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ひとみ先生の眼科診察室  作者: らな


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33/37

第33話 村田さん

次の患者さんは初診だった。


村田壮介、34歳。

主訴は目が疲れる、痛い。目が10秒以上開けていられない、というものだった。


10秒・・・?


ドライアイなどで目を開けるのがつらいと訴える人は多いが、10秒という具体的な数字を書く人はあまり見たことがない。


変な主訴だなあ・・・


ひとみはそう思いつつ、村田さんの問診を見た。

職業はシステムエンジニアと書いてあった。


目の疲れや痛みは仕事も影響してそうね。


問診を見終わると、陽子に患者さんの呼び入れをお願いした。


「村田壮介さーん。」


診察室に入って来た村田さんは色白でインドア系っぽい雰囲気はしたが、ごく普通の会社員といった感じの人だった。


「目の疲れや痛みをおっしゃってますが、パソコンやスマホは長時間使われますか?」

ひとみの質問に村田さんは大きく頷いた。

「僕、システムエンジニアなんで仕事はずっとパソコンなんです。一日8時間は使います。仕事の後はずっとスマホを見てます。」

「なるほど。」


村田さんの目を診察したが、軽度のドライアイ以外特に悪いところはなかった。


「少し乾いてますが、傷も多くないですし大きな異常はないですよ。一度、目を閉じて開けてから涙が割れるまでの時間でドライアイの程度をみるのですが、4~5秒なので軽度のドライアイですね。目の痛みは目の使い過ぎによる疲労痛みたいなもので・・・」


涙が割れるまでの時間を涙液層破壊時間というのだが、5秒以下がドライアイと診断される。

村田さんは、異常と正常の境界くらいだ。


ひとみの説明に村田さんは悲愴な顔で訴えた。

「僕、10秒以上目を開けたいんです。」

「10秒?」


ここにきて10秒という数字が出てきた。


「今やってるゲームなんですけど、どうしても10秒以上目を開けておく必要があるんです!」


10秒以上目を開けておく必要のあるゲーム・・・?


「・・・一応保湿の目薬を出しておきますが、ドライアイが改善しても10秒間以上目が開けられるかは薬を使ってみないと分からないです。」

「その薬で治らなかったら、どうしたらいいですか?」


必死に訴える村田さんにひとみは残念そうな表情を浮かべ伝えた。

「その時は違うゲームをするとか・・・?」

「困ります!僕はそのゲームがしたいんです!」

「・・・」


その場合は違う機序のドライアイの目薬を試していきましょうと伝えると、村田さんはとりあえず納得して帰って行った。


カルテを片付けながら、陽子が呟いた。

「10秒以上目を開けておかないといけないゲームって、何なんでしょうね?」

陽子の言葉にひとみも頷いた。

「あ。それ私も気になった。」

「えー、めっちゃ気になる。先生ちゃんと聞いておいてくださいよー。今度村田さんが受診されたら聞いてみて下さい。」

「あはは、了解。」


その後村田さんの再診はなく、結局何というゲームかは一生謎のままなのであった。



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