第4話 江川さん
「江川幸三さーん。」
75歳、男性。この方も初診だ。
「おはようございます。今日はどうされました?」
「先生!間違えて水虫の薬、目に差しちゃったんだよ。」
水虫の薬は一部の目薬と入れ物の形が似ているので、1~2年に一人くらい間違えて差してしまい受診にくるのだ。
「しみたり、痛みとかはありますか?」
「差した瞬間しみたけど、いまはゴロゴロしてるだけで痛くないです。」
「ちょっと見せてくださいね。」
細隙灯という眼科用の顕微鏡に顔を乗せてもらい、江川さんの目を診た。
「目の表面が少しだけ荒れてますが、すぐに治りますよ。保湿の目薬を出しておきますね。時々、水虫の薬を目に入れる方が来られますが、皆さん綺麗に治りますので大丈夫です。」
「あー、良かった・・・。一瞬、焦りましたよ。」
「受付でお呼びする前に、こちらで一回洗眼しておきますね。処置室の方へ行ってください。」
そうして江川さんは陽子に誘導されて処置室の方へと歩いていった。
結果的に問題になった人は診たことはないが、水虫の薬を目に入れたら気分的に嫌だろうなといつも思っていた。
一定頻度で間違える人がいるし、ボトルの形替えたらいいのになあ・・・。
目を洗う江川さんを見ながら、ひとみは心の中でつぶやいたのだった。




