殿下と宝探しに出かけましたが、わたくしには向いていませんでした
「ガブリエル、だから抱っこしてあげるって言ってるじゃない?」
「大丈夫ですわ。まだ歩けます」
ごきげんよう。
ガブリエルです。
本日は、聖女の攻略対象の一人で、トレジャーハンターのフィリップ様とその恋人で次期近衛隊長の妹テレーサ様と殿下とわたくしで宝探しに来ています。
山登りが大変で、足が笑っておりますのよ。
お誘いをお受けした時はあまり深く考えておりませんでしたが、本当にきついわ。
何故、このようなことになっているかと申しますと……
フィリップ様は、やはりガーコ商会の血縁でしたわ。
ガーコ商会は、徹底した政略結婚で有名ですから、フィリップ様の御父君が「恋愛結婚主義」を掲げてワイケベック侯爵家からの政略の打診をお断りしたことがチグハグで気になっておりましたの。
結論から言うと、フィリップ様の御父君自身が政略を蹴って「恋愛結婚」なさったことで、こちらの分家は「恋愛結婚主義」に舵を切ったといった感じのようです。
そしてテレーサ様が、政略の相手は実はフィリップ様だということを「恋愛結婚主義」フィリップ様に言い出せない問題ですが……
これはフィリップ様に「テレーサ様の御父君に政略の相手をヘディングリー子爵家にしてはどうかと王家から推薦することができますが、それでは嫌ですか?」と聞いてみたら、大喜びしていたので、そのように進めました。
二人は政略結婚であり、恋愛結婚であるという決着ですね。
実は、ガーコ商会の当代当主デービッド様目線では、ワイケベック侯爵家はトレジャーハンティングとしては良い血脈ではないそうです。
ただし、それは当人たちが特殊能力が薄まっても良いのであれば、商会的には問題としていないとの回答をいただきました。
特殊能力と言うのは、真贋を見極めたり、広域探査でしょうか?
民間組織なので情報が出回らない家だけに興味が湧きますが、あまり探りすぎてもよくないでしょうね?
いずれにせよ、能力を継承するために相性の良い相手を紹介してほしいのであれば、一旦紹介された相手をお断りすることはできないという掟だそうです。
フィリップ様の御父君は、能力を失っても良いから好きな相手と結婚すべきだとお考えだからこそ、能力を失って、更に政略で結婚なんて論外! という態度なのですね?
そして、先日、神官試験のために神聖国へ足を運んだ折、その顛末を聖女シエルと共有したところ、「あら、宝物の記憶ならありますよ。頑張って思い出して手紙を書きますね?」と何故か乗り気になられて……
シエラから届いた手紙をフィリップ様にお渡ししたら、大喜びで……
宝物の場所が分かったかもしれないとの連絡を受けて、今、みんなで山登りしているところです。
一連の流れに関わったので、なんとなく、ついてきてしまいましたが、失敗でしたわ。
「あ~。ほら、もう、動けないんでしょ? 抱っこするよ?」
身体強化が使える殿下は涼し気な顔で私をひょいっと抱えました。
「フィリップ様、テレーサ様、足手まといでごめんなさい。宝探しの大変さが身に沁みましたわ」
「ふふふ。大丈夫ですよ。わたくしも身体強化がなければ、ガブリエル様と同じですもの」
ええ。テレーサ様。
慰めありがとう。
わたくしも身体強化をかけたのですが、掛け方が甘かったみたいで……
「ガブリエル様、宝探しの目的地ではありませんが、頂上に着きましたよ。今日は景観を楽しんで帰りましょう」
フィリップ様にそう言われて周囲を見渡すと、美しい木々の緑と空の青が見渡す限り広がった心が洗われるような美しい景観でした。
「宝探しはこういう美しい景観の場所ばかりとは限りませんが、でも、いろいろな美しいものや珍しい現象を見ることができるのもその醍醐味ですのよ?」
普段のテレーサ様は、華やかで社交的で完全無欠な貴族令嬢ですが、自然を愛する素の姿もお美しいわ。フィリップ様は良い方と出会われましたわね?
フィリップ様はフィリップ様で折衝にあまりにも抜け目がなくて、少し苦手ですが、宝探しにしても、女性にしても、趣味は良いようですわ。
こういう方がリーズに残って下さると、強くて良い国になりそうですわ。
今日は少し短いですが、山登りで疲れておりますのでこのくらいで。
それではごきげんよう。




