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ひとみ先生の眼科診察室  作者: らな


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39/39

第39話 ㋶ 楽山さん

次のカルテは長らくこのクリニックに通っているおばあちゃんだった。


楽山末子、86歳。

白内障と緑内障があり、点眼治療でずっと経過観察をしている人だ。


もともとはきちんと髪を染め、髪の長さも肩より長く女性らしい可愛らしい感じの人だった。

それが、82,3歳を超えた辺りからざんばらでかなり短いショートカットになり髪色もごま塩のようになり、服もヨレたシャツにパンツと、一見するとおじいさんのように見えるようになっていったのだ。

もはや昔の面影は微塵も残っておらず別人のようになっていた。


人間って最初と最後は性別不明になるのね・・・


身だしなみに気を使っていた頃の楽山さんを知っているだけに、最近の様子を見て複雑な思いで診察に当たっていた。


「楽山末子さーん。」


陽子の呼び声の後、楽山さんが診察室に入って来た。


あれ?


今日は、一人ではなく30代後半くらいのなかなかのイケメンが一緒だったのだ。

ひとみが不思議そうな表情を浮かべると、男性が名刺を差し出した。


「ケースワーカーの頼田です。」


ずっと一人で通院されていたが、ここ最近年齢とともに色々弱ってきたのかケースワーカーさんと一緒に受診するようになったのだ。


診察しても、楽山さんに特に変化はなくいつもの目薬を処方することになった。


「楽山さん。お変わりはなく緑内障も進行してません。大丈夫でしたよ。」

ひとみの言葉に楽山さんに少し笑顔が出た。

ここ最近、楽山さんは能面のように表情が無くなっていたのでひとみは少し驚いた。


診察が終わると、頼田さんが優しい笑顔を浮かべながら楽山さんに手を差し出した。

その手を取り、楽山さんはゆっくり立ち上がった。

微かな笑みを浮かべひとみに会釈すると、楽山さんは頼田さんの腕にしっかりと掴まり診察室を出て行った。


二人が出て行った後、陽子が驚いたように呟いた。

「今日の楽山さん、なんか女子でしたね。ケースワーカーの人、イケメンでしたしねー。」

「そうだね。」


その後、頼田さんと受診に来るようになった楽山さんはショートカットではあるが髪も伸びざんばらではなくなり、服も以前よりきちんとした感じになっていった。


二人を見るたびに、ひとみは人間の復元力とイケメンパワーに驚かされるのだった。




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