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ひとみ先生の眼科診察室  作者: らな


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第5話 岡山さん

今日の最後の患者さんのカルテを見て、ひとみはゲッと思った。

岡山翔太、33歳。

ひまわり眼科内で要チェックのクレーマーだ。

カルテの表紙に黒い星が鉛筆で3個書かれていた。

問題のある患者さんをわかり易く星で表している。星の数が多い方がより問題が多いということだ。


2週間前、普段からコンタクトレンズを使用していて、無くなったから買い足したいと受診に来た人だ。

目を診ると上眼瞼の裏側の粘膜がとても荒れており巨大乳頭結膜炎という大きなぶつぶつが出来ていた。コンタクトレンズが原因になることが多い。


「岡山さん。まぶたの裏側が荒れているからコンタクトレンズは中止して下さい。本日のコンタクトレンズ処方も無理ですね。アレルギーの目薬と炎症止めの目薬の2種類お出しします。治癒には結構かかることが多いです。」

そう言うと岡山さんはとても不満そうな顔をした。

「コンタクト無いと困るんですけど。」

気持ちはわかるが、こちらも立場上許可するわけにはいかない。

「炎症止めの目薬は副作用で眼圧が上がることがあるので、必ず1週間くらいで診せてください。」

その日は、不満そうな表情をしながらも目薬をもらい大人しく帰っていった。



1週間後。

検査室の方がザワザワし出した。

「なんでまた検査するんだよ。先週しただろ!」

岡山さんが大きな声でわめいていた。


若い検査員がオタオタしだしたので、ベテランの修子が対応に当たったようだ。

「炎症止めの目薬で眼圧が上がることがあるので、チェックすることになってるのです。」

「なんだよ。お前、医者でもないくせに偉そうに!」

「眼圧検査は先生からの指示です。」

いつも冷静な修子がイライラしているのが声色から診察室の中まで伝わってきた。


その日、診察室の中では大人しかった。

「先週よりはぶつぶつは小さくなってますね。でもまだ完治していないので目薬を続けて1~2週間で診せてください。コンタクトは中止のままです。」

瞼の裏の写真を見比べながら説明すると、良くなっていることに気を良くしたのかわりと機嫌よく帰っていった。



それから2週間後が今日だ。

「岡山さーん。」

陽子が岡山さんを呼び入れた。

瞼の裏を診ると、前回より荒れていた。


コンタクト入れてたんじゃないの?


ひとみは反射的にそう思った。

「前回と変わらないか、ちょっとぶつぶつが大きくなってるか微妙な感じですね。コンタクト入れてないですよね?」

怒らせないように控えめな感じで尋ねたが、そこで岡山さんがきれた。

「なんでコンタクト入れてないのに悪化してるんだよ。薬合ってんのか?治るのにこんなにかかるなんて聞いてないぞ。説明責任果たしてないんじゃないか。」


なんだこの男は!


本当にコンタクトを入れてなかったのか疑問だが、本人がそう言ってる以上追及のしようがない。

ムカつきながらも冷静に対応しようと努めた。

「副作用が出るので炎症止めの目薬は弱いものから処方しています。効きが悪いようなので、強いものに変えますね。副作用も強く出るので必ず眼圧は測りに来て下さい。」

「まだコンタクト入れれないのか?その薬で治るって保証あるのか?いつまでかかるんだ?先生、仕事むいてないんじゃないか?」

岡山さんは怒鳴りちらしながら出て行った。


岡山さんのカルテを見ると、ずいぶん昔からひまわり眼科に細々と通院していた。

10年で保険証が5回変わっている。


あんな様子じゃきっと仕事続かないんだろうな・・・。


そう思いながら、イラつく気持ちを吐き出すように、ひとみはカルテの表紙の星を鉛筆で書き足し10個にしたのだった。

その時、修子が後ろから覗き込んできた。


「先生、岡山さんの星増やしました?」

「きっちり10個にしました。」

ひとみの答えに修子はにやっと笑った。

「3個足して13個にしていいですか?」

「どうぞ。」


今日は金曜日か・・・。


カレンダーを見てそう思いながら、ひとみは修子にカルテを渡したのだった。


それから岡山さんは受診しに来ていない。

別の病院にいったのかどうか。

今もカルテ庫の中で岡山さんのカルテには星が13個燦然と輝いている。




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