第15話
パーティーから数日後、ユミーとロミュドの婚約が貴族社会全体に広まった。多くの貴族から祝福されるが中にはユミーを妬む女性陣の目も少なくなかった。
「私が気弱な女性という印象がまだ残っているようですね。無理もありませんが」
「いや、それは違うよ。単純に王族の伴侶という立場が魅力的なのさ。パーティーの話も広がっている以上、君が今でも気弱だなんて思うもののほうが少ないよ」
「ちょっと出しゃばりすぎたと思っているんですが……」
ロミュドに揶揄われてユミーは拗ねる。ただし、ロミュドの言う通り、あのパーティーの一件でユミーの評価は変わった。ユミーは男二人を相手に堂々と声を張り上げて叱るような芯の強い女性だと言われるようになったのだ。
「君が彼らを叱りつけたことは結果として良かったと思うよ。女性や下の者を軽視するのを控えるようになったそうだ。精神的にも物理的にもね」
「まさか、本当に貴族じゃなくなるとは驚きました」
パーティーでのことがドパント公爵家とフェムジンム伯爵家に通達されたことで、ガソマと二ベスはそれぞれの家の当主から厳しいい処分を受けることとなった。特にガソマの父親であるドパント公爵は勝手にユミーとよりを戻そうとパーティーに出席したことが許せず、ガソマのから族籍まで剥奪して追放した。
二ベスは嫡男から外されるだけで済んだが、その後から姿が見えなくなった。家で軟禁されているようだ。
「二ベスは他にもやらかした事があったようだ。元婚約者だった子爵令嬢に酷いパワハラをしていただけではなかったわけか」
「二ベス様の元婚約者だったスマシュ・ファトム子爵令嬢は怒っておいででした。二ベス様が婚約破棄されて当然です。彼の散財グセは目に余るものがありました」
ニベスの父フェムジンム伯爵はまともな性格だが、息子の二ベスはそうならなかったということだ。おそらく、二ベスの弟たちの誰かが家を継ぐことになるだろうが長男のようにならないことが望まれるだろう。
「ガソマ様は貴族籍を失って追放、ノウヴァ様との婚約も解消、今はどうしているのでしょう?」
「ドパント公爵の計らいで領内で平民に混じって働いているらしい。相当過酷な日々を過ごしているだろうさ」
あのガソマが平民として平民とともに労働。公爵令息なのをいいことに下の者たちにパワハラを繰り返してきたガソマからしてみれば屈辱的なことだろう。父親に切り捨てられた上に相当の罰を受けたわけだ。
「そのガソマの元婚約者だったノウヴァ嬢は意外な結果になったな。まさか自分の意志で修道院に行くなんて」
「確かに、あのノウヴァ様がゾディアーリ侯爵に頭を下げて詫び、修道院に送ってほしいと自ら願い出たとは思いも寄りませんでした」
「よほど君の叱責が身にしみたようだな。彼女の心に君の声が届いて何よりじゃないか」
「彼女のパワハラも酷かったのですが……まぁ、心を入れ替えてくれたのなら何よりです」
ノウヴァの行動は彼女の父ゾディアーリ侯爵も驚いた。追放した娘が押しかけてきて今までのことを謝罪し修道院に送ってほしいと言い出した時は信じられなかったという。ただ、娘が改心したのなら喜ぶべきだと思って彼女の望み通り侯爵家の名で修道院に送ったという。
「わざわざ侯爵家の名で修道院に送ってもらう、それが引っかかるのですが……」
「修道院に行く手段が思いつかなかったからじゃないか? 今まで我儘放題で人に頼りきりだったのなら自分で何かをなすことが不得手だろう」
「それもそうですね。パワハラな人って、自分一人じゃ何もできなくて何もしようとしない人がなりそうですから」
ユミーはガソマとノウヴァと二ベスの共通するのは、立場だけを使って一人で何もできなくて何もしたがらない者だと思っている。それがパワハラな人間の本質だと。
「そうだな。上に立つ者ほど責任は重い一方で下の者たちの声を聞く機会がなくなってしまう。それが悪い方にすれ違っていくと、パワハラとまではいかなくとも要らぬ亀裂をつくってしまうこともある。そうなると我々も他人事ではないな」
「私達も貴族、上にも下にも人間関係には注意していかないと気づいたらパワハラな人になってしまうということですね」
「ああ。だからこそ、私は君と婚約した。下の者たちをむやみに見下さずに分け隔てなく接し、上の物に媚びへつらうこと無く間違っている者に反論できる強い君に……」
ユミーとロミュドが婚約してから数ヶ月後に結婚、ロミュドは臣籍降下して公爵となり、ユミーはロミュドを良き妻として支え続けるのであった。
おわり




