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ひとみ先生の眼科診察室  作者: らな


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43/44

第43話 ㋺ 六条さん

次のカルテは新患だった。


六条翔太、19歳。

主訴は視力が下がり見えにくくなったので、コンタクトレンズを作りたいというものだった。


視力は裸眼で両眼とも0.2、矯正すると1.5まで出ていた。

問診や検査結果を見る限り、ただの近視で特に問題がないように思った。

目にアレルギーなどの問題がない限り、コンタクトレンズを処方して終りだ。


「六条翔太さーん。」

陽子の呼び声で診察室に入って来た六条さんを見てひとみはびっくりたまげた。


顔中に2ミリくらいの黒い球のついた待ち針みたいなものがたくさん刺さっていたのだ。


おでこ、眉間、目尻、鼻根部、頬、こめかみ、あご・・・


ピアスの一種なのだろうか。

あらゆる所にプスプスと黒い球が埋め込まれていた。

鼻と唇には銀の輪っかのピアスがはめられ、耳にもすき間がないくらいピアスがつけられ耳たぶには大きな空洞が開いていた。


あっけに取られ六条さんを凝視した後、ふと主訴を見返した。


メガネがかけにくいのでコンタクトレンズを作りたい、と書いてあった。


鼻根部とは目と鼻の付け根の辺りだが、そこにも左右両側に球状の待ち針が刺さっていた。


鼻根部の待ち針抜いたらメガネかけれるんじゃないの?

っていうか、ここに待ち針があったらメガネは不可能じゃ・・・。


ひとみはそう思いながら、六条さんの診察を始めた。

目には異常はなく、コンタクレンズの処方は問題ない状態だった。


「目には問題はありませんのでコンタクトレンズを装用されるのは大丈夫です。でも、この視力だと裸眼だと見えにくいと思うので、かけにくくてもメガネも必要だと思います。」

「はい。」

六条さんはロックな見た目に反して、もの静かで大人しい感じの青年だった。


「コンタクトレンズはアレルギーが悪化したり、時々黒目などにトラブルが起こることがありますし、そうした時は装用出来ないので絶対にメガネを作って下さいね。」

「はい。」

六条さんは素直に頷いて帰って行った。


診察台を消毒しながら陽子が尋ねてきた。

「六条さん、メガネ作りますかねえ?」


ひとみはその言葉に苦笑を浮かべた。

「どうだろう?すごく素直にハイって言ってたけど。」

「でも、作ったところであの目の付け根に刺さってるピアスがあったら、メガネかけれなくないです?」


「そうだよねえ。耳も凄いことになってたけど、なんであんな事するんだろうねえ。」

ひとみの言葉に陽子がニヤッと笑った。

「私も二十歳くらいの頃、金髪でしたし耳に10個くらいピアスしてましたよ。」

「えっ?」

驚くべき過去をカミングアウトされ、ひとみはギョっとして陽子を見た。


「ほら。近くで見たら穴があるの今でもわかりますよ。」

陽子が自分の耳をひとみに寄せてきた。


「・・・ほんとだ・・・。」

陽子の耳に開いた無数の小さな穴を見て、ひとみは言葉を失った。


今の陽子は黒髪で、肩上くらいのストレートだ。

見た目もどちらかというと、ややスポーティーだが清楚系と言っていいだろう。


人生色々あって、みんな頑張って生きてるのね・・・。

六条さんも20年くらいしたら、待ち針を抜いて真面目な公務員みたいになってるかもしれないし・・・。


身近な職場の同僚の意外な過去を知って、ひとみはしみじみ思ったのだった。



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