第一話 腹ペコ魔法少女誕生の巻
処女作です。お手柔らかにお願いします。
朝6時、目覚ましはセットしていないが自然に起きる。隣で眠る希を起こさないようにそっとベッドから離れる。
リビングに立ち今日の朝ご飯を考える。普段は適当に済ますのだが、幸いなことに今日から夏休み、時間はいくらでもある。少しくらい凝ったものを作ってもいいだろう。
しかし、冷蔵庫を開け、諦める。冷蔵庫の中は風通しが良さそうだった。
「こりゃ、買い出しに行かないとな」
昼の予定を決め、残り物でなんとか朝食を作る。6時半
「普段は弁当も作ってるからなあ。」
いつも希を起こしに行く時間は7時。30分も早い。夏休みの初日に早めに起こされるのは可哀想だ。仕方なく、テレビをつけ、適当にスマホで時間を潰す。
「おはようございます。午前6時30分になりました。ここからは私が本日の天気をお知らせいたします。本日の天原市は終日快晴。最高気温は37℃。最低気温は27℃の予想です。
熱中症警戒アラートが発表されています。不要不急の外出はお控えください」
「最近暑いな。」
これからせっせか自転車漕ぐことを考えると身震いした。節約のため遠くのスーパーに行っているのだが今日ばかりは近くのスーパーで済ませてしまおうか?
「いや、だめだ、だめ。どうせ予定もないんだし頑張りますか!」
「また、本日の魔獣出現予測指数はレベル3と高くなっていますので、お出かけの際はお近くのシェルターの位置をご確認のほどお願いいたします。」
「ここ1週間高い数値が続いていることに専門家からは大氾濫の前兆なのではという話も出ており、、、」
7時。食パンをトースターにセットし、朝食の仕上げをする。
「うん、上出来。」
希を起こしに寝室へ向かうと希は呑気に寝言をいいながら幸せそうに眠っていた。とても可愛い。うちの妹スーパーハイパーウルトラ天使。最かわ。多分この笑顔だけで世界平和実現できる。魔獣殺せる。
「のぞみー、起きなさーい。朝ごはん冷めちゃうよ。」
「うんー、あとごふん。」
「はいはい、起きましょうねー、夏休みだからって生活習慣崩すのは許さないからねー。」
「おねえちゃーん。だっこー。」
希が寝たまま腕を伸ばして甘えてくる。私は一瞬で負けて希の脇を抱えて立たせる。
「わーい。おねえちゃん優しーい。」
「はいはい、わかったからさっさと顔洗ってきなさい。」
「はーい」
ーーー
「「いただきます。」」
二人で食卓を囲む。親はいない。親は魔獣の被害にあって1年前に死んだ。頼れる親戚もいなかったので妹の希と二人で暮らしている。親の遺産と魔獣被害補償支援金のおかげで金銭面は贅沢できないが十分なものがある。
「うーん、美味しい。おねえちゃんの料理大好き。これはいい嫁さんになりますね。」
「嫁って希ねえ、彼氏もできたことない私に何言ってんだか」
「それは男どもの見る目がないだけだよ。もし、私が男だったら絶対にほおっておかないね!
どしたん話きこか、してた。」
「そんなのどこで覚えてきたのよ。」
そんな他愛もない話をしながら食べ進める。
「「ごちそうさまでした。」」
「私買い出しに行ってくるからさ洗濯物頼める?」
「あいあいさー。泥船に乗ったつもりで任せてよ。」
「泥船じゃだめじゃん。ちゃんとやってよね?やってなかったらおやつ抜きだからね?」
「ぎゃー、ご勘弁を~。」
買い物したくを整え玄関へ
「いってきまーす。」
「いってらー」
家から一歩踏み出す。
「あっつ、」
エアコンの効いた室内からいきなり外に出たからか熱気にやられそうだ。まだおはようの時間というのに雲一つない空からは容赦なく日が照らされている。
自転車の鍵を外しペダルを踏む。吹き抜ける風が気持ちいいなんてことはなく、熱波が襲う。近所のスーパーで買い出しを済ませたい気持ちと戦いながら安いスーパーへと自転車をこぐ。
首筋から汗が伝う。自転車を漕ぐこと15分。やっとスーパーに着いた。もっと暑い上に荷物もある状態での帰りのことを考えると気が滅入りそうだが、ぐずぐずしていても熱くなるだけだ。さっさと買い物を済ませてしまおう。
スーパーのガンガンに効いた冷房に最高峰の感謝をしながらカートに食材を放り込んでいく。
ニンジン、ピーマン、タマネギ、ジャガイモ、キャベツ、豆腐、卵、豚小間切れ、鶏ムネ肉、、、、
自炊一年、もう手慣れたものだ。しかし、多忙な学生の身、チラシまで確認してはいなかった。
「広告の品 特売、牛ひき肉100g98円(税抜き)
だと!や、安い。」
思わずかごに入れる。今日はハンバーグだな。ハンバーグは希の大好物だ。希の幸せそうな顔が浮かび、思わず表情が崩れる。
「おっと、お菓子を買っておかねば、希に怒られちゃう。」
そう言い引き返そうとした時だった。
「「「ウーーーー、ウーーーー、ウーーーー、」」」
客のスマホ、店員のスマホ、店内放送。あらゆる場所から同じ警告音と同じ警告が鳴り響いた。
「「「高濃度魔素反応検出、まもなく近辺で魔獣が発生します。近くのシェルターへ避難してください。繰り返します。
高濃度魔素反応検出、まもなく近辺で魔獣が発生します。近くのシェルターへ避難してください。繰り返します。。。。。」」」
「パラ、、」
頭上から何かがおちる音がした。反射的に上を見上げた瞬間。
「ドガァァァァァン!」
天井が降ってきた。
ーーー
がれきの山の中一人の少女は叫ぶ。少女はがれきに下半身が埋もれ身動きが取れないようだ。
「生きたい。生きたい。生きたい!
こんなところで死んでたまるか。
まだやりたいことだってある。まだ見てないアニメだってある。まだ遊んでないゲームだって。
だけど、そんなことより。
希を置いて逝けない。希を一人にしたくない。
あの子を置いて死ぬ?魔獣にあの子から姉まで奪わせる?
ふざけるな!
そんなのそんなの、絶対に私を許せない!絶対に世界を許せない。
あの子は、希は、私が、私が!幸せにしてみせる!!」
必死に上半身を使って這い出ようとする。しかし、悲しいかな少女の力で瓦礫は動かない。
「GUOOOOOOOOO!」
魔獣がうるさくわめく羽虫にとどめを刺そうと近づく、彼女は手じかにある瓦礫の破片を手に取る。絶望的な状況だが、その目に絶望はない。最後まで応戦する気のようだ。
その時だった。どこからともなく女の声が響く。
「いいじゃない。気に入ったわその意気。その目。特別よ。契約を結んであげる。
でも、あなにはある?どんな化け物になっても、どんな外道に落ちようとも
力を。全てをねじ伏せる力を欲す理由が」
守りたい人の笑顔が浮かぶ。とっても大切なたった一人の家族。
奪われるわけにはいかない。。。あの日常を
奪うわけにはいかない。。。あの幸せを
「それで希が守れるなら!」
彼女はいつの間にかのばされていた小さな手を取る。
「くれるなら寄越せ。さっさと力を。ヨコセ!!!」
「ふふ、せっかちね。わかったわ。」
女の声色に若干喜色が混じる。
「じゃあ、早速。」
「『契約』」
おどろしさの欠片もない晴れ渡った真夏の真昼間、最悪の魔法少女が誕生する。
「アガアアアアア!」
真っ赤なベールが彼女を包む。それに呼応するように少女の叫びは勢いを増す。それも当然だ。彼女は今体を根本的に変えられているのだから。
あたりの瓦礫は吹き飛ばされ赤く染められていく。
「フー!フー!」
赤のベールが引き少女が現れる。黒かった髪は白くなり元々白かった肌は白を通りこし青白く。格好は黒のドレスに赤のリボン。息を荒げるその姿には妙な色気すらあった。彼女の目が開かれる。真っ赤な血の色をした目が魔獣を貫く。
「UGAAAAA?」
その尋常ならざる少女の様子に感情などないはずの魔獣も気圧されているようだった。
「『血槍』」
紅い槍が放たれる。轟音。魔獣の胸部が爆散した。巨体が数十メートル吹き飛び、地面を転がる。
断末魔すら上げられないまま、魔獣は動かなくなった。
この日。
物語は動き出す。
ーーー
「やったか、」
思わずフラグを立ててしまったが回収されることはなく、一息つく。
「私は魔法少女になった。でいいんだよな?」
あまりに悪役じみた見た目に疑問符をうつ
「肯定であり、否定ですわ。あなたは魔法少女になった。
でも、普通じゃない。なぜなら、あなたが契約したのは精霊じゃなくて悪魔。
悪魔憑きの魔法少女ですわ。」
「君は。」
「申し遅れましてよ。わたくしはベル。偉大なる大悪魔の一柱。よろしくて?契約者さん♡」
「よ、よろしく。ベル
悪魔?それに悪魔憑きって?」
「質問には後で答えて差し上げますわ。
それよりも
対価の時間ですの。」
次の瞬間。
「がっ──!?」
結衣はその場に膝をついた。内臓が焼けるように熱い。違う。熱いのではない。
空腹だ。
腹が減っている。そんな生易しいものではない。胃も。血も。骨も。全身が叫んでいた。喰え、と。
「う、ぁ……」
瞳が紅く染まる。牙が伸びる。口の端から涎が垂れた。その姿はまるで吸血鬼だった。
「な、んだよ……これ……」
「契約の代償ですわ」
ベルは満足そうに微笑む。
「さあ、契約者さん。わたくしに捧げる供物を喰らいなさい。」
ブチッ、理性の切れる音がした。
「.....................aaaaaaa
AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA.!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ーーー
思考が熱い。
少女は飢えていた。なんでこんなに腹が減っているのかは覚えていないが腹が減った。何でもいい。何でもいいから腹を満たしたい。
残念なことに近くにあった肉は美味しくなかった。硬い。臭い。腹も膨れない。
「マダ、タリナイ。」
思考がアツイ。
少女は鼻腔をくすぐる美味しそうな香りに引き寄せられるように飛びついた。邪魔な瓦礫を乱雑にどかしているときも腹の虫は早く早くと急かしてくる。美味しそうな香りはどんどん近づく。もう我慢できない。瓦礫を咥えなんとか誤魔化す。
ハラガヘッタ。ハヤクタベタイ
ようやくありつけた。兎に角美味しそうだ。新鮮そうだし生でいいだろう。というか焼くのなんて待てない!
「ウマイ!ウマイ!ウマイ!」
ああ、なんて幸せなんだ。腹が減っているときの飯は格別だというのは本当だった!今まで食べた何よりも美味しい。それに腹も膨れる。なんて良い飯なんだろう。
思考が冷え始める。
私にこんな美味い飯を買った覚えなんてない。だから、コレは誰かの飯なんだろう。盗ってしまったことを誤って弁償しなくては。そして感謝しなければ。あの飢餓は耐え難い。
思考が冷えていく。
そういえば私が食ってるコレはなんだろう?私は食べかけのソレを見る。
思考が冷え切る。
「ヒト?」
今まで私が食ってたソレと目が合う。ソレは苦悶の表情を浮かべていた。良かった。コレは瓦礫に押しつぶされて既に死んでいたようだ。本当に良かった。コレはヒトじゃない。タダのシタイ。タダのモノだ。
「イイ喰いっぷりでしたわ。わたくしの契約者。♡」
私は悪魔と契約した魔法少女らしい。そして今日、初めて人を食べた。
ベル「というわけで、記念すべきわたくしたちの始まり。
腹ペコ魔法少女誕生の巻!ですわ!」
少女「長い。」
ベル「略して腹巻きですわ!」
少女「やっぱりいいやそのままで」
ベル「えぇ、、、」




