第二話 すーぱーまいえんじぇるぼでぃーがーど
後書きに設定を乗せようと思います。
「オエエエエエエエエエエ」
人を喰った。あまりの事実を拒否したい。吐き気がする。肉を断つ感覚が顎に生々しく残っている。
「ビチャ、、、ビチャ」
しかし、口から戻されるのは胃液ばかり、肉が出てこない。あれは夢だったのだろうかとさえ思えてくる。
口を拭う。そして、血塗れた手を見る。
「うわあああああああああああ」
腰が抜ける。尻もちをつく。
特に誰に追われているわけでも、誰に襲われているわけでもないのに後ずさる。
何をしても何を見ても人を喰った。その残酷な現実が少女を襲う。
少女はまたしても胃液を吐き出す。
「吐き戻そうとしても無駄ですわ。ソレはわたくしに捧げられた供物。既にあなたの腹にはなくってよ。」
気持ちが悪かった。気味が悪かった。それをさせたコレに殺意が湧く。
そして許せなかった。美味しかった。そう思って喰っていた私自身を。
「お前、何させやがる!」
少女はベルの小さな体に掴みかかる。
「あら?わたくしは対価を払ってもらっただけですわ。無力な子羊に捕食者としての力を授けてやったのにそんな言いぐさはなくってよ。
死を待つのみのあなたを助けて差し上げた。感謝されこそすれ、責められる覚えはなくってよ。」
「それは感謝してるけど、、、あれは、あんなのは!」
あんまりだ。あんまりだった。
「ひとまず、魔法少女が来る前にずらかりますわよ。ついてきなさい。」
「お、おい!」
魔法少女から逃げる。
それは私が魔獣にでもなったみたいで。
酷く気分が悪かった。
ーーー
二人?(一人と一柱?)は近くの路地裏に逃げ込んだ。
「はあ、はあ、飛ばしすぎ、」
「あら、情けない。」
「私、運動神経いい方なんだけどな。。。」
冷静になり、落ち着いて話ができるようになったが、やってしまったことへの気持ち悪さに眩暈がする。
希が知ってしまったら、、、私は、
希に拒絶されたら、、、私は、
「説明してくれ。」
「ふふ、何から聞きたいですの?」
ベルは笑みを浮かべた表情を崩さない。
「私は化け物になったのか?」
「それが生物的なものを指しているのなら、あなたはまだ紛れもない人間よ。
もし、あなたが倫理的な精神的なそれを指しているなら、それはあなたの心次第。
わたくしに聞いても仕方のないことですわ。」
「私は、、、」
「それに、そういう契約を吞んだのはあなたでしてよ。
まさか、今更怖気づきましたの?」
「そんな、ことは、ない。」
「まあ、いいわ、もうあなたは戻れないのですわ。」
戻れない。その言葉が心に重く鋭く突き刺さる。
もし、バレたら私はどうなるのだろう。魔法少女に警察に追われる身になるのだろうか?
もし、捕まったらどうなるのだろうか。犯罪者として法の下に裁かれるのだろうか。それとも、化け物として討伐されるのだろうか。
怖い。
「対価っていうのは、他の魔法少女も払ってるの?そんな話、聞いたことがない、、、
もし、私だけ払わないといけないんだったら、それはなんで。」
魔法、始まりの日以降突如として発見された技術、今や生活に魔道具は必須なものとなっている。専門的なことは分からないが、魔法そのものに魔力以外の特別な対価は必要ない。はずだ。。。
「知らないわ。精霊憑きの話なんて。でも、いくら精霊といえど対価もなしに人間を助けたりしないわ。
もし、無償で精霊があなた達を助けているのならば気を付けた方がいいわ。
そうね、あなた達風に言えばタダより高い物はない。」
「彼女たちも、」
激しい戦いの中、希望を振りまく彼女たち。どこか遠いテレビの向こうの彼女たち。
「金で物を買うように、労働で金をもらうように、何かを得たいと思うのなら何かを捨てなさい。
あなたは願ったはずよ、どんな化け物、外道に落ちようとも力が欲しいとね。」
「私は、、、」
「あなたは思い知ったはずよ。力ないものが辿る末路を。そして、何かは知らないけれど、あなたには覚悟があったはずでしてよ?
もしかして、嘘でしたの?」
嘘なわけない。希は大切な妹だ。一人残して逝くなんてできない。
それに、妹が魔獣に襲われたとして私は妹をこの力なしで守り切れるのか。
さっき私が襲われたんだ。妹が今後一生魔獣の脅威にさらされないなんてこと、そんな都合の良いことを妄想する馬鹿じゃない。
「そういえば、聞いてなかったわね。あなたがなんで力を欲すのか。その力で何をするのか。
そして、そうそう、名前、聞いてなかったわね。」
私は希を守ってきた。
朝起こして、ご飯を作って、掃除をして、家計簿を作って、
でも、それじゃあ足りない。この世界は理不尽に溢れている。親だって魔獣によって帰らぬ人となった。
27分04秒、これは魔獣出現から魔法少女到着までの平均時間。力ない一般人が逃げ惑わなければならない時間。
希を、大切な人を守りたいなら、27分も助けを待っていられない。
「私は結衣、赤峰 結衣。」
悪魔と契約してでも、
「ただ一人、希を守る魔法少女よ。」
悪魔に正面から向き合う。
「そう、その意気よ。
じゃあ、こちらも改めて、わたくしはベル。偉大なる大悪魔の一柱。
これからよろしくお願いするわ。結衣」
「こちらこそよろしく頼む。ベル。」
精霊
魔法と同じく始まりの日以降、人前に姿を極稀に表し、人に魔獣を撃滅する力を与える超常存在。
一部の人は精霊様こそが世界の救世主様だと崇めている。
魔法少女
精霊によって戦う力を得た少女達。
なお、数は少ないが男性も存在する。そのため、公的名称は「魔法使い」




