↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/34

殿下との雲隠れ生活の果てに

「ガブリエル! 綺麗だ!! よく似合っているよ」



 ごきげんよう。

 ガブリエルです。


 よく似合っていると言われたのは、ウェディングドレスじゃ、ありませんよ?

 小さいながらも結婚式は終わっていますからね?


 クレメントがわたくしの第9階位の神官試験の合格祝いに、紫色のクロークを作ってくれたのです。


 袖があるローブとは違い、肩からゆるりと美しく広がるドレープの間から手を出すタイプです。


 すっぽりと全身を包む緩やかな曲線が美しく仕上がっています。


 色は、濃い紫というか、紫と茶色の間というか、非常に上品な色です。


 クレメントの髪色のシャンパンゴールドの金糸で縁取りされて、見事です。



「クレメント、これはもう、芸術品ですわ。勿体なくて着るのがためらわれますわ」


「うん。紫はガブリエルとリチャードの瞳の色だからね。気合が入ったよ!」


 リチャードというのは、わたくしとクレメントの第1子です。

 わたくしたちが雲隠れして2年目、18才の時に誕生しました。


 覚悟していた通り、わたくしと同じ紫色の瞳で生まれてきました。

 クレメントはかわいい、かわいいと大喜びでした。


 顔もそうですが、表情がクレメントそっくりで、本当にとってもかわいくて仕方がありません。


 もうすぐ2才になるところで、まめまめしく動き回っては、なんと言っているかわからない言葉で沢山おしゃべりする元気な子です。



「クレメントも良く似合っていてよ」


 クレメントは同じ茶紫の生地にわたくしの髪色の銀糸の縁取りを施した、お揃いのクロークを自分用にも作ったようです。


 魔族、人族を問わず、愛する人の髪色や瞳の色を身にまとうことを好みますが、実際にやってみると照れくさいものですね。


 この調子だと、次の作品は同じ生地でリチャード用のベビーケープでしょうね?



「茶目茶髪の神官エルが着ても、紫目銀髪のガブリエル姫が着てもよいユニセックスのデザインにしたから、私の分も作ってみたけど、お揃いで着て出かけられるのはいいね!」


 そうそう。

 クレメントに遅れて4年、ようやく神官エルも第9位階神官試験に合格しました。


 雲隠れして最初の年は予言の年だったこともあって、引きこもってひたすら神官試験の勉強と訓練に取り組みました。

 同じく引きこもっていたクレメントがフルタイムで指導してくれても第7位階までしか合格できませんでした。


 妊娠してからは、魔術訓練は控えて、座学を集中的に進め、出産後に少しずつゆっくりと魔術訓練を再開し、4年目にして、やっとのことで合格、と言う感じです。


 雲隠れ中もクレメントのアーティスト魂は留まることを知らず、自分でパターンから書くことができるようになりました。


 次々に新しい服をデザインするので、ワードローブでは手狭になって、わたくし専用の衣裳部屋ができましたのよ。


 仮縫いの後に衣裳部屋に連れていかれ、わたくしの服を引っぺがしてフィッティングを行うので、殿下はわたくしの服を脱がせるのも上手くなってしまいました。

 まぁ、既に結婚しておりますから、服を脱がせるのが上手くても問題ありませんわよね?


 ブライト国の新進気鋭の匿名デザイナーとして、マタニティー服に、ベビー服にと、どんどん手を広げ、すっかり世界的に有名なファッションの巨匠ですわ。



 実は、わたくし、予言の日を超えた後は、雲隠れ中ながらも神官エルとしてクレメントと二人で世界行脚の旅にでようと考えておりましたの。


 世界中を見て回って、沢山の人と話をして、見聞を広めて……


 でも、結局、避難先のブライト国から一歩も出ませんでしたわ。

 引きこもった結果、クレメントのブランド名が世界中を飛び交うようになるなんて、世の中わからないものですわね?


 本音を言えば、このままずっとブライト国に引きこもって、クレメントがインスピレーションの爆発するままに服をデザインする生活を続けられれば良いのになどと頭を過るのです。


 でも、わたくしたちには為すべきことがありますからね?


 わたくしたちは来月、20歳の期限を迎え、ダジマットへ帰ります。

 リチャードは、クレメントのリーズの守護者の力を引き継ぎませんでしたので、ダジマットの王子として育てるのです。


 聖女伝承の通常のパターンであれば、わたくしは来年、次の悪役令嬢となる女児を授かるでしょう。


 その子がクレメントの力を引き継ぐのかどうかはわかりませんが、心身ともに健やかにのびのびと育ってくれればわたくしには他に望むものはありません。


 ただ、願わくば、第3子でも、第4子でもよいので、クレメントの力を引き継いだ子を授かり、いつの日かクレメントと共にリーズに帰ることができる日がくることを祈らずにはいられません。

 


 




最後までお読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。