第40話 ㋷ 李 さん
次のカルテを見ると初診の韓国人男性だった。
李伊準 リ・イジュン、24歳
備考欄に日本語△、お連れ様日本語〇と書いてあり、住所はソウルになっていた。
主訴は昨日から左目が充血して痛い。
旅行中の目のトラブルかなあ。
ひとみはそう思いながら患者を呼び入れてもらった。
診察室に入って来た李さんは色白で肌がツルツルしており、さすが美容大国出身と感心させられるようなクオリティーの高い中性的な美青年だった。
おお、綺麗。
芸能人みたい・・・。
李さんの美しさに感心する一方、連れの丸顔の男性はイガグリ頭で眉毛もげじげじしており、あまり洗練された感じがしなかった。
なんか毛色の違う友達ね。
心の中でそんな感想を抱きつつ診察に入った。
「左目が痛いのですか?」
「はい。でも、今日になってすごくマシになりました。」
日本語△と書いてあったが、全然問題なく会話が出来た。
目を診ると、確かに軽い充血はあったが傷や異物はなく、大きな問題はなさそうだった。
目の写真を何枚か取り、それを見せながら大きな異常がないことを二人に説明した。
「よかった・・・」
李さんはホッとしたように笑顔になった。
すると、それまで静かに横に座っていたお友達が突然口を開いた。
「昨日、僕のが入ったんですよ。」
「は?」
僕の?
「僕たち恋人同士なんですけど、僕が日本で仕事をしているから久しぶりに会ったんですよ。だから昨日の夜セックスをしていたら盛り上がっちゃって僕のが目に入ってしまったんです。それから彼の目が急に充血して痛いと言い出したんです。」
「・・・。」
隣に座っていた李さんが”きゃあ”と言いながら両手で赤くなった顔を覆った。
その情報いる??
ひとみはすかさず心の中でお友達に突っ込んだ。
そして。
いや、そのリアクションをしたいのは私の方やん・・・。
真っ赤になって恥ずかしがる李さんを見て、そう思った。
内心うひゃあと思いながらも、ひとみは頑張って顔の表情筋を引き締め診察を続けた。
「そうですか。では、一応左目の洗眼をしておきましょう。少しだけ充血があるので緩めの炎症止めの目薬を出しておきますね。」
二人は頷き診察室を出て行った。
二人が見えなくなると、ひとみはくるりと顔を回し陽子の方を見た。
「私、にやけてなかった?」
「大丈夫でしたよ。」
陽子はニヤッと笑い右手の親指を立てたのだった。




