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那由多の剣と魔導士の卵  作者: ナンプラー
1章 エルタージュ編
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不滅の漢

 ※初見用用語解説

五元素魔法:用語としては出ていなかったが、陰陽を省いた火、水氷、雷、土、風の五つの元素魔法のことである。陰陽を混ぜれば七元素魔法となる。

『何い?!』


 驚きを隠せない。事情の知らない魔物と女。

 叫ぶ場所は違えど思うことは同じだった。


「どうなってんの。今の威力は中級魔法くらいあるのよ?! そよ風みたいに何もないけど!」


 一海とミカにとっては慣れてきているが、初見の者であればこの反応は当たり前のものだ。

 魔法の耐性が強い人は五万といるが、中級以上を軽傷で済む人間となってくると一気に少なくなる。仮に耐性が強くても五元素魔法(属性魔法)まで加わると受ける受けないの話もまた変わってしまい更に一握りになる。

 例えそれが誰かにオモチャにされたという事実があるにしろ魔法自体が全く効かないというのはこの世界じゃほぼインチキである。


 事情や仕組みを詳しく知らない一海さえ驚く彼女を薄い目で眺めては深々と思うのだ。


(ああ……こりゃ不滅(イモータル)なんて言われるよな)


 ほんの少しだけ察してしまう勇者はこっそりシスターに伝える。


「信じられないかもしれんが、あいつ魔法ほぼ効かないんだよ」


「あ? 何の冗談?」


「冗談じゃない。……マジだ」


 ぽかんとした顔で一海の顔を眺める。睨んでる訳ではなく本当と思えなくてぼやっと見てる感じだ。そして井戸端会議するおばさんみたく笑って話す。


「あらツルギさん。面白い冗談ですわね」


「はあ……信じられないのは分かるけど、見てたら嫌でも理解するぞ」



 一方その頃、不動の巨人を前にした怪物は動揺しながらも何がいけなかったのかを考え次の行動に出る


「この一帯にあれを受けきって死なない人がいるとはぁ……なら本気の一撃、喰らってみるかぁ?」


 そして怪物はもう一度手を伸ばす。今度は右手だけじゃなくもう片方も添えて。言葉を唱えると、掌の先にはグルグルと風が集まっているのが分かる。


「数多、三百の嵐鳥(らんちょう)は積乱の空を夢に見る。[タービュランス]!!」


 呪文を唱え切ると先に集まっていた風が爆散し竜巻となって千鳥足で前進する。次第に大きさは増していつしか小型のビル四本分の面積ほどの大きさと化し猛威を奮った。それは全く動かないガラテンを軽々と飲み込んでしまう。


 これにはクラリネッタも慌てふためく。岩陰から見ていた体が前にのめり込んだ。


「ちょ、何であいつ逃げないの?!」

 

 そんな慌てる声も風の騒音でかき消され、味方が一人直撃で受けた事実しか残らなかった。


 地を走った竜巻の削り跡に舞う土煙。

 静観する勇者一同に呼吸を整え様子を見る敵。


 そして喰らえど倒れぬ無傷のガラテンが砂の幕から姿を表した。


 目が飛び出るほどの衝撃がシスターと怪物に襲いかかる。


 余りの非現実的な光景に敵は焦りが表に出るほどで、声も荒くなって叫ぶ。


「何故だぁ! 僕の十八番が傷一つ付かないだぁ?!」


 怪鳥は焦るあまり右手でローブの襟を、左手で右の腰回りの布地を強く握る。

 その次に何かに気付いたのか発作が起きたように微動が止まる。


「そうか……そうかそうかぁ。お前風が効かないんだなぁ? あぶないあぶない。害獣相手に逃げるとこだったぁ」


 相手は自分のアイデアに平常心を取り戻し、意気揚々と口にする。

 そしてそれに対してリアクションがあった。


「試さないのか?」


「……何ぃ?」


 その声はガラテンからしたものだ。そしてゆっくりと。ゆっくりと。


 腕を組んだ。


「ケケッ、じゃあお望み通り消してやるよぉ。水々逆流、地を流す、災禍の恵みいざ絢爛あれ。[リバーペイン]!」


 伸ばした左手から放たれたのは直進する水柱。人一人を包めるほど大きいそれは間欠泉のごとく横に伸びて標的に命中する。しかしそれだけで終わらない。先程の状況に保険で敵は「[ライラ]」と叫び余った右手を添えると水柱に電気が纏った。

 発動した初級雷魔法が直接交わったのだが、それが水についたということは蓄電されたということだ。更に電気まで大男を襲うことになる。


 止めと言わんばかりに「ハァッ!」と相手は力むとリバーペインは凍る。氷の魔法フローラを無詠唱で発動したそれは発した水全てを凍らせガラテンを包み、その上追い討ちに右手から電撃を一発伸ばした。凍った相手に対して飛ばしたそれは何故かガラテンの周辺で爆発を発生させたのだ。


 これには思わず見守る一海達も焦る。


「水素爆発だって?!」


「いやあれは流石に無理よね?!」


「凍るまでは問題ないけど爆発はまずいな……」


「凍るまでは行けるの?!」


 彼らの心配を他所に爆音の名残と鳥の笑い声が場を埋める光景は不気味なものだった。

 覚える感覚は正しく『絶望感』だ。並みの体で受ければ塵。耐性を持っても死を逃れるものはほぼいないその全力は圧倒的な実力を感じるものだ。


 だが、それ以上に恐怖があるとするならばそれは物理法則を完全に無視し、腕を組み立ち続けた漢の姿が見えた時だろう。



 爆破の煙が舞う中ガラテンの脳内でリフレインしている記憶の言葉。それはサリアの街に来る前の一海とのやり取りだった。


「漢立ちだ!!!」


 それはスライムに殴られながら念仏を聞く練習を行う前に話した草原での一海の一言だ。


「お前は相手に対してカッコいいポーズをするだけで最強の盾になれる!!」


「……本当かあ?」


「大真面目だ。特に戦闘の場面でかっこいいと言えば、ロボット物で有名な両手を組むあのポーズは外せない。お前は腕を組むだけで盾になれる!!」


 ガラテンと、その時一緒に聞いていたミカは拍子抜けた表情をする。


「ろ、ろぼ……何です?」


「何かわからんが、カッコイイポーズでビビるか?」


「ビビるさ。人はモテるために流行りと綺麗を求める。中身は大事だがマーケティングはもっと大事! 元来動物の中には大きく見せるために威嚇(いかく)で二足歩行をしたり派手に変色し尻尾を広げてゴージャスに彩……」


「分かった分かった! よく分からんがやれば良いんだな?!」



 という、平凡極まりないやりとりを深く思い出していた。

爆煙で遮られた視界が開けた時、怪鳥の目には化け物が。ガラテンの目には戦場で何度も見た恐れ慄いた敵兵と同じ表情をした阿呆な鳥の顔が映っていた。


 そしてその景色を見た勇者一行も開いた口が塞がっていなかった。

不滅の異名は伊達じゃない


良ければ感想、評価、いいね、ブクマしていただけた時作者が天国まで召されます。

面白いと感じたら気楽にお願いします。

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