変態独逸鉄道事情―蒸気機関車バカ一代編―
『おまえが持って来た北極海航路と、余が考えた4BC鉄道の両輪で計画を推進せよ。これは勅命であるっ!』
『ぎょ、御意……』
1930年6月。
時のドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム2世の鶴の一声によって4BC鉄道計画が始まった。
史実のヴィルヘルム2世は3B政策を推進していた。
なお、3BのBはベルリン、ビザンティウム(イスタンブールの旧名)、バクダードを意味している。
その目的は鉄道建設とそれに付属する沿線の港湾整備や殖産興業を通じて周辺地域に資本を投下し、自国の経済圏に組み込むことであった。
ちなみに、当時のドイツ帝国では3B政策という言葉は使われていない。
一種の語呂合わせ的な意味合いで後世になってから作られた言葉であり、史実日本の世界史の授業では一時期お馴染みなワードではあった。
この世界のヴィルヘルム2世発案の4BC鉄道は、上述の3B政策にアフガニスタンの都市バグラームとC(チャイナ:中華民国)を加えることでユーラシア大陸横断鉄道を実現するという誇大妄想……もとい、気宇壮大なプランであった。
計画の完遂には途方も無い予算と年月、解決するべき多数の政治的問題が予想された。各方面の関係者たちが頭を抱えてしまったことは言うまでも無いことであろう。
『おいおい、ただでさえ貨物機関車が不足してるんだぞ!? この計画が実行されたらとてもじゃないが輸送計画が破綻してしまうぞ!?』
『大量生産向きの貨物機関車が必要だ。それも早急に!』
『そんな都合の良い機関車なんぞあるわけないだろ!?』
真っ先に悲鳴を上げることになったのはドイツ帝国鉄道であった。
どんなに少なく見積もっても3万両の貨物機関車が必要と言われた技術者たちの心情は如何ほどのものであったのか。その苦悩と混乱ぶりは察するに余りある。
とはいえ、勅命なので泣いて縋って歯茎を剥いたところで事態が解決するはずもない。単純にクビで済めば良いが、下手をすれば物理的に首が飛びかねない。
『やむを得ない。01型の図面を弄って貨物機関車をでっち上げよう』
『他に大量生産に適した機関車が無いんだからしょうがないだろ!?』
『でも、あれって急行旅客用だぞ?』
『とりあえず動輪径を縮小しよう。間に合わせだが大出力だからなんとかなるだろう』
やむを得ず、01型を貨物機関車に改設計することで対応することにした。
01型は当時唯一の標準形蒸気機関車であり、量産も考慮されていた。これを改設計すれば大量生産に適した貨物機関車を開発出来るとドイツ国鉄の技師たちは考えたのである。
『うーむ、やはりというか図体の割に牽引力が不足してるな……』
『やはり専用の貨物用機関車を開発したほうが良いのでは?』
『開発は進めるべきだろう。しかし、当座はこいつでなんとかする必要があるぞ』
量産を前提にした新型貨物機関車の開発はは突貫作業で進められ、同年8月にはバグダード鉄道で試験に供された。しかし、期待したほどのけん引力は発揮出来なかった。
蒸気機関車の特徴として、変速装置が存在しないことが挙げられる。
ボイラー圧が同じならば、牽引力と最高速度は動輪の大きさと数によって決定される。
とどのつまりは、動輪直径が大きければ高速性能が発揮できる。
動輪直径が小さければその逆で、低速になるが牽引力が向上する。
実例を挙げれば、英国の世界最速蒸気機関車マラード号の動輪径は2032mmで2mを超える。これに対して、貨物機関車として有名な日本のD51の動輪径は1400mmしかない。
試作貨物機関車は上記のセオリーに従って再設計されたものの、期待されたほどのけん引力は発揮出来なかった。それでも現状では最もマシな貨物機関車として完成したので、01.10型として生産が急がれることになったのであるが……。
『もっともっと生産しろと上からせっつかれる。もう疲れたよ……』
『製造工場はもう限界まで回しているのにどうしろと?』
『新しい工場を作る時間も工員の手配も間に合わんぞ。このままでは……』
01.10型は量産性が考慮されており、ドイツ帝国の機関車メーカーが総動員されて過去前例が無いほどに大量生産されていた。しかし、供給側の努力を嘲笑うが如く需要は急増の一途であった。
『こうなったら構造を簡略化するしかないな』
『そんなことしたら性能が低下しないか?』
『ある程度は妥協してもらう必要はあるだろう。しかし、無茶を押し付けてくれたんだ。文句は言わせないさ』
とにもかくにも、現場に一台でも多く機関車を送り込む必要があった。
多少の性能低下を甘受してでも、ドイツ国鉄側が製造の簡略化に踏み切ったのはある意味当然と言えるだろう。
『除煙板なんぞいらん! スピード出さないんだから、あんなの無くても問題は無い』
『ボイラー缶胴部のケーシングも外してしまえっ!』
『覆いの形状も単純な箱型にしてしまいましょう』
その結果、01.10型の機能を維持する上で特に必要不可欠でない部品はことごとく省略されることになった。除煙板が撤去されたことに加えて、ボイラー上の砂箱や蒸気パイプ覆いなどが工作の容易化を重視して単純な形状に変更された。
『保守装置も必要最低限を残して撤去だ』
『具体的には給水ポンプ、給水加熱器、シリンダー安全弁、軸箱楔ってところか』
『必要になったら後付け出来るように取り付け穴だけは残しておきましょう』
とことん突き詰めるゲルマンな技術者たちの改良がこの程度の改良でとどまるはずもなかった。性能面や保守面からは備わっていた方が好ましい機器である給水ポンプと給水加熱器はインジェクターの追加搭載で代用、ウォーターハンマー現象を防止するための安全弁はシリンダー内水圧が一定値に達すると自動的に脱落しシリンダー破壊を防ぐ簡易な栓で代用された。
『部材の仕上げもカットで。見た目は悪くなるけど使えれば問題無い』
『戦争中の時と違って、資材をケチらなくても良いのはせめてもの救いだよな』
『そりゃあなぁ。あの時は工期は縮めろ、材料はケチれと無理無茶のオンパレードだったからな……』
各部の基本構造についても工作の簡易化に主眼を置いた設計の見直しが行われた。鋼材の鍛造品が用いられていた主連棒や連結棒は圧延鋼板の溶接組み立て品で置き換えられて見た目が不格好――もとい、無骨、否、機能美溢れる造形となった。
車体の核となる台枠は設計そのものは変更されなかった。
ただし、軽量化のための肉抜き穴の廃止と板材をガスバーナーで焼き切った後の仕上げ加工を取りやめるなど現場レベルで簡略化が進められていくことになる。
『機関車本体だけではダメだ! 炭水車の工作も簡略化だ!』
『確かに機関車単体だけ簡略化したのでは片手落ちではあるな』
『機関車と炭水車がセットでないと意味は無いからな』
簡略化は機関車本体だけでなく炭水車にまで及んだ。
蒸気機関車は本体と炭水車のセットで運用されるものであるから、これもある意味当然と言える。
具体的には船底形と呼ばれるセミモノコック構造の半円筒形水タンクの上に石炭積載スペースを設けた。台車心皿中心間の台枠を大胆に省略し、水タンク自体が強度部品としてその代わりを果たす新型炭水車として完成することになった。
ちなみに、新型炭水車の仕様は史実の52型機関車の船底形テンダーに極めて酷似していた。ゲルマン民族的合理性を突き詰めると答えは似たようなものになるということなのだろう。
設計と工場レベルの努力により、01.10型の生産量は急激に増大していった。バクダード鉄道のみならず、1930年代前半にはドイツ帝国の主力貨物機関車としての地位を確立することになったのである。
『……受けた雪辱は晴らさなければならぬ。されど、我ら大ドイツは卑劣にもクリスマスに不意打ちした共産主義者どもとは違う! よって、ここにあらためてソビエト政府に対して宣戦を布告するものである!』
1935年1月中旬。
ドイツ帝国のヴィルヘルム2世は、全世界に向けてソ連への宣戦を布告していた。
『連中に教育してやる。情け無用フォイヤー!』
『弾薬の備蓄は十分だ。撃ちまくれっ!』
『イワンどもに受けた雪辱を倍返ししてやるぜぇっ!』
カイザーの宣戦布告の5分後には、国境に配置されていた部隊から一斉砲撃が開始された。一部の部隊はソ連国境を越境するなど、その動きはまさに疾風迅雷であった。
『それで、戦況はどんな感じなのですか?』
『ドイツ帝国が押しているな。圧倒的と言って良い』
『やっぱりですか。こっちではソ連の勇ましいプロパガンダばかりで戦況が伝わってこないんですよ』
開戦冒頭からドイツ帝国側は押しに押しまくった。
戦場は鉄量の暴風雨となり、圧倒的な火力を叩きつけられた赤軍は前線を食い破られて包囲殲滅されていったのである。
後に皇帝の戦いと呼ばれることになるこの戦争で、ドイツ帝国陸軍が動かした部隊は圧倒的であった。単純な兵力だけでも30個師団、機械化大隊、混成機械化旅団、機甲師団、補給部隊などまで含めると人数換算で50万もの人間が投入されていた。
なお、この世界の日本の帝国陸軍は総兵力20個師団でしかない。
流石は世界屈指の陸軍大国と言えよう。
これだけの人間を前線に送り込むだけでも一大プロジェクトとなる。
当然ながら、ありとあらゆる手段が用いられることになった。
しかし、近代の戦争は馬匹でやるものではない。
移動手段が何であれ石油は欠かせないわけで、当然ながら必要な石油はうなぎ上りとなった。
ドイツ帝国は石炭は産出するが、石油は出ない。
ならば、どこから大量の石油を調達してきたのか?
その答えはイラク王国にあった。
今回の独ソ戦ではドイツ帝国側に与しており、バクダード鉄道を使って大量の石油を輸出していた。
『ファイサル1世には負けてはおれぬ。今回の戦争はまたとない機会だ!』
イラク王国がドイツ帝国に全振りした理由。
それは、協力した見返りに支援を受けるためであった。
アブドゥッラー1世は、シリア・アラブ国王のファイサル1世の兄である。
共に中東で近代国家を作ろうと誓い合う程度には仲が良い兄弟ではあった。
しかし、現状のイラク王国は政治的にも経済的にも発展途上国に過ぎなかった。その様子は英国の支援を受けて順調に発展しているシリア・アラブ王国とは対照的と言えた。
『我が国も列強から支援を受けられれば……』
シリア・アラブ王国は英国の支援によって発展した。
ならば、イラン王国も列強の支援があれば発展出来るはず。アブドゥッラー1世がそのように考えたのも当然のことであろう。
『ここが正念場だ。全ての石油をドイツ帝国へ輸出するのだ!』
中東屈指の産油国であるイラン王国が産出する石油を全てドイツ帝国へ回す。
それが意味することは極めて重大であった。
どういう形であれ、近代兵器を稼働させるには石油が欠かせない。
逆の言い方をすれば、石油さえあれば兵器は動かせる。ドイツ帝国から開戦から息切れすることなく攻勢を仕掛けることが出来たのは潤沢な石油があったからに他ならない。
しかし、ここで問題が発生する。
ドイツ本国まで如何にして石油を運ぶのか?
石油に足が付いていて、勝手にドイツまで歩いてくれるのであれば苦労はしない。パイプラインなどという便利なものもこの時代には存在しない。
ドイツ帝国とイラン王国の石油のやり取りの手段。
それはバクダード鉄道であった。
イラン王国の原油はバクダード鉄道で遠路はるばるベルリンまで運ばれて石油製品に加工された。ドイツ快進撃の影の立役者とでも言うべき存在であり、鉄道の維持には関係者の血と汗と涙無しには語れない様々な苦難が存在していたのである。
「あああああ!? 誰だよ甘すぎる輸送計画を立てたヤツは!? 想定と現実が剥離ってレベルじゃねーぞ!?」
「こっちは血を吐く思いでダイヤ組んでるんだぞ!? それを無能呼ばわりしやがってぇぇぇぇっ!」
「もう3日も帰れてない……いや、まだ3日か。ふふふ……」
1935年1月下旬。
ドイツ国鉄の列車運行計画担当部署でスタッフたちが悲鳴をあげていた。
彼らは列車運行図表の上に列車の動きを表す線を引き、秒単位の正確なダイヤや運転計画を作成するプロフェッショナルな集団――史実日本ではスジ師と呼ばれた職人たちであった。
宣戦布告による独ソ戦再開によって、バクダード鉄道の輸送量は急激に増大することになった。大攻勢の主役はなんといっても戦車であり、戦車を動かすには石油が欠かせない。
イラク王国からやって来る原油を満載した列車を遅滞なくドイツ本国まで送り届ける。これを無くして大攻勢の継続は有り得ず、彼らの双肩には国家の命運すらかかっていたのであるが……。
「もう無理だ! これ以上ダイヤを捻じ込む隙間なんぞありゃしない!」
「貨車があっても機関車が足りないぞ!?」
「事故で閉塞が解除出来ない。このままだとヤバイ!」
宣戦布告による電撃戦の開始から2週間も経っていないというのに、早くも輸送計画が破綻しかけていた。戦前の想定が甘すぎたというものあるし、前線部隊がハッスルし過ぎたのも多分にある。
理由はどうであれ、このままだとドイツの石油産業を一手に引き受けているIGファルベンに原油が渡らなくなる。そうなればガソリンも軽油も重油も生産出来なくなる。その結果が何をもたらすかは、もはや言うまでも無いだろう。
「修正ダイヤを組む時間は無い。こうなったら走らせながら調整しよう」
「客じゃないから文句も言わないだろうしな。なんか気が楽になってきたぞ」
「最終的にIGファルベンの工場に着けば良いのだ!」
この問題に対してドイツ国鉄のスタッフが取った手段は、史実日本の某電鉄の得意技であった。皆大好きなKQクォリティ。いわゆる一つの逝っとけダイヤである。
逝っとけダイヤは、事故などの運転支障が発生した際に行き先などを決めないままとにかく列車を走らせお客さんを運びながら乱れたダイヤを調整していく。出たとこ勝負な運行であるため種別や行き先が突然変更されることも多く、大規模な変更になる場合もある。
ちなみに、逝っとけダイヤの語源は『とりあえず行けるとこまで逝っとけ』と思われる。ダイヤの乱れが発生しても、とりあえず乗れば着ける。乗り慣れた地域住民もこのことが分かっているので混乱も少ないはず。多分。
『IGファルベンの担当者が昨日の分はまだかとうるさいんだが……え? ちゃんと確認しろと伝えておけ? いいのかそれで……』
『さっき駅長から直接電話があったぞ。ホームを占拠するデカブツをさっさと動かせとさ』
『鉄道警察からの事情聴取!? ちょっと待て、うちらは何も悪いことはしてないぞ!?』
結果として、史実よりも無茶無謀な運転が強行されてドイツ国鉄は方々に迷惑をかけることになった。客(?)が原油だったので、直接文句を言われることが無かったのがせめてもの救いであろう。
『えっ、撤退!? このデスマーチが終わるんですね!? バンザーイ!』
『ある意味神がかったタイミングだったな。このままだと年末を待たずに組織が崩壊してたぞ……』
『1か月ぶりにお家に帰れるぅぅぅぅぅぅぅ!』
1935年初頭から秋までに至るドイツ帝国の大攻勢の裏には、ドイツ国鉄スタッフの壮絶な奮闘があったのは確かである。もっとも、その努力と献身はロシア最強の守護神には通用しなかったのであるが……。
「オーライ、オーライ。もう少し前進してくれ」
「もう少し……もう少し……よし、ストップ! そこで停車だ!」
ドイツ帝国南部の鉄道拠点であるミュンヘン中央駅。
駅の傍に設けられた機関区では、1台の01.10型機関車が補給作業の真っ最中であった。
「よーし、落とせー!」
「ヤヴォール!」
重力落下式の巨大なコンクリート製給炭塔から、01.10型の炭水車に石炭が投下される。その様子はまさに黒い豪雨であった。
「馬鹿、入れ過ぎだ!?」
「や、ヤヴォール!」
瞬く間に山盛りとなったものの、そのまま投下し続けたせいで積み切れなかった石炭が炭水車の両脇に散らばる。オペレーターが不慣れで落下蓋を規定よりも長い時間空けてしまったのが原因であった。
「あぁもぅ、こんなにばら撒きやがって……」
「いくら新入りと言っても、そろそろ慣れてもらわんとなぁ」
「今度やらかしたら本人にやらせようぜ」
給炭作業を終えた機関車が給炭塔を離れれば、その場に残るのは線路の両脇に残る黒い山。手すきの駅員たちが文句を言いながら片付けるのも、この時代の風物詩であった。
「……給炭作業に時間がかかり過ぎだ。これでは機関車を増やしても意味が無い」
その光景を見ていた機関区の管理区長は思わず嘆いてしまう
こんなはずでは無かった、と。
管理区長は、これまで幾度となく機関車の増備を上申してきた。
それは戦時中に大量に押し寄せた原油を満載した列車を捌くためであったし、戦後の民間需要増大に対応するためでもあった。
管理区長は、戦前からの蒸気機関車の大量増備が間違っているとは思っていなかった。そうでもしないと、イラク王国産の大量の原油を捌くことなど出来なかったであろう。
(補給作業に時間がかかる蒸気機関車をこのまま使い続けて良いのだろうか……?)
しかし、蒸気機関車は補給作業に時間がかかる問題があった。
補給作業に時間がかかってしまうから、実働数を確保するためにも大量の機関車が必要になってしまう。
(始動に時間がかかるのも問題だ。外国ではディーゼル機関車の配備が進められていると聞くが……)
蒸気機関車は始動までの時間がかかることも問題であった。
巨大なボイラーの大量の水を沸騰させて十分な圧力の蒸気を作り出す必要があるために、始動から4~6時間ほどもかかってしまう。
補給と始動に時間がかかり過ぎるが故に実際に使える機関車は目減りしてしまう。それを補うために大量の機関車が必要になってしまう
『機関車は増えても全てが有効に使われていないのでは意味が無いのでは?』
『無駄の原因は補給作業だ。もう少し時短出来ないものか』
『給水はともかく給炭作業は熟練が必要だし、無駄も多いからなぁ』
『給炭塔を維持するのも手間だぞ。あんな重量物を上に載せていて、万が一崩壊でもしたら……』
管理区長の思いは、ドイツ帝国の鉄道関係者全ての思いでもあった。
蒸気機関車の維持運用に誰もが内心では辟易していたのである。
しかし、誰も蒸気機関車を全廃しようとは言い出さなかった。
そんなことをしようものなら、今までの蒸気機関車推しが間違っていたことを認めることになりかねない。
大量に製造し過ぎたこともドイツ国鉄の動力近代化の足かせとなった。
戦前から戦時中にかけて作りまくった01.10型は1万両を超えており、バクダード鉄道のみならドイツ本国内でも欠かせない存在と化してしまっていた。
これらを全て新型機関車に切り替えるとなると、いったいどれだけの予算が必要になるのか見当もつかない。しかも、蒸気機関車は機関車単体だけではない。蒸気機関車には必須の設備である給炭塔や給水塔、転車台も無駄になってしまう。
『石炭の代わりに重油を燃やせば良いのでは?』
ジレンマに陥ったドイツ国鉄に降って湧いたアイデアが重油専燃化であった。
今となっては誰が言ったかは分からないが、着想したのは現場の技術者だったらしい。
『完全に盲点だった。蒸気機関車は外燃機関なのだから石炭に拘る必要は無いんだ!』
『重油だったら簡単かつ短時間で補給が可能になる。運用効率も上がるぞ!』
『石炭よりも燃焼効率が20%は上がると計算結果が出た! 確実に出力がアップするぞ!』
『少なくともバクダード鉄道で運用されている機関車は全て重油専燃化すべきだろう。現地で燃料が手に入るから石炭輸送の手間が減って効率が上がる!』
重油専燃化プランは蒸気機関車推しの大人たちの熱烈な支持を受けるに至った。
技術者の軽口から始まったアイデアは、あっという間にドイツ国鉄内部で主流化してしまったのである。
一度方針が決まってしまうと、目的に猪突猛進してしまうのがゲルマン民族の常と言える。手ごろな01.10型が見繕われて、あっという間に改造されてしまったのは言うまでも無いことなのであるが……。
『確かに出力は上がったが、操作がピーキー過ぎる。これじゃあ、一瞬たりとも気が抜けないぞ!?』
『配管詰まりをなんとかしてくれ!? 気が付いたら全部詰まって動けなくなっちまったぞ!?』
重油専燃化された01.10型がトラブルが続出した。
蒸気圧の調整レバーの操作に繊細さが要求されたあげく、重油管が詰まって出力ダウンしてしまうなどエトセトラ。とてもではないが、運用に耐えるシロモノでは無かった。
『機関士の育成が間に合わないぞ!?』
『従来とは操作感覚が異なるうえに微妙な操作が必要だからなぁ』
『機関士のいない機関車が工場に放置されてるらしいぞ』
史実において、蒸気機関車の重油専燃が主流とならなかったのは動力近代化が主な要因である。しかし、従来の機関車と比較にならないくらいに操作が難しいという問題もあった。
操作感覚が全く違ううえに、ミリ単位でのレバー操作が要求される。
機種転換訓練が思うように進まないことに、ドイツ国鉄内部で危機感が強まったのは言うまでも無い。
『重油専燃ならば、内燃機関と似たようなものだろう。ある程度制御を自動化出来ないか?』
『石炭よりは燃焼は制御しやすいから、出力調整を自動化も不可能じゃない……かも』
しかし、ここでゲルマンの鉄道技術者たちは斜め上にかっ飛んだ。
操作が難しいならば自動化してしまえとばかりに、機械式アナログコンピュータを作り上げてしまった。
蒸気圧で作動する自動制御装置は圧力計や動輪の回転速度に応じて適切な補正制御を行う仕組みであった。史実のフォッケウルフ Fw190に搭載されたコマンドゲレートの蒸気機関車版と言える。
重油専燃化で出力は2割増しとなり、自動制御装置のおかげで各段に操作が簡単になった新型機関車は01.11型として制式採用された。新規で生産される機関車は01.11型に切り替えられ、従来の01.10型機関車は全て改造されることになるのである。
「このままだと我々の立場が無くなってしまうぞ!?」
怒りに満ちた表情で設計台を殴りつける設計技師。
同僚たちは彼の行動を咎めようとはしない。皆の想いは同じであった。
1937年1月某日。
ボルジッヒ社のとある部署では、溜まりに溜まった憤懣がまさに爆発しようとしていた。
その場に居る者全てが社内でもエース級の技術者たちであった。
将来のドイツ鉄道の未来を託された彼らは、とある蒸気機関車の設計に邁進していたのである。
『うーむ、やはりというか図体の割に牽引力が不足してるな……』
『やはり専用の貨物用機関車を開発したほうが良いのでは?』
『開発は進めるべきだろう。しかし、当座はこいつでなんとかする必要があるぞ』
1930年に制式化された01.10型蒸気機関車は、運用開始直後から性能不足が指摘されていた。当座はこの機関車で凌ぐのはやむを得ないとしても、本命の機関車を早急に開発する必要がある――これが当時の現場の共通認識であった。
『新型機関車が完成した暁には、01.10型なんぞあっという間に駆逐してくれるわぁ!』
『これからの時代はマレー式なのだ。テンダーなど滅んでしまえっ!』
開発は7年前から開始されており、当時の彼らは非常な熱意を持って設計に取り組んだ。従来のテンダー式機関車とは一線を画するマレー式機関車として開発が進められていったのであるが……。
『既に現状の機関車で性能は十分? 今更図体デカくて持て余す大型牽引機はいらないだと!? ふざけんなぁっ!?』
『上があれこれ要望をねじ込んでくるから開発に時間がかかってしまったんだぞ!? 無責任過ぎるだろう!?』
『あんな出来損ないがドイツ鉄道の未来とか断じて認めんぞ!?』
この世界でもボルジッヒ社はヨーロッパ最大の蒸気機関車メーカーであったが、上からの要求は苛烈になる一方であった。最強メーカーに集いし精鋭たちは、賽の河原の石積みの如く設計を作っては修正させられ、また提出して修正を繰り返すハメになったのである。
『出力制御は簡単だし、一人で運転出来るのは良いな!』
『最初はどうかと思ったけど、ここまで化けるとは思わなかったぜ』
02型機関車の設計に手間取っているうちにライバルの01.10型は飛躍的な性能向上を果たした。重油専燃化による出力向上、自動制御装置を装備したことによるワンマン運転化、さらに細かい使い勝手も大幅に改善されていた。
『元が旅客列車だから、意外と高速運転が出来る。おかげで貨物だけでなく旅客でも使えるので使いまわしが効いて助かるぜ』
『鉄道会社としては貨物と旅客を兼任出来る機関車は非常に助かるな』
開発ベースとなった01型は旅客用機関車であった。
それは当初の01.10型のけん引力不足を招くことになったが、度重なる改良と重油専燃化による相乗効果で旅客もこなせる万能貨物機関車として結実した。もはや、01.10型(01.11型)を出来損ない呼ばわりする者は存在しなかった。
『軸重が軽いタイプはローカル線で使えるのは助かるな』
『ワンマン化したのは、このためかと疑いたくなるよな』
大量生産された01.10型は多数の派生型を生み出した。
その中でも軸重が15tまで軽減されたタイプ(01.13型)は、燃料補給の容易さとワンマン運転なこともあってローカル線で大歓迎された。地方の鉄道会社では引退した01.13型の争奪戦が起こるほどであった。
『重連運転を一人で出来るようになるとか、たまげたなぁ』
『自動制御装置で遠隔操作とか、完全に理解の範疇外だぜ……』
あげくの果てには、ジャンパ連結器によって総括制御まで可能になってしまった。この世界では、ワンマンで蒸気機関車の重連運転という前代未聞の珍事が可能になってしまったのである。
このような状況であったので、本命だったはずの新型機関車は歓迎されなかった。ボルジッヒ社の新型機関車担当者たちがやさぐれてしまったのも当然と言えよう。
それでも開発を続けたのはエリートたちの意地なのか、はたまた単に惰性だったのか。今となってはその答えを知る者は存在しなかった。
『よっしゃぁぁぁ! 貨物を2000t牽引出来る新型機関車の完成じゃぁぁぁぁぁっ!』
『一度にタンク車を30両は引ける。余裕のパワーだぜ!』
『デカ過ぎて本国では持て余すかもしれないが車両限界には収めているから問題無い……無いよな?』
すったもんだのあげく、新型機関車は02型蒸気機関車として1938年に制式採用された。既に信頼性が確立された01型機関車の部品を流用したことに加えて、事前に徹底的なネガ潰しが行われたこともあり最初から安定した性能を発揮したことは特筆すべき点であろう。
02型機関車はバクダード鉄道を筆頭とした海外路線に投入された。
ドイツ本土では持て余し気味な巨体は海外路線では問題にならず、4シリンダー機なのでハンマーブロー現象による線路への負荷も抑えられていた。
これに対して、01.10型機関車は2シリンダー機であった。
2シリンダー機は一対のシリンダーで動輪を動かす構造であり、シリンダーが車体の左右に露出しているために工作が簡単でメンテナンス性に優れる長所があった。量産性とメンテナンス性が重要視された01.10型にとっては最適な構造と言える。
その反面で4シリンダー機と比較して燃費と出力に劣り、線路にかける負担も大きかった。地盤が頑丈で施工もしっかりしているドイツ本土の線路であれば01.10型で問題無い。
しかし、ドイツ国外の鉄道は軟弱地盤や拙速な工事による施工不良区間が点在している。4シリンダー機で線路にかける負荷が小さく、かつ大出力で大量の貨車を曳ける02型はまさに4BC鉄道のために生まれたような機関車と言えよう。
惜しむらくは、02型は高性能ではあったが故に取得コストが高くついてしまったことであろう。現状でも01.10型(01.11型)で対応出来なくもないのに、敢えて置き換える意義が見い出せない。
結果として、置き換えるどころかダブルスコア以上の大差が付いてしまった。
その高性能ぶりは評価されたものの、02型は用途廃止となった01.10型の置き換えとして少数生産にとどまってしまった。
02型が売れなかった原因は単純にコスパが悪かったことに尽きる。
新型の導入は伊達や酔狂で行うものでは無い。たとえ高性能であっても、代替出来る程度の性能差しか無いのであれば財布の口は緩まない。
『02型は名作ではあったが、傑作とは言えない。その原因は中途半端さにある!』
『そうだな。もっと突き抜ければ良かったのだ。何故、あの時に躊躇してしまったのだろう……』
『この際だ。国内で運用出来る限界サイズの最大出力の機関車を設計しようぜ!』
しかし、ボルジッヒ社のエース設計者たちはそうは考えなかった。
彼らは02型の敗因を中途半端さにあると決め付け、より極端で過激な機関車の設計に没頭していったのである。
『理論上我が国の鉄道を走れる最大最強の蒸気機関車はガーラット式機関車で運転整備重量525t、最大出力8000馬力で引張力60090kgである』
鉄道マニアならば、エーリッヒ・メッツェルティンの名前を知っているかもしれない。中二病――もとい、ロマン溢れる思考実験をしたことで有名(?)鉄道技師であり、その内容はドイツ国内の鉄道を走れる最大最強の蒸気機関車はどういうものになるかというものであった。
ボルジッヒ社の技術陣は、よりにもよってその機関車を実際に再現しようと試みた。それもただ再現ではない。より進化した重油専燃システムやギースルエジェクタ等、最新の技術が惜しみなく導入された。
『これが世界最強の蒸気機関車だっ!』
『このサイズっ! この迫力を見よっ!』
『我が大ドイツの技術は世界いちぃぃぃぃぃぃ! 出来んことなどなぃぃぃぃっ!』
その結果、完成した機関車は運転重量400tに迫る鋼鉄の怪物と化した。
とんでもないデカブツであったが、ガーラット式機関車であるのでカーブには強い。車体も車両限界ギリギリに収めたので、ドイツ国内の鉄道で(辛うじて)運用可能であった。
ボルジッヒ社の凶器の産物とも言える超巨大機関車は、あろうことか04型蒸気機関車として採用されることになる。この決定に大勢の人間が首をかしげたことは言うまでもないだろう。こんな化け物を何処で使えというのか。
関係者たちの間では、この決定の裏には政治的配慮があると噂された。
ボルジッヒ社は欧州最大の機関車製造メーカーであるので、こういった噂が出てしまうのは避けられない。もっとも、実際にそういった『配慮』が全く無いと言えば嘘になってしまうのであるが……。
「いやぁ、富士山を見ながら食べる食事は絶品だな!」
「俺らの時代じゃ食堂車なんて無かったからなぁ」
「利便性を追求し過ぎるのも考えものだな……って、俺らが言えた義理じゃないな」
弾丸列車の食堂車で舌鼓を打つ鉄道モブたち。
東京オリンピック開催の1ヵ月前に弾丸列車は開業にこぎ着けていた。
モブたちが食しているメニューは、史実0系の食堂車のメニューを再現していた。食い意地――もとい、食には拘る日本人なだけあってメニュー表まで完璧に再現する熱の入れようであった。
「そして最後はこれ。スゴイカタイアイスだ!」
「あぁっ!? スプーンが折れたぁ!?」
「もはやこれは鈍器だろ……」
ちなみに、史実の新幹線で車内販売されていた『シンカンセンスゴイカタイアイス』も完璧に再現されていた。付属のプラスチックスプーンでは歯が立たないほどの固さであり、乗客の間で大いに話題となったのである。
弾丸列車の営業運転開始のニュースが世界を駆け巡った時、世界の目は冷ややかであった。既に時代のトレンドは大型飛行艇による優雅な旅であり、鉄道は時代遅れと声高に主張する者さえいた。
『バレットトレインは速いし快適で素晴らしい!』
『これこそ新時代の鉄道だ!』
『極東にこれほどの鉄道があったとは……』
そんな下馬評を弾丸列車は速度とサービスで黙らせた。
内心では鉄道は時代遅れと冷ややかな目で見ていた者たちでさえ、実際に弾丸列車に乗ると評価が一変してしまう。訪日した大勢の外国人観光客たちが手放しで称賛したのは言うまでも無いことであろう。
当然というべきか、その利便さを体験した乗客たちは自国にも同様の高速鉄道を求めた。1940年以降、各国では高速鉄道の計画が雨後の筍如く出てくることになったのである。
『失敗したAPT計画を実現するチャンスだ!』
『同盟国がやったのだから、我が国がやらないのはおかしいからなぁ!』
『これには上層部も文句は言えまい。老朽化した鉄道インフラに予算をぶちこめるチャンスだ!』
真っ先に動いたのは英国であった。
日本の弾丸列車の成功を知るや否や、即座に高速鉄道計画を発表していた。
この世界の英国の鉄道インフラは史実以上に老朽化が進んでいた。
史実知識を活かして史実よりも早期に建設したのだから、当たり前と言えば当たり前なのであるが。
史実における英国の鉄道インフラの老朽化問題を理解していた円卓は改修予算を事前に準備はしていた。しかし、突発的に発生する戦争などの想定外のイベントによって流用されるのが常であった。
英国は他国に先駆けて動力近代化に成功したものの、線路やレールなど鉄道インフラが老朽化が深刻化していた。鉄道インフラ老朽化問題を解決しつつ、高速鉄道を導入するためには日本の弾丸列車は適切な大義名分であった。
『APTを仮に再現するとしても、まずは電化しないことには始まらないぞ?』
『現状だと電化率は1割程度でしかない。この際だから主要幹線は全部電化してしまおう』
『それ以外の地方はどうするんだ?』
『そこは史実のHSTで補う』
英国の高速鉄道計画は先進旅客鉄道と高速列車の二本立てで進められた。
APTは電車のために運用には電化が前提であり、主要幹線の電化も同時に進められることになった。
対するHSTは気動車であるために非電化区間での運用を前提に開発が進められていった。既にデルティック機関車を実用化しているから楽勝かと思いきや、ローカル線のために軸重が制限されたことで車体の軽量化に苦しむことになるのである。
『日本に負けていられるか!? 我が国でも高速鉄道を作るのだ!』
『コミューン時代から使われている路線は老朽化が甚だしい。良い機会ではあるな』
『どうせやるならバレットトレインよりも高速化しないとな!』
フランス共和国も高速鉄道の整備に乗り気であった。
こちらも英国と同じく、高速鉄道単体ではなく老朽化した鉄道インフラの刷新もセットになっていた。
『憎い……! 首都が国土のど真ん中にあるのが!』
『一極集中し過ぎなんだよ! 昔の人間はなんでこの問題を放置したんだ!?』
『効率的に路線を敷くという概念そのものが消滅してるんだよな我が国は……』
しかし、フランス共和国の場合は英国ほど問題は単純では無かった。
パリを中心とする放射状ネットワークゆえの歪みが、高速鉄道の整備に後々にまで影響することになるのである。
『カイザーがぶち切れておられたぞ。こうなったら、何が何でも高速鉄道を実現しないと事は収まるまい』
『ウクライナ経営で余裕は無いのだがな……』
『なるべく予算をかけずにやってもらいたいものだ』
ドイツ帝国も以下略。
弾丸列車の存在を知ったカイザーが高速鉄道整備を言い出すのは予定調和とさえ言えた。
しかし、ドイツ帝国には他国には無い問題が存在していた。
その問題をどうにかしないことには高速鉄道など夢のまた夢であった。
『いやでも、どうするんだ? 他国では動力にディーゼルや電気モーターを使うみたいだが……』
『我が国にはそういったノウハウは無いぞ? 作れないことは無いだろうが時間がかかる』
『果たして、それまでカイザーが待ってくれるだろうか?』
『『『うーん……』』』
史実ならば『フリーゲンダー・ハンブルガー』などで電気式気動車のノウハウも積み重ねていたのであるが、この世界のドイツの鉄道技術は諸々の理由で蒸気機関車に特化していた。この状況で高速鉄道を作れと言うのは無理難題に等しいだろう。
『日本人に出来て我らに出来ないはずがない!』
『理論的には蒸気機関車で200キロ以上の営業運転も不可能ではないはず……はずだよな?』
『どのみち、今から電車や気動車の技術開発をしていたら他国に後れをとってしまう。蒸気機関の力を信じるんだっ!』
しかし、ドイツの鉄道技術者たちは蒸気機関車による高速鉄道の開発を選択した。いくら信頼と実績があるからとはいえ、とても正気とは思えない。彼らは酔っぱらってでもいたのだろうか?
否、断じて否。
正気も正気、ガチ本気であった。酔っ払いよりも質が悪い。
ドイツの鉄道技術者たちには、蒸気機関車と長らく関わってきた自負があった。
いくつもの問題を己が技術で乗り越えた実績があった。そう簡単に蒸気機関車を捨てられるはずがない。
『駆動輪の回転速度は毎分400回転前後が限界だ。かといって、動輪を大きくするのにも限界がある』
『ハンマーブローによる線路へのダメージも深刻だぞ。マルチシリンダー化すれば軽減出来るが、整備性とコストがなぁ……』
『高速鉄道なら路盤は強化されるから、そこは問題無いのでは?』
『限度というものがあるだろ。路線の保守作業が増えると高速鉄道を満足に運用出来なくなるぞ?』
史実で蒸気機関車が廃れた原因をいちいち挙げていたらキリがない。
ドイツ帝国の鉄道技術者たちは蒸気機関車の限界を知悉していたし、気動車と電車と比較して不利なことも理解していた。
『動輪径と回転数が頭打ちだとすれば、従来のホイジンガー式弁装置での高速化は限界だろう』
『やはり駆動方式から開発する必要があるな』
『我が社では蒸気エンジンによる駆動を実験しているぞ。こちらのほうが高速化には有利だろう』
それを見越したうえで、彼らは高速鉄道向きの蒸気機関車を作ろうとしていた。
蒸気機関車はまだ終わっていないことを世界に知らしめるため、その一点のみで日頃はライバル関係にあるメーカーが垣根を超えて技術を出し合ったのである。
「お頭ぁ、前っ!前っ!」
「見つけたか!? 野郎ども、ぬかるんじゃねぇぞ!」
「「「おぉっ!」」」
アフガニスタン王国の大地を土煙をあげて疾走する馬群。
それを操っているのは、遊牧民の恰好をした男たち。
彼らはジハードを遂行する者であった。
愛する国土に無遠慮に踏み込んで来た不届き者たちに天誅を下すべく、今まさに襲い掛からんとしていた。
ムジャヒディンは気勢を上げながら土埃に紛れて消えていく。
しばらくしてから発砲音と爆発音が聞こえてくる。耳の良い者がいたら、悲鳴が混じっていることにも気付けただろう。
10分足らずで静寂が戻ってくる。
1943年以降のアフガンの大地では、このような光景がかなりの頻度で繰り広げられていたのである。
「……あっさり全滅か。役立たずめ」
「まったくですな。せめて、もう少し手の内を晒させても良かったでしょうに」
少し離れた岩場では、戦闘服に身を包んだ男たちが毒づいていた。
目の前で全滅シーンを見せつけられたというのに、彼らはまったく動じていなかった。
この世界のアフガニスタン王国はドイツ帝国と4BC鉄道建設に関する協定を締結していた。それを良しとしない非主流派は、ジハードを宣言して反政府運動を繰り広げていた。
4BC鉄道の建設を頓挫させたかったソ連は彼らに接近していた。
武器を提供し、訓練を受けさせることで別動隊として活用する意図があったことは言うまでも無い。その結果は、たった今無惨なものになってしまったのであるが。
「まぁ、いい。いざとなれば線路を爆破してしまえば簡単に無力化出来るだろう」
赤軍の特殊部隊隊長は事態を楽観視していた。
多少武装はしているとは所詮は列車。線路を破壊してしまえば、ただの置物に過ぎない。
「状況はどうだ?」
『鉄条網を切断しました。これから線路へ向かいます』
3日後。
赤軍特殊部隊は線路を爆破するべく工作を開始していた。
「ここ連日のダイヤに変更は見られなかった。今日もおそらくそうだろう。爆破時刻に変更は無い」
『了解であります同志大佐。事前の予定通り1時間後にセットします』
ただ線路を破壊してもすぐに復旧されてしまう。
最大限の破壊効果を狙うのならば、武装装甲列車ごと破壊するのがベストとなる。
(これでノコノコやってくる連中を血祭にあげられるな)
武装装甲列車が破壊されると撤去作業が必要になるので敵に負担を強いることが出来る。復旧のためにやって来る連中を血祭にあげることだって出来るだろう。特殊部隊の隊長の作戦は、なかなかに外道――もとい、非常に合理的と言えた。
『エマージェンシー! 敵がっ……』
「どうした!? なにがあった!? 応答しろ!」
無線機が一瞬だけ切羽詰まった声を出す。
隊長が折り返しコールするも、返答は無かった。
「くそっ!? なんでバレた!?」
この瞬間、隊長は作戦の失敗を悟った。
無線機から応答が無い理由はそれ以外に考えられない。
「ど、同志。アレを……」
駆け付けた副官が、震える指先で空を指す。
その先にある物体を見た隊長は目を剥いた。
「気球だとぉ!?」
ドイツ帝国軍は武装装甲列車に気球を括り付けて高い索敵能力を獲得していた。
鉄道沿線は遮蔽物が存在しない。そのような地形で気球からの見下ろし視点は絶大な威力を発揮する。
爆破工作に派遣された特殊部隊は鉄条網を抜ける前に発見されていた。
接近警報は有線通信で武装装甲列車に伝わり、線路に近づいた特殊部隊員たちにハリネズミの如く装備された機関砲が火を噴いた。その結果は言うまでも無い。
「ちょ、待て!? 嘘だろう!?」
長大な砲身が指向しているのがレンズ越しにはっきりと見える。
双眼鏡で観察していた隊長が絶叫するのも当然であろう。
「嘘でもなんでも無いですよ!? 早く逃げ」
副官が最後まで言うことが出来なかった。
超音速で飛来した88mm高射砲の直撃によって、隊長と副官は仲良く四散したのであった。
『第1目標無力化確認。第2目標のデータ送る。座標は……』
赤軍特殊部隊の災難はこれだけにとどまらない。
周辺に分散して隠れていたところを、アハトアハトで狙い撃ちにされていく。その様子は、まさに鴨撃ちであった。
『第3射、遠。距離50m』
『ヤヴォール! 修正マイナス、距離50……フォイヤー!』
武装装甲列車に搭載されているアハトアハトの照準装置は、遠距離の高速な航空機や地上の戦車を正確に捉えるために機械式・光学式の照準器と外部のデータ送受信機が組み合わされていた。
直接照準による対空・対戦車戦闘はもちろんのこと、今回のケースのように気球からの観測データを用いた間接射撃にまで対応出来た。もっとも、軽量高初速なアハトアハトを間接射撃に用いても威力はお察しなのであるが。それでも対人やソフトスキン目標には充分過ぎた。
「連中の目はあっちを向いている。今がチャンスだ! 総員、突撃せよっ!」
「「「Ураааааааа!」」」
この状況を線路を挟んで反対側に潜んでいた特殊部隊は見逃さなかった。
多数のGAZ-62に分乗した隊員たちは、一気呵成に武装装甲列車との間合いを詰めていく。
「反対側から敵接近中!」
「近接防御火器の使用を許可する。撃ちまくれ!」
「「「ヤヴォール!」」」
それに対する武装装甲列車の反撃は熾烈という言葉が生温いくらいに激しいものであった。毎分3000発を超える発射速度を誇るガスト式機関銃による弾幕は車両をたやすく爆散させ、ついでに特殊部隊員を挽肉にジョブチェンジさせてしまった。
『馬鹿なこちらが見えているのか!?』
『ひっ、こっち向いた!?』
あまりの損害の多さに夜襲に切り替えたものの、ドイツ帝国技術陣は史実よりも早期に赤外線暗視装置を完成させていた。気球に設置されたノクトビジョン付き双眼鏡によって、夜間の襲撃も完璧に対応されてしまったのである。
かくして、ソ連が満を持して実行した4BC鉄道破壊作戦は頓挫してしまった。
しかも、一方的なワンサイドゲームなので救いが無い。多少なりとも損害を与えられていれば多少なりとも言い訳も出来たのであろうが……。
もっとも、今回の作戦はソ連書記長ヨシフ・ヴィッサリオノヴィチ・スターリンの特命なので泥をかぶるのは現場の人間のみで済む。しかし、その現場の人間が全滅したらどうなるのか?
一説には、スターリンが帽子を手放せなくなったのはこの頃からと言われている。ほぼ例外無く帽子を装着しているので、年代判別手段に用いられるほどであった。
特殊部隊による作戦が失敗に終わったことに加え、満州国での謀略が一定の成功を収めたことからソ連は4BC鉄道の破壊活動から手を引いた。ソ連の後ろ盾を失った非主流派のムジャヒディンは急速に衰退し、劇的な治安回復によって4BC鉄道の工期が半年も前倒しされることになるのである。
「……なぁ、聞いたか?」
「聞いたかって、何を?」
「ドイツでも新幹線が開業するんだってよ」
1945年6月某日。
青森県市ノ渡工区では、作業員たちが昼食休憩に入るところであった。
「あちちっ!? もっと出力調整上手く出来んのかよこれ」
「しょうがないだろ。まだ試作品らしいし」
温め過ぎた電子レンジに閉口しつつも彼らは弁当を食べる。
彼らは青森県人会所属のモブであり、平成会傘下の地元土建屋の作業員であった。
1940年に開業した東海道弾丸列車は、東京オリンピック効果もあって瞬く間にドル箱路線となった。調子に乗った鉄道省は、その翌年には東北弾丸列車を計画。路線設計と並行して土地の買収までやってしまい、1943年から本格的に建設工事を着工していた。
奇しくも史実と同じ路線計画となってしまい、東京と青森から同時進行で工事が進められた。彼らが働いている土建屋も仕事を受注出来たので、市ノ渡工区で作業に従事していたのである。
「ドイツの新幹線っつーたら、あれか? ICEか?」
「史実ならそうなんだがな。この世界ではとんでもないゲテモノになっちまったらしい」
「ゲテモノねぇ。この世界のドイツはやらかしまくるからなぁ。今更、多少のことでは驚かんぞ?」
わいわいと雑談に興じるモブたち。
娯楽が少ないこの時代、こういった話は格好の暇つぶしでもあった。
「じつは瑞穂新報の編集長が俺の同期でな。こないだ話してくれたんだよ」
「もったいぶるなよ。早く言え」
「そうだ、そうだ。昼休みは有限なんだぞー!」
「つまらんことを言ったら、おまえの弁当食ってやる!」
事情を知るモブにブーイングが殺到する。
これでつまらないことを話そうものなら、タダでは済まないだろう。
「あぁもう、分かった。話す、話すから!?」
事情通モブは必死で弁当箱を守る。
午後からの肉体労働のためにも、こちらも死に物狂いであった。
「……じつは、ドイツの新幹線は蒸気機関車らしいぞ?」
とっておきの情報であったが、今日の弁当を守るためにはゲロるしかない。
逆に言えば、その程度の価値しかないということでもあるが。
「ふーん、こっちの世界のゲルマン民族は酔狂なんだなぁ」
「史実でも似たようなことやってたから、特に驚かんなぁ」
「典型的な独国面というか。この場合、英国面とどっちがマシなんだろうなぁ?」
なお、同僚たちの反応は微妙であった。
生前に独国面を知ったモブたちからすれば、この程度は許容範囲だったのである。
「……おまえさん、ドイツ語話せたよな? ドイツで高速鉄道の開業式典があるからちょっと取材に行ってくれ」
「ええー、誰か他の人に代わってもらえませんか?」
瑞穂新報の編集部。
編集長からドイツ出張を告げられたモブ記者は露骨に嫌な顔をしていた。
瑞穂新報は平成会が作った新聞社であり、政治系の情報の速さと正確さは他紙の追随を許さない。日本の国内事情を把握するためにはうってつけの高級紙と言える。
「おまえもブン屋の端くれだろう。今回のイベントは歴史の転換点になるやもしれん。箔を付けると思って行って来い!」
そんな瑞穂新報がドイツの高速鉄道を取材しようとしているのは、政治的影響力のあるイベントと判断しているからに他ならない。今回のイベントは欧州の盟主たるドイツ帝国の立場をより強化するものと編集長は見ていた。
ドイツ高速鉄道は国内のみならず、4BC鉄道でも営業運転を予定していた。
そうなれば、ドイツ帝国の影響は中東を伝って中華民国にまで伸びることになる。
史実21世紀において中国の一帯一路は失敗に終わろうとしているが、この世界の逆一帯一路とでも言うべき巨大な広域経済圏はまだまだ成長を見せていた。4BC鉄道の通過国では、現状では一部の場所ながらもマルクと元の決済が可能となった。これは将来的にトルコ王国、イラク王国、アフガニスタン王国がマルク・元ブロックに組み込まれることを意味していた。
上述の3国は資源が豊富で経済成長も著しい。
これらの国がマルク・元ブロックに組み込まれれば、世界最大の経済圏であるスターリングブロックもうかうかしてはいられないだろう。
「……まぁ、そこまで嫌なら無理にとは言わんが」
「ほっ……」
とはいえ、編集長も鬼では無い。
というよりは、生前は管理職の立場でコンプラとパワハラで苦しんだせいで部下への無理強いが出来なかっただけなのであるが。
「確か英語も話せたよな? ドイツが嫌ならイギリスへ行ってもらおうか」
「イギリスぅ? 何か取材するようなイベントありましたっけ?」
一難去ってまた一難。
メシマズ国に行くのを回避出来たと思ったら、ラスボスが出てきてしまったことにモブ記者は閉口してしまう。
「イギリスでも高速鉄道のお披露目があるんだ。そっちの取材に行ってもらおう」
英国では、主要幹線であるイースト・コースト本線とウェスト・コースト本線の電化と信号システムの改良が完工目前に迫っていた。既に一部区間ではAPTの各種走行試験が実施されており、導入まで秒読み段階であった。
この世界のAPTはオーバーテクノロジーを採用したことで完成度が上がっていた。史実では機能不全だった車体傾斜機能も完璧に作動しており、路線の線形を弄らずに200キロ営業運転の目途も立っていた。
もう一つの高速鉄道であるHSTはローカル線への導入が既に進められていた。
こちらは史実APT-Eを参考にした電気式ガスタービン気動車であり、初期タイプでの騒音問題も解決して順調に蒸気機関車を置き換えていた。
「で、どっちにする?」
「うぅ、どっちもメシマズ国じゃないですかヤダー!?」
「おまえなぁ……そんな理由で行きたくないって言ったら、この世界だと大概の国はダメだろ!?」
しょうもない理由を聞いてしまい、編集長は思わず脱力してしまう。
これでは、せっかくのマルチリンガルも宝の持ち腐れであろう。
「……だったら、取材の拠点をドーセットにしたらどうだ? あそこなら飯は美味いぞ?」
「その手があったか!」
ドーセット領の飯が美味いことは平成会のモブには周知の事実であった。
某人材コレクターの猛プッシュで関東大震災時に大勢の日本人料理人が移民しているので日本料理屋が多い。
かつて虎の尾を踏んでドナドナされた平成会の元過激派モブがシノギで屋台をやっているのも大きい。史実知識を活かして熾烈な屋台バトルを日々展開しており、味も価格もお墨付きであった。
『怖いくらいにハプニングが無いんですけど? ちょっとくらい英国面を発揮してくれないと記事にならんなぁ……』
モブ記者が英国取材を選択したのは言うまでも無いだろう。
彼はドーセットを拠点にして美味い飯を食いながら無難に取材して無難な記事を書くことになる。事故もハプニングも起こらないのでは、記事の書きようが無かった。
『冷たいハムソーセージチーズを固くてぼそぼそしたパンに挟んでビールで流し込む……この恨み晴らさでおくべきか! 食い物の恨みは恐ろしいことを知れぇっ!』
これに対して、不幸にもドイツ行きの切符を掴んでしまったモブ記者は食のストレスを取材にぶつけることになった。時速200キロで疾走する蒸気機関車を撮影したり、ヴィルヘルム3世の取材に成功するなどエトセトラ。数々の特ダネを上げた不幸なモブ記者は局長賞を受賞して、出世街道をひた走ることになる。
1945年7月に開業したドイツ帝国の高速鉄道はいろいろな意味で技術の粋を尽くしたものであった。技術の凄さはともかく、その方向性は間違っているとしか思えなかったが……。
・重油専燃装置による燃焼効率の向上
・補給時間の短縮、
・自動制御装置を装備したことによるワンマン運転化
・自動制御装置の外部信号操作対応&ジャンパ連結器による総括制御
・空気予熱器採用によるさらなる高効率化
・蒸気モーター採用によるハンマーブロー現象の回避
・蒸気モーター採用による駆動輪の回転数限界の回避
・駆動輪をギアで接続することによる空転の低減
主な技術だけでも、これだけの技術が投入されていた。
細かい改良などを含めたらキリがない。
技術的挑戦をやるだけの価値は確かにあっただろう。
この世界において、世界初にして史上唯一の時速200キロ営業運転可能な蒸気機関車の称号を得たのであるから。
それはドイツ帝国の鉄道技術がもはや後戻り出来ないところまで来てしまったことを意味してもいたが。蒸気機関車のあらゆる技術的困難を乗り越えてしまった状況で動力近代化の流れなど起きようが無い。
しかし、それは他国の動力近代化を黙って見ていることを意味しない。
彼らの執念は、やがて蒸気ディーゼルハイブリッド機関車として結実することになるのである。
以下、今回登場させた兵器のスペックです。
ドイツ国鉄 01.11型蒸気機関車
全長:23.94m
全幅:3.10m
全高:4.55m(煙突含む)
重量:108.9t
速度:100km/h
動輪径:1400mm
軸配置:4-6-2(ホワイト式表記)
ボイラー直径:2000mm
出力:2680馬力
乗員:2名(交代含む)
史実の01型蒸気機関車をベースに開発された貨物用機関車。
本来の01型は急行旅客用であり、貨物用に転用するために動輪径の縮小(2000mm→1400mm)が行われている。
設計のベースに01型が選ばれた理由は、この時代のドイツ帝国において唯一の標準型機関車だったからである。全国規模で部品が統一されているので量産に適しており、大量の貨物機関車を必要としていた当時の情勢では無難な選択だったと言える。
しかし、動輪径の縮小だけで貨物用機関車したために肝心の性能が足りない事態に陥ってしまった。この問題を解決するべく数々の新技術が投入された。
数々の改良の結果、1930年代前半にはドイツ帝国の主力貨物機関車となった。
大量に製造されたために派生型も多く、ローカル線用に車体にアルミ合金を多用して低軸重化を実現した01.13型などが有名である。
※作者の個人的意見
必要なのは性能だけでなく、必要な時に必要な数が揃うことも大きいと思うのです。拙作の01.11型は性能不足気味ではありましたが、量産性が考慮されて大量生産出来たので大いに役立つでしょう。
ドイツ国鉄 02型蒸気機関車
全長:27.35m
全幅:3.10m
全高:4.50m(煙突含む)
重量:140.0t
速度:120km/h
動輪径:1400mm
軸配置:(1’C)Dh4v(マレー式)
ボイラー直径:2000mm
出力:3600馬力
乗員:2名(交代含む)
史実では計画のみに終わってしまった53型機関車をボルジッヒ社の技術陣が最新技術で再現したもの。重油専燃化や自動制御装置によって基本性能が底上げされている。
現状ではドイツ国鉄唯一のマレー式機関車である。
貨物用機関車としては極めて優れた性能を発揮したものの、高コストのために少数生産に終わっている。
※作者の個人的意見
最初の構想ではアメリカのビックボーイのスペックを流用しようと思ったのですが、調べてみたらドイツにもマレー式があったので採用させてもらいました。史実だと製造元のボルジッヒ社が空爆を受けているし、出たタイミングが悪すぎたとしか言いようが無いです…(ノ∀`)アチャー
ドイツ国鉄 04型蒸気機関車
全長:49.5m
全幅:3.10m
全高:4.20m(煙突含む)
重量:396.0t
速度:125km/h
動輪径:1400mm
軸配置:(1F+1D1)+(1D)×2
ボイラー直径:3000mm
出力:9600馬力
乗員:2名(交代含む)
史実のとある鉄道技術者の思考実験の産物。
あろうことか、この世界では最新技術が盛り込まれて実用化されてしまった。
重油専燃化や自動制御装置によって基本性能が底上げされてるのはお約束。
この世界のドイツ帝国で唯一のガーラット式機関車である。
全長は長いものの、ガーラット式は曲線に強い長所が存在する。
それ故に、ドイツ本土でもギリギリ運用は可能であった。
しかし、破格過ぎる性能を活かせる場所はドイツ本土には存在しなかった。
各種試験と言う名のたらい回しで海外を彷徨ったあげく、落ち着いた先が武装装甲列車であった。
桁外れな出力は装甲列車を曳くには最適であり、機関車本体にも充分過ぎるほどの装甲が与えられた。状況に応じて曳く車両は変わるものの、機関車本体の前後に近接射撃用銃座と高射砲を載せた車両を接続。最後尾に観測用気球を運用可能な観測車を連結するのが基本形態であった。
※作者の個人的意見
装甲列車は男のロマン!
イメージとしては迷彩くんに出て来た装甲列車ですね。ミサイルとかは積んでませんけどw
鉄道省 0系弾丸列車
全長:400.3m(16両編成時)
全幅:3.38m
全高:3.975m
重量:881.6t(16両編成時)
速度:200km/h
軸配置:Bo-Bo(台車単体)
機関:電動モーター(210kw)×8基(車両単体)
出力:13440kw(16両編成時)
乗員:1名(運転士のみ)
弾丸列車と名が付いているものの、その中身は0系新幹線である。
平成会の鉄オタが全力で関わっており、その形状から細部に至るまで完全に再現されている。
鉄オタモブの野望は尽きることはなく、将来的には2階立て車両や寝台車も導入予定である。
あまりのドル箱ぶりに鉄道省も大ハッスルしており、東海道弾丸列車に続いて東北弾丸列車も鋭意建設中である。
※作者の個人的意見
史実の0系新幹線そのものです。
平成会の鉄オタモブたちは新幹線の名称を広めたいのですが、この時代の人間には弾丸列車のほうが聞こえが良いのか実現していませんw
GAZ-62
全長:3.36m
全幅:1.57m
全高:1.8m
重量:1.1t
ホイールベース:2.3m
速度:80km/h
行動距離:200km
積載量:500kg
エンジン:GAZ-M 1 直列4気筒ガソリンエンジン50馬力
乗員:2名
ソ連版ジープ。
トヨタ自動車が1928年3月に販売が開始した民間向けオフローダー(トヨタ ジープ)をソ連が接収し、ヘンリー・フォードに丸パクりさせている。
塗装以外はオリジナルと同一であり区別は極めて困難である。
徹底的にコピーしたために相互に部品互換性も存在しており、日本国内の愛好家が修理する際にはソ連から部品を入手するのが定番となったほどであった。
※作者の個人的意見
ソ連にもジープがあるといろいろと捗ると思われたので設定しちゃいました。
戦場で出くわしたら困惑するでしょうねぇ…(;´∀`)
この世界のドイツ帝国の鉄道技術がヤバいことになりました(;´∀`)
でもまぁ、ドイツの技術は世界一ぃぃぃぃ!なので、きっとなんとかなるでしょう(適当
>時のドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム2世の鶴の一声によって4BC鉄道計画が始まった。
本編第88話『北極海航路と4BC鉄道』参照。
>史実日本の世界史の授業では一時期お馴染みなワードではあった。
今の子たちって3B政策って単語知ってるんでしょうかね?(´・ω・`)
>とどのつまりは、動輪直径が大きければ高速性能が発揮できる。
旧ビートルが大径タイヤを履いて最高速度を稼いでいたのといっしょです。
回転数とトルクが変わらないなら、タイヤ径が大きいほど最高速度は伸びます(空力損失を除く)
>ウォーターハンマー現象
シリンダー内に溜まった水がピストンで強く押され、シリンダーや蓋を激しく叩いて破損させる危険な現象です。
なので、シリンダー内に水が溜まらないように通常は安全弁が装備されています。史実の52型はコストカットのために撤去されて簡単な栓で代用されています。拙作の01.11型もこれに倣っています。
>ドイツ帝国のヴィルヘルム2世は、全世界に向けてソ連への宣戦を布告していた。
自援SS『変態独逸レーベンスラウム事情―カイザーシュラハト編―』参照。
>皇帝の戦い
元ネタは史実1918年の春季攻勢です。
序盤は快進撃して、中盤で息切れ、最後に負けるオチはいっしょですw
>ファイサル1世
拙作における初出は本編第36話『イスラエル建国』だったりします。
そろそろT資金をなんとかしないといけないなぁ…(;´∀`)
>シリア・アラブ王国
史実だと短期間に滅びましたが、この世界では中東随一の発展した国になっています。
>ミュンヘン中央駅
ドイツ南部の鉄道網の拠点です。
トルコ王国経由でやってきたイラク王国産の原油を積んだ列車は一度ここに集積されていました。
>外国ではディーゼル機関車の配備が進められていると聞くが……
主にデルティックとか、デルティックとか、デルティックとか。
この頃にはフライング・スコッツマンもデルティック機関車で牽引しています。
>ボルジッヒ社
蒸気機関車の時代にはヨーロッパ最大有力メーカーで、世界でも第2位の地位を占めています。ちなみに、世界1位はペンシルバニア鉄道(PRR)です。PRRの予算が当時の合衆国の連邦予算よりも多かったことは有名な話だったりします。
>テンダー
いわゆる普通の蒸気機関車。
機関車本体の後ろに炭水車を連結する形式。
>マレー式
ボイラーの下の複数の走り装置(シリンダー・動輪など)を備えた形式の機関車。
アメリカのビッグボーイが有名。
>ジャンパ連結器
鉄道車両の制御回路や冷房などの電源回路を接続・連結するケーブルとコネクタの総称。最近は連結器に内蔵されてて、簡単に接続解放出来るようになってたり。
>総括制御
1人の運転士が複数の車両の動力を制御する制御方式のこと。
基本的に電車の制御を意味します。ディーゼル機関車でも総括制御が研究されたのですが、制御パラメータが多くて完全に同期することが難しくて断念されています。蒸気機関車だと蒸気圧だけを見れば良いからなんとかなるはず。精度はかなり大雑把になるでしょうけど(;´∀`)
>ハンマーブロー
動輪が回転する際に発生する下向きの力。
主連棒の動きをみれば分かるのですが、カウンターウェイトの位置が上下しています。これがハンマーのように作用するわけです。
>ガーラット式機関車
車体を3分割構成としてボイラーを中央の台枠上に浮かせた状態で置き、その前後に動輪がついた首振り可能な台枠を置いて中央の台枠を支える構造の機関車。ボイラーの下でなく前後に駆動輪が配置されているのが外見上の特徴。
>弾丸列車
見た目は完全に0系新幹線だったりします。
>東京オリンピック
この世界の日本は大陸から撤退しているのでオリンピック辞退の原因となる日中戦争が勃発していなかったりします。
>時代のトレンドは大型飛行艇による優雅な旅
霞ヶ浦→ドーセット沖→ネス湖間で日英直行便ただいま運航中!
>他国に先駆けて動力近代化に成功した
史実より早く作ったのだから、早く陳腐化するのは当然なわけで……。
>即座にAPT計画とHST計画を発表していた。
APTをアンポンタンって、呼ぶのはヤメルンダ!
>高速鉄道単体ではなく老朽化した鉄道インフラの刷新もセットになっていた。
日本の高速鉄道が新幹線と呼ばれるのは、路線を新たに作ったからです。
これに対して欧州の鉄道は在来線も走る新在直通方式なので、高速鉄道を作る際には在来線に手を加えることが必須となります。
>フリーゲンダー・ハンブルガー
意味は空飛ぶハンブルク人。
フライング・スコッツマンといい、昔の人の感性が分かったような分からないような…(´・ω・`)
>武装装甲列車
いくら分厚い装甲と近接防御火器を備えていても、レールという弱点が存在するからどうしようもないんですよねぇ…。
>ほぼ例外無く帽子を装着しているので、年代判別手段に用いられるほどであった。
具体的には1940年から1943年の間くらい。
>東海道弾丸列車
この世界における東海道新幹線の名称。
>電子レンジ
この時代だと平成計算機が少数試作して試験に供しています。
>オーバーテクノロジー
テッド君が召喚したモノ全てが該当。
使用には事前の許可が必要だったりします。
>蒸気ディーゼルハイブリッド機関車
ボイラーからの蒸気とディーゼル燃料の両方で動くピストンエンジンの機関車。
史実だと試験レベルのみで開発終了しちゃいましたけど、この世界のドイツ帝国ならやってくれると信じています(`・ω・´)




