危険生物vs不滅
慌ただしく怪鳥は取り乱し叫ぶ。
「はああああああ?! 何だぁ。どういうことだぁ?!」
化け物にとってそれは全力とまでは行かぬ一撃。だが確かに本気で込めた魔法攻撃だった。
しかし相手についたのは傷ではなく汚れ。土煙やら何かしらが舞った関係で汚れはするものの相手に傷は一つさえ付いていない。
正直こんな怪物でなくとも取り乱すだろう。
そして腕を組み凛として立つその男の姿は立っているだけとはいえ悪魔の影に見える程プレッシャーになる。魔物は悪魔の姿に耐えられなくなった。
「ふざけやがってぇ!」
敵は動揺のあまり先程から放っていた風、水、雷の魔法を全て連続に無詠唱で手から発射しまくる。
だが何度打とうが何度当てようがガラテンの体に負傷はできない。
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そして魔術を連打する怪物の光景をクラリネッタは岩陰からがぶりつきながらハイテンションで眺め喋った。
「おお、おおおお! 凄いわ?! あいつ本当に魔法が効かないじゃない!」
側から見るそれはまるで観客席から野球を観戦するファンの様だと渋い顔で一海は様子を見ていた。
「……だから言っただろ?」
「ええ、これならもう楽勝ね。さあやっちゃいなさい! あんたみたいな化物ならあの怪物も一刀両断よ。そのままぶった斬れ!!」
「それは無理だ」
「そう、それは……あ?」
先程までの応援していたシスターの盛り上がりがホームから一気にアウェーへと変化した。
固まるシスター。そして突然参戦した彼女に事情を伝えてなかったことを思い出し、恐る恐る二人は口を開いた。
「そういえば、言ってませんね」
「実はあいつ戦えないんだ。呪いみたいなものらしくて。魔物の前じゃ話すどころか動くのも難しいらしい」
「……じゃああいつ今野晒しのすっごい硬い木偶の坊なの?」
「言い方凄いけど否定できない」
「凄くもなるわよ。駆け出しのバカが木偶の坊持って人助けって狂ってるわよ!!」
状況を察していくクラリネッタは一海への詰め寄り方が凄まじくなり顔をにじり寄せて睨んだ。
「ま、待ってくれ。火力はこっちで何とかするから!」
「その火力担当がペーペーで安心できるとでも?!」
「はははそうだよなあ……」
頭のおかしいシスターだがこれに関しては真っ当な意見のため睨む目から視線を逸らす駆け出し勇者。
「でも偶然だが、今敵はあいつしか眼中にない。不意がつける上魔力を枯れるかも知れない。あれを倒せるかも知れないぞ?」
「倒せるかアホ! チャンスに見合う戦力じゃないもの! あたし帰るわよ!!」
駄々をこねる様に声を荒げるシスターは一海に背を向けトンズラしようとする。それに一海は慌てて引き止める。
「ちょちょ、頼むって。3000、3000Eで手を打たないか?!」
「よし、今すぐにでもあいつぶっ飛ばすわよ」
今までの慌てっぷりが嘘のように凛とした態度で物騒な言葉を吐いた聖職者。
余りの手のひら返しにミカは「うわあ、現金」と呟いた。
ーーーーーー
何度、何度打ち続けても傷さえつかない相手に焦りしか覚えない魔物。一度魔法を使うだけでは息切れもしなかったそいつが少しだけ呼吸が荒くなっている。
「ちぃ、くそったれがぁ!」
悪あがきで一発風の魔法を放つ。
ここで想定外の出来事が起こったのはほんの少しだけ風が目標を逸れて近くの地面を抉った事だった。
地面を抉るその一撃は土の塊を発生させ、ガラテンの頭にヒットする。
本来ならこれで軽傷なのもおかしい。だが全く効かないのと少しだけ効くのでは今は話が違う。
特に今は着弾箇所から流血があるのでは敵にとっては最高の情報だ。
流石にこの状況には鳥も疑念を抱き、しばしの長考、そしてふと気づいて振り絞るように笑い始めボリュームも大きくなった。
「ケケケケケケ!! そういうことかぁ。魔法が効かないだけかぁ。良いなぁ。君も仲間入りだぁ」
そして一歩一歩ゆっくりと歩み寄りガラテンの目の前で見下ろす形で立ち止まった。
「何だ。こないのか?」
「まあ落ち着けぇ、ここまで近づいて何もしないのは戦えないからだろぅ? 硬さの代償か何かか知らないけどねぇ」
振り絞る挑発に悠々と返答する化物。そして経緯は違えど状況を理解され流石のガラテンも唾を飲んだ。
「それに君鍛えてそうだからねぇ。殴っても時間がかかりそうだぁ。逃げたかも知れないあの子らも応援を呼んでるかも知れないしぃ……だから一番良い方法で解決するんだぁ」
不気味に言葉を終えると纏っているローブの内から、恐らく腹部の辺りだろう。その場所から数本、粘着質の透明な触手が五本程伸びて大男を掴む。
「おいおい、こりゃ想像以上に最悪だ」
包まれながらローブの奥底に見えたものに対してガラテンは戦慄する。
無数に生えた犬歯の如き髭と言えばいいだろうか。それが円を描いて生えている。イメージとしては口が一番似合うそれに顔を思わせるような歪な光が二つ発行する。
闇に浮かんだ異形の顔。まさにこれ以外の表現が出来ないほどの悪魔がそこにいた。
「今日は最高のディナーだぁ」
鳥の口と同時に口らしき触手が喋るように動いた。
例え一つを封じても、更なる格差が襲う。
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