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第三話 あ、ゾンビちゃいます

ベルはマスコット枠なので小さいです。キ〇ウベイ並み

「あのさ、すっごくダルいんだけど、これも代償?」


「それはただ疲れてるだけですわ。

あなたは死にかけていた。覚えてないとは言わないわよね。」


「ああ、勿論」


いかにその後の出来事のインパクトが大きかろうとそんなすぐ死にかけたことは忘れない。


「あの時のあなたは両足がひしゃげ、内臓も圧迫されてて危険な状態。

死までほぼ秒読みね。」


思ったより重体そうで笑えない。


「その状態から一瞬で治療し、魔獣を倒す。

あなたに宿った魔法がいかに強力といえど、そんな荒業、負担がかかるわ。」


「そうなのか。」


「ええ、ですから。今日は早く帰って寝ることがお勧めね。」


「ああ、そうするよ。」


私たちは変身を解除し帰路を歩み始める。


「なあ、ベルも家に来るのかい?」


「もちろん、ですわ。

精霊どもは契約だけして霊界に引きこもるようだけど、

わたくしは違いますわ。ちゃーんと付き合ってあげますの。」


「わかった。でも、どうしようか。ベルのこと、どう紹介したらいいか。」


私が魔法少女だと話すわけにはいかない。道端で拾ってきた?いやいや、犬猫じゃあるまいし、、、


「心配なくってよ。わたくしの姿を結衣しか見れないようにすることなんてお茶の子さいさいですのよ。

そして、声の方は、」


「(こうやって念話にすれば問題ないわ。)」


こいつ、脳内に直接!


「おお、すごい、これ私にもできるの?」


「できるんじゃないかしら。知らんけど、」


「随分と投げやりな、、、」


「できるとは思うわよ。そんなに難しくもないし、

でもね、一つ重大な問題があるのよ。」


勿体ぶった言い方に思わず唾をのむ。だが、そんな心持も杞憂に終わる。

ベルが少し頬を赤らめながら言う


「教えるの、苦手なのよ。。。」


「へ?」


「だから、!

教えるの!苦手!なのよ。」


ベルはムキーとそう効果音がなりそうな表情を浮かべ小さな手でポカポカとパンチを放つ。そんな様子に私は笑みがこぼれる。


「ふふ、」


「なによ。」


「いや、案外変わんないもんだなって。悪魔も人間も」


そう言うとベルは一瞬キョトンとした顔を浮かべ、


「そうね。」


笑った。

その後も他愛もない話で盛り上がった。

二人はとあることに気付かなかった。一人は疲れて、一人ははしゃいでいたのだろう。


家に着く。カバンはどっかいったので鍵もないためチャイムを鳴らす。

すると、中からドタバタと音が聞こえた。何かあったのだろうか。


「お姉ちゃん!よかっっ、、、」


玄関を開けた希が固まる。本当に何があったのだろうか。

希の顔がだんだん青ざめていく。


「キャアアアアアアアアアアアアアア、、、ゾンビイイイイイイイイイイイイ」


二人が失念していたこと。それは結衣は血塗れの格好のままであることだった。


「アハハハ! ププ、ゾンビですってw」


希は家の中に脱兎のごとく逃げていった。

やっちゃったという表情の結衣と、笑い転げるベルが対照的であった。


「あーー、うん、やらかした。」


改めて今の格好を振り返る。

腹から下が全部血に染まっていて、上半身も煤や汚れだらけで、希の言う通りゾンビみたいだった。

幸いなことに魔法少女の時についた血や汚れは別カウントのようで、口や手までべったり血がついていたりはしなかった。


「まあそうだよね、こんなん帰ってきたら怖いわな。」


希は玄関のドアを閉めていなかったので中に入る。

血は乾いていて垂れる心配はない。


洗面所で顔を洗い、とりあえず洗面所にあった寝間着に着替える。

早く風呂に入りたいところだが、希にちゃんと説明してやらねば、


「おーい、希ー、どこー。」


恐る恐る呼びかける。

すると、


「お姉ちゃん?」


リビングの方から警戒する声が聞こえる。希は食卓の影に隠れながら包丁を握っていた。


「お、おねえちゃーん、?」


震える声。

私だと認識した瞬間、希の表情が崩れた。


「ストップ! ちょ、待って! その包丁だけ置こう!? ね!?」


希はこくこくと頷くと、その場に包丁を置いた。

そして次の瞬間、待ちきれないかのように勢いよく飛びついてきた。


「お姉ちゃんだぁ、、、」


ぎゅっとしがみつかれる。頭をぐりぐりと押し付けてくる。

それは存在を確かめるみたいで、


「お姉ちゃんだ、」


一度では足りないと言うように何度も繰り返す。


「よかった、、」


か細い声が漏れた。そして、


「うわああああああああん!!」


堰を切ったように泣き出した。


「ニュースでねぇ……」


しゃくり上げながら言葉を続ける。


「お姉ちゃんが行ったスーパーがぁ……魔獣に襲われたってぇ……」


ぎゅうっと服を掴む力が強くなる。


「お姉ちゃん帰ってこないしぃ……連絡もつかないしぃ……」


「うん」


「わたし……わたし……」


それ以上は声にならない。ただ泣きじゃくるばかりだった。私は黙って背中を撫でる。


「大丈夫、大丈夫だよ。」


希の髪を撫でる。


「お姉ちゃんはここにいる。」


震える肩を抱き寄せる。


「希を置いていったりなんかしない。」


その言葉を聞いた瞬間、希はまた大きく泣き出した。

手から伝わる震え。

服を掴む指先の力。

どれだけ不安だったのかが伝わってくる。


その温もりを感じているうちに、ふと考えてしまう。

もし本当に死んでいたら。

もし、もう二度と会えなかったら。


そう思った瞬間、胸の奥から込み上げてくるものがあった。


「あぁ、、、」


気づけば私も泣いていた。私たちはお互いを確かめるように強く抱きしめる。

どちらからともなく泣いて、


泣いて、


泣き疲れるまで泣いた。


ーーー


希はそのまま眠ってしまった。私にしがみついたまま。本当はちゃんと布団で寝かせてあげたいけれど、この様子では難しそうだ。


「ふぁぁ、、」


大きな欠伸が漏れる。私も限界だった。

今日一日の出来事が、ようやく終わった気がする。


瞼が重い。そのまま意識が沈んでいく。


眠る姉妹の顔は、とても幸せそうだった。


ーーー


「この子が、結衣の戦う理由。」


ベルは頬を膨らませる。契約者はすっかり希という妹に夢中のようで、わたくしのことなど頭から抜け落ちてるらしい。


ぺチン。


ムカつくが、このアホ面に免じてデコピン一発で許してやる。


「仕方ないわね。」


放置されて不満げながらもブランケットをかけてあげる悪魔もいた。

治癒魔法

五大希少魔法の一つに数えられる。極めて使い手が少ないが、その効力は凄まじい。

S級8位【聖女たんだよ】曰く、「死んでさえいなければ肉体はいくらでも治せる」とのこと。


再生魔法

治癒魔法に比べれば使い手は多い。欠損した肉体や損傷した部位を修復する魔法。

なお、第三話で結衣が使ったのはこちら。現時点で結衣は治癒魔法を使えない。

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