう。見ているだけで情けないし腹立たしい気分になる。
「ガソマ様、もういい加減に自分の責任くらい自分で取ってください。人に押し付けたりなすりつけようとする行為が恥ずかしいことだってわからないのですか?」
「ぼ、僕は……僕は……」
ユミーは感情のこもっていないような声でガソマに言う。すると、ガソマはユミーの目がゴミを見るような目に見えて恐怖のあまり涙ぐんでしまう。今にも泣きそうだがユミーは容赦しない。
「泣いても何も変わりません。冤罪をかけようとした相手に婚約破棄されたばかりなのに会いに来て、その目的がよりを戻すことだなんて厚かましい。そんなことは子供でも同情されないことです。今の貴方の情けない状況は貴方自身が招いたこと。その惨めさはしっかりと受け入れなさってください」
「……ッ!?」
自分が泣きそうになっても同情しないどころか非難するユミーにガソマは心底ショックを受けた。そして、本当に涙を流しながらユミーを忌々しそうに睨んで叫んだ。
「ユミーなんか大っ嫌いだああああああああああああああああああ!!」
叫んだ後のガソマはパーティー会場から出ていってしまった。完全に感情任せの幼稚な行動だった。
「「「「「……」」」」」
ガソマの行動に誰もが唖然とした。




