豪雨の中、起きる衝撃
※初見用用語解説
ウコッケ、ロン毛、ツーブロック:ガラテンが冒険者として活動してまもない頃に一緒にパーティーだったメンバー。ガラテンをいいようにこき使っていた。27話〜34話
針のように尖る岩山の群れの中。
荒地を走る二頭立ての馬車数台は荷台を引いて走っている。
天候は雨。雷雨ではないが土砂降りだ。
そしてその一つの真ん中を走る荷台の中には後ろ手に縛られた三人組のモヒカン、ロン毛、ツーブロックの柄の悪そうな男達と立派な鎧の兵士があぐらをかいて座っている。
「ぐああぁ?!」
モヒカンの男、ウコッケは叫ぶ。
そしてそのまま文句を続けた。
「おい、隙間から雨が染みてんだよ! どうにかしてくれ!」
「それくらい我慢しろ」
喚く一人に対し兵士は話を右に流した。
一人の男の苦情に続いて取り巻きの二人組も喚き出す。
「うあああ、こっちまで染みてきたんだが?!」
「おい助けてくれ! これじゃ凍え死ぬ!」
「五月蝿え! お前ら悪人にやるものなんてねえ!」
「悪人じゃねえ! 貴族様を怒らせただけだ!」
「それを悪人だって言うんだよ!」
ウコッケの間抜けな言葉にツッコミを入れる兵士。
そう、この馬車は護送中の馬車。
先のガラテン・サーズボルトの一件でレクサンデルの貴族を怒らせた事で逮捕しろという依頼が出ていたのが発覚し。一海達に引っ捕らえられ馬車に乗せられている最中なのだ。
「なあ、アンタも困るんだぜ?! 俺らが死んじまったら!」
「困るかバカが!」
「いいや困るなあそれが。もし貴族様が直接痛ぶりたいなんて話ならどうする? アンタも極刑かもしれないぜ?!」
横槍を入れたのはロン毛。
その言葉に詳しい情報を得ていなかった兵士が言葉に詰まる。
暫くの静寂が訪れたのは兵士が長考したからだ。そして考えた結果ため息をついて近くにあったブランケットほどの布切れを掴み放り投げる。
「それを下に敷け」
「敷けるかバカ。敷くまでやれよ」
「何でだよ?!」
「縛られてるのにできるか! ちゃんと考えろ!」
「ああもう分かったよ!!」
イチャモンに怒りがフルボルテージだったがそれは確かな話だったので何も言えず吠えて了承するしかなかった兵士。
そして捕虜たちをズラしロン毛とウコッケの合間で敷き始める。
鈍い衝撃音が鳴る。
後ろからのダブルスレッジハンマーを後頭部に直に喰らいドサリと倒れ兵士は気絶する。
犯人はウコッケ。靴に隠してたブレードで縄を切り手の縛りを解いたようだ。
「やっぱ刃の1枚2枚は持っとくべきだな」
少し余裕なく作戦の成功に喜ぶウコッケ。
「流石です兄貴ィ!」
喜ぶツーブロックと、兵士の剣を奪いそいつに縛られている縄を切るウコッケ。
馬車のスピードが緩くなったのを感じる三人組。そしてそれに気づきロン毛の縄を焦りながらから。
「御者が勘付いたかもしれねえ。早くズラかるぞ」
しかし彼らはとある音を聞き違和感を感じる事になった。
「何だぁあれはああああ?!」
発声元は進行方向だった場所から。
恐らく御者の悲鳴だろうと三人は勘付く。
恐怖の染みる静寂が訪れた。
ドォン
声のした方角から来るは衝撃波。前方から荷台が崩壊する様が見えた時には自分達の身体は宙に舞っていた。
勢いよく荒地を滑る三人組。
痛がりながらも立ち上がるウコッケ達は顔を上げた。
「な、何だよこれ……?!」
ロン毛が怯える。
見上げれば荒野に広がるは馬車だった何かと無惨にも切り刻まれた人と馬の形が分かる何かだった。
「おや、まだ立てるんだねえ」
声がしたのは前の方から。物の跡と死骸に囚われていた視線を上げると、全長3m程の背丈に紺のローブを羽織った何者かがそこに立っていた。
「頑丈だねぇ。じゃあ君たちもしっかり仲間になろうねえ」
襲撃の化け物は右手を伸ばす。
はらりとはだけたのは鳥の足のような三本の爪と似つかわしくない毛の生えた魚のようなヒレが膝の辺りに付いていた。
指の隙間から見える景色はウコッケの怯えた表情だった。
新たに起こる波乱の香り……
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