1ーA
あの後、リングにいろいろと教えて貰い、帝国騎士団の紋章が入ったチョークホルダーとバインダーを渡された。何でも特別品らしい。チョークホルダーにチョークを入れ、バインダーに生徒名簿とスケジュール用紙を挟み込んでリングの後についていった。
「おっけー、じゃあこれから一年生の教室に向かうよ。一年生は二階だね。1ーAは階段から一番奥で僕のクラスの反対だからすぐにお別れだね。」
「わかりました。」
二階に上がってすぐに1ーDと書かれた教室を見つけリングはその中に入っていった。
「はーい、始めますよー。」
ゆっくりとしたこえがきこえてくる。他のクラスからもそれぞれの声が聞こえてくる。そんな中一番奥、1ーAと書かれた教室の前に立った。
「ここか。」
緊張はしない。戦場に比べたら何百倍もましだ。
扉を開け、中に入っていく。黒板の前にある教卓にバインダーとプリントの束を置き、生徒を見据える。教卓の裏に段差があったのでその上に立っている。栄養不足で身長が小さいのだ。
「皆、初めましてだな。今年から入ってきた帝国騎士団第六席セイだ。これから諸君の担任となる。以上だ。」
教室が少しざわめく。
「静かに。」
バインダーで教卓を叩き、静かにさせる。
「いらないことはするな。プリントを配る、全員に生き渡ったら報告しろ。」
そういって、魔法を使いプリントを最前列の者に渡す。皆驚いているようだった。
「生き渡りました。」
代表するように一人の少年が挙手して報告する。
「わかった。それでは総員本官についてこい。教材を取りに行く。」
そう言ってセイは扉を開け、階段に向かう。他のクラスはまだ自己紹介などをしているようだった。後ろから生徒が静かについてくる。
「一人一つ取り、教室に戻れ。」
職員室の一角に置かれたテーブルにまとめられた教科書が置かれており、それを指さしてセイは指示を出す。生徒は返事をし列をなし、教科書を受け取っていく。
「セイ先生は厳しいねぇ。」
教科書を渡していた教職員の男がぼやく。
「それが何か?」
無表情でセイは問う。
「優しくしないと生徒の心はついてこないよ?慕われなくちゃあ教師はいけないからね。」
「関係ありません。どうせ戦場に出たらみな死ぬでしょうし。」
生徒がでていった扉をちらりと見ながら言う。
「おや、暗雄のお眼鏡にはかなわなかったかい。」
こりゃたまげたというようにもう一人の職員が言う。暗雄、か。実に相応しい名だ。クツクツと笑いながら踵を返した。
「協力感謝する。」
セイが二階に帰ってもまだほかのクラスは自己紹介をしていた。どうやら生徒一人ひとりが自己紹介をしているようだった。クラスにつくと少しざわついていた室内がしんと静まり返る。
「これで今日は終わりだ。明日は四限だ。回りはまだ授業をしている決して騒がないように。」
バインダーを手に取り、教室を出る。クラスが少し騒がしくなったのを感じ取り、少しセイは顔を顰めた。
職員室で自分に割り当てられたデスクの椅子を当然ふかふかだった。明日使うプリントを整理したりスケジュールを確認していると他の教師たちが戻ってきていた。デスクは学年ごとに分かれて集まっていてデスクに座りながら話をする。
「皆さん生徒の様子はどうでしたか?」
「うちはそこそこかな。やる気がちょっと足りないって感じがする。」
「僕の所はやんちゃな人が多いな~。今日も皆騒いでたし。」
「わっ、わわ私の所はえと、そのな、なんていうんでしょうか、、、」
「ん~、何ていうか皆頭いいんだが体動かしたりするのが苦手って感じだな。」
「あー、やっぱりそうか。平年通りだね。」
「そうね、第六卿のクラスはどんな感じ?」
「第六卿じゃなくて名前でいいですよ。あなたの方が先輩なので呼び捨てでも構いません。」
「そう?じゃあ気軽に呼ばせてもらうわ。セイのクラスはどんな感じ?」
「どうと言われても、、、」
少し答えをセイは渋る。
「純粋に思ったことを言えばいいよ。僕たちはそれが聞きたかったからね。」
「思ったこと、ですか。戦場に出たらすぐに死にそうだなとは思いましたね。」
「フッ、アハハハハハハ」
リングがセイの回答を聞いた瞬間に笑い出した。ルスタもザントも笑っている。ジャインだけは困惑した表情を浮かべている。
「一人、見込みのありそうな人がいたんですがあの子はだめですね。歩き方が優雅すぎる。」
「ほう、それは何で?」
猛獣のような目つきでザントが尋ねてくる。
「恐らく彼の剣術は相手を殺す剣術じゃなくて魅せる剣術だと思うんです。確かに研ぎ澄まされたそれは強いのですがどうしても派手な技が多いです。多分スペースを使う技が多いでしょう。戦場はスペースが少ない場合が多いので剣が味方に当たったりしたり木に食い込んだりするとすぐに死にますね。」
「そう、他に才能ありそうって子はいなかったの?」
ルスタが頬杖をつきながら聞いてくる。
「いませんでしたね。」
「まったく?」
「はい。」
その回答にまた笑いに包まれた。
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