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ひとみ先生の眼科診察室  作者: らな


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第38話 ㋵ 吉井さん

「吉井佐千代さーん。」

陽子の声が待合室に響いた。


ああ、吉井さんか・・・。


ひとみはげっそりしてカルテをめくった。


吉井佐千代、68歳。

両眼の緑内障で点眼治療中のはずの人だ。


はず、とは・・・


吉井さんには横山さんという占い師のような友達がいるのだが、その横山さんが厄介なのだ。

吉井さんの視野は欠けている所があり、初期から中期の緑内障が出ており眼圧もそこそこ高い。

眼圧を下げる点眼治療の対象なので目薬を処方するのだが、横山さんがいつも要らない助言をするのだ。


「こんにちは。お変わりないですか?」

「はい。特に自覚症状に変わりはありません。」


目を診ても、傷や充血は見られなかった。

「目薬はさせていましたか?」

「横山さんがそんな目薬ささなくていいと言うからさしてませんでした。」

「・・・。」


初めて聞いた時はびっくりした。


横山さんって、誰?


吉井さんに尋ねると、横山さんは医療関係者でもないただの友達だった。


「吉井さんの目は緑内障があるので目薬が必要です。眼圧も高いし、しっかりさして下さいね。」

「でも、横山さんがいらないって・・・」


なぜか宗教の教祖のように横山さんを妄信しているのだ。


それならそれで、吉井さんの人生なので点眼治療の必要性を聞いたうえで自分の好きな治療法を選んでくれればいいのだが、何故か検査と受診にはきっちり来て、目薬の処方箋ももらって帰るのだ。


ひとみは医療従事者なので、治療の必要性を説明して治療薬を処方するしかないのだが、吉井さんが受診に来るとなんだかいつもモヤモヤした気分になる。


この日も、さすのかどうか分からないが目薬の処方箋をもらい吉井さんは帰っていった。


友達選びって大事だなあ・・・。


吉井さんの背中を見送りながらひとみは心の中で呟いたのだった。


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