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殿下のご両親に旅たちのご挨拶に伺いました

「お義父様、お義母様、わたくし、リーズ国の助けになるどころか、リーズ国の災いとなってしまいました。大変申し訳ありません」


「災いなんて、言わないで。こうなる運命だったのよ。悪役令嬢の試練、でしょ?」



 ごきげんよう。

 ガブリエルです。


 わたくしとクレメントの雲隠れの準備が整い、出発前にリーズ国王陛下と妃殿下にご挨拶に来ています。


「クレメントからも聞いていると思うが、リーズ王家のことは心配しなくていいからね? もともと12家がいれば国は回るんだから。王家と公爵家は特殊体質だから維持されているだけで、我が家の存続にこだわりはないんだよ?」


 殿下と血統書を結んだあと、殿下からリーズ王家の秘密を聞きました。


 リーズ王家は、結婚相手の魔力量を問わず、一代に一人、膨大な魔力を継承したお子が生まれるそうです。殿下は一人っ子なので、継承者は殿下です。


 ロスウェル公爵家の継承者は、ご嫡男のデイン様です。


 国を運営するのは12名家が担っていますが、国防と言う意味では、この2家があれば十分なほど強大な力だそうです。


 聖女が勇者パーティーを作って少数精鋭で攻め入るようになったのは、第1期聖女伝承の中期以降です。


 最初期の聖女は人族の軍勢を率いて魔族領に押し寄せてきました。この2家の3世代の継承者たちは、リーズ領の国境線を超えさせたことがなく、リーズ以北に攻め込まれたことがないのです。


 当時、リーズ貴族たちは、人族の軍勢をよく研究し、継承者たちが待ち構えている戦場に上手くおびき寄せることができるように人族風のバトルスタイルに寄せた魔術を開発しました。

 魔法剣です。

 おびき寄せている間にスタミナ切れを起こさないように開発されたのが身体強化です。

 身体強化は民が人族の兵士たちから逃げるのにも有効です。


 そうして魔王の剣にわらわらとおびき寄せた人族兵士を2家が一気に殲滅するのです。


 ただし、あまりに強大な力であるため、その力自体が災いを呼ばないように極秘とされ、王家、公爵家、12名家だけで守られています。


 つまり、この2家の継承が上手く行ってさえすれば、リーズ国民は弱くても良いのです。

 だからリーズ国は恋愛結婚主義を取れるのです。


 それでも12名家の政略結婚は続いていますが、それは個々の家の判断です。12名家であり続けるための政略は必要なのでしょう。


 つまり、わたくしがクレメントを雲隠れさせてしまえば、リーズの守護者はロスウェル公爵家ただ1家になってしまいます。


 わたくしがリーズの災いと言っても過言ではない状況ですわよね?


「今は聖女が攻めてくる時代ではないし、ダジマットの治世が良いから魔族領の間で戦が起きたことはないのよ? 強大な守護力なんていらない時代なんだから、そんなに自分を責めないで?」


「そうだよ。魔族の間で起こりそうになる戦は、全てダジマットの仲裁で収まってきた。だからこそ、ダジマットは魔王として敬愛されつづけるんだ。それで、まぁ、姫が下賜されることに期待しすぎてしまった私達のことを許してほしい」


 陛下も妃殿下もとてもお優しい言葉をかけてくれるので、更に心苦しくなってしまいます。


「許すだなんて、そんな。とんでもないことですわ」


「ねぇ。その話、もう何度も繰り返したし、魔王様のおっしゃったとおり、あまり将来の心配をし過ぎないで私たちの次代を信頼しようよ。ね?」


 殿下はちょっと呆れ気味にわたくしたちのお詫び合戦を止めようとなさいました。


 そうですわね。


 リーズの両陛下とわたくしの両親は、どちらの家を断絶させるかについて何度も面会を行い話し合いました。

 ダジマットは仲裁が得意と言われますが、こと自分事になると上手くまとめられておりませんでしたわ。


 でも、わたくしたちは、悲観的すぎるから、もう話し合うのをやめようという結論になりました。

 問題の棚上げのようでわたくしはイヤだったのですが、でも、何故かわたくしのお父様と殿下が意気投合して、わたくしたちの次代はきっとなんとかできる強さと賢さを持っているから、大丈夫だっていうの。

 

 いずれにせよ、わたくしとクレメントの雲隠れは、わたくしたちが20才になるまでと期限を切りました。


 既に予言された死を回避するための暫定処置としては十分な期間だと思われますわ。

 

 それからわたくしたちは両陛下と和やかな晩餐を取ったあと、殿下がとっておきの場所に案内してくれました。


 それは意外にも市中が見渡せる高台でした。


「私は子供の頃、王族であることが凄く嫌だったんだ。魔術の修業がきつくてね」


「王族は皆そうですのね? わたくしも王族であることが凄く嫌でしたわ。魔術の修行がきつくて」


「ははっ。そうかもね? おじい様、父上、デインのおじい様、デインの父上で僕たち二人をメチャメチャ鍛えるんだ。でも、外では魔術はそこそこのフリをしなければならない。貴族の子供たちにバカにされるほど弱く振る舞う必要はないけど、子供たちの中には『王家は飾り』って教わる子もいるんだよ」


「まぁ。酷いわ。飾りだなんて。でも王家は12家のような派閥を作らないから、そのように見えるのね?」


「実際、何もしてないし。ただの『備え』なんだ。今となっては友達をふるい分けるのに丁度よかったと思えるんだけどね」


「子供の頃は、不愉快よね?」


「ああ。この丘で園遊会があった時に、わたしは『王家はお飾り』だと随分バカにされた。それでちょうどこの辺に座って、メソメソ泣いてた。そしたらリッチが隣に座って、不思議そうにしてた。『ねぇねぇ。あの子たちって、本物のバカなのかな? それともバカなフリ?』って」


「まぁ、リチャード様が? それはイヤミとかじゃなくて、本当にわからなかったのね?」


「多分ね。リッチの家は当代近衛じゃなくても名門なんだ。母君も名門で『備え』のことも聞いているし、リッチにも多分一番最初ぐらいに教えてる。そしたらミック、えっとテレーサの兄君が並んで座って、『この場合、バカかどうかはあんまり問題じゃないよ? この中から12人しか残らないんだ。知ってないと残れないってだけさ』って、リッチに優しく教えてた」


「大人びた会話をする子供たちね?」


「うん。それで、『知らないってことは幸せなことでなければならない。この丘から見える人々が何も知らなくても幸せに過ごせるような国にすることが継承者の2人と名家の12人の使命なんだ』って。その時初めて、継承者であり続けたいと思えたんだ。友達もできた」


「殿下。必ず戻ってきます。必ず」


「うん。一緒に、ね?」


「はい。一緒に」


 それから、わたくしたちは身を寄せ合ってただぼーっと街を眺めてリーズ最後の夜を過ごしました。

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