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那由多の剣と魔導士の卵  作者: ナンプラー
1章 エルタージュ編
31/53

ガラの悪い3人の疫病神

 カウンターの向こう側にいる受付嬢からA4程の大きさの紙を丁寧に渡される。そして一連の流れで硬貨も渡された。

 そこにあったのはウルフェン3体の討伐報酬800Eだ。

 俺は「ありがとう」と言いそれを受け取るとガラテンが一言店員に向かって伝える。


「あと済まない。いつもの依頼も解決したんだ。完了しといてくれ」


 そう言うと収納袋から依頼書を取り出し彼女に差し出した。


「ああ、分かりました。また張り出しますね。お金のやり取りはどうされますか?」


「こっちでやっておくよ」


 そう言うと「分かりました」と元気に言葉を残し去っていった。

 そして何故かガラテンは俺たちに小袋を右手で渡してきた。


「手伝ってもらった駄賃だ。少ないが貰ってくれ」


 手に取り、開くとそれは同じくお金だった。

 おまけに今回の報酬と同じ800E程ある。


「ダメですよガラテンさん!」


「そうですよ! 流石にこれは貰えません!」


 口をそろえ俺とミカは遠慮する。

 だがスキンヘッドはこっちの意に反しいつもの様に高笑い。


「それだと俺が困るんだよ! だって俺が依頼した報酬なんだからな、それ」


「……もしかしてさっきの紙って」


「ああ、いつもの事なんだよ。迷惑もかけるしな。だから貰ってくれ」


 成程、このやり取りがガラテンの普通なんだな。

 リハビリの為にこうして依頼を出しては手伝ってもらっていたという流れなんだろう。

 そして恐らくそれに友好的に対応していたのがここだとアントン達という訳だ。

 今回は依頼を受ける余裕のある人もいてない上あいつらも出稼ぎに行ってるから俺たちが偶然受ける形になったと。


「……そういうことならありがたく」


「まあそう気負うな。騎士時代のお金があるんだ。これくらいはした金さ」


 個人的にはそれでもいい気分では受け取れない物だった。だが酒場とのやり取りでいざこざになっても仕方がない。

 こちらが折れる事にした。

 ミカが少し曇った顔で杖を握りながらガラテンに「あの……」と声をかけた。


「もし誰も見つからない時とかは私たちもいますので。だから……お金を払うなんて悲しい事言わないでください」


「嬢ちゃん……」


 彼女の言いたい事には俺も賛成だった。

 別にお金が欲しくて手伝ってもらったわけじゃない。

 それに俺たちが欲しかったのは魔漏の情報だったし。

 何よりそんな建前がなくたって手伝って欲しいと言われれば手伝っていたし、依頼の手伝いを無償でしてくれていたようなものだ。

 だから俺たちにそんな気遣いなんて不要だ。 


「……そうだな。だからガラテンさん。また何時でも俺たちに声かけてくださ」


「あれれぇ~? もしかしてガラテン君じゃないのぉ~?」


 俺の言葉を遮り声を割り込ませたのは、如何にもガラの悪そうな3人組の男共だった。

 この人の知り合いか?

 それにしては何というかゲスい感じか漂う。


 どこかで似たような感じを受けたのは故郷の言葉で伝えるなら『パーリーピーポー感』のする嫌な感じだった。

 学生時代で友人をオタク君呼ばわりしおもちゃにするような。そんなゲスい感じだ。


 何となくその直感が正しいと思ったのは、ガラテンの表情が少し強張りながら横目で見ていて思考しているせいか硬直したままだったのがそうなのだと悟ったのだ。

 彼は、少し憂いた顔になりこっそりと耳打ちする。


「……すまない嬢ちゃん。言い忘れてたな。君の悩みは〘ウォテル〙を覚えれば片付く。ナナミに教えてもらえばいい」


「……え?」


「おいガラテン君聞こえてないのぉ?」


 聞いた内容に疑問を持つこともできぬままパンクなモヒカンの一人が肩に組みついてくる。


「おお! 何だお前か! 何でここにいるんだ?」


 少し愛想の悪い明るい声で応答する大男。

 ……だが、何が気に食わなかったのかその男の表情は少し怒っている気がした。


「……お前、何時からデカい態度になったんだよ。『逃げ銭のガラテン』のくせにさあ」


 ああ、どうやら俺の直感は大正解だったらしい。

 状況は分からない。関係性も分からない。

 だがこの言葉の関係性の類似性と意味は分からないが、いい気分のしない呼び名に感づいていた。


「君たちも可愛そうだなあ。こんな臆病者に先輩面されてたら腹が立つっしょ?」


「はあ?」


「あなた失礼ですよ。仲が良いからって言っていい事と悪いことがあるでしょ?」


 俺が悪態をつき、ミカは本音をぶちまける。


「おっと強気なルーキー達だねえ。まあここには全然来なかったし、可愛い新米魔導士ちゃんに免じて今回は許してあげるぜ」


 男が、いや男達が見せつけたのは酒場のバッジだ。

 だが俺たちが付けているのと違う点が2つほどある。

 デザインとなるマークが違う。

 その上色というべきか、素材が銅ではなく銀だった。


「人に横柄な態度を取るならバッジ確認してからやるんだ。先輩からの優しいレクチャーだ」


 ここでの冒険者生活をしていてある程度は知識が付いていた。

 俺たちの持っている冒険者バッジというものはざっくりとだが位が付けられている。

 ブロンズとシルバーがある。

 ブロンズは俺とかミカの様な成りたてのペーペーが付ける色。

 かく言うシルバーはというと、そう簡単になれるものではない。

 何故ならある一定以上の功績と定められた中型の魔物の討伐に成功しなければならないからだ。

 だからこいつらは俺たちよりも遥かに強い手練れという訳だ。


 因みに、ブロンズとシルバーがあるならゴールドもあると思う人もいるかもしれないが、正式にはない。

 矛盾した言い方になるが、ゴールドバッジ自体は存在する。だが冒険者の酒場には存在しない。

 何故ならゴールドは各国の王国騎士団員にあてられるものだからだ。

 詳しい歴史は知らないが、手を殆ど貸さなかった駐屯所の騎士たちに呆れ、酒場に集まる冒険者が人々の悩みを金で請け負ったことが肥大化した。

 その為大事になった国がそういった冒険者の集まる施設を下請けの様な形で傘下にしたというのがこの世界の冒険者ギルドらしき仕組みの始まりらしい。

 だから相当腕の立つ冒険者は騎士になる。その為に金色は騎士団のバッチで酒場には金色の階級は存在しないのだ。


「シルバー……!」


「そう、おまけにレクサンデルの酒場製だ。せめて丁寧に話しかけろよ」


「お前らみたいなの一瞬だからな」


 いきまいて話しかけてきたのはリーダー格と思われる男の取り巻きが、ロン毛、ツーブロックの順に説明してくる。

 そしてそれに調子に乗るようにペラペラと主将の男が舌を回す。


「にしても可愛そうなガラテン君だ。昔は金のバッチを付けていたにも関わらず、今じゃ錆びた上に魔物から逃げては金を配る『逃げ銭のガラテン』なんてレクサンデルじゃ呼ばれてるんだもんなあ!?」


「酷い……そんな言い方しなくても……」


「……成程な」


 推測の域を出ないが、一つの答えに至った。

 このカナンナという世界は6つの国に分かれているのだが、形と位置を例えるなら、逆Cの形で上からヘルタッド、コルタナ、ギルバース、レクサンデル、エオル、ナーバという順番で時計回りに領が存在している。

 ガラテンはコルタナの騎士団長だったからおよそ今に至る6年間に渡り今までの様なやり取りを行ってきたのだろう。

 あの人が言っていた味方への攻撃と逃亡を抑えれるようになったと言っていたが、それは俺たちの知らないところで治したことだ。

 その最中にこいつらにも頼んだのだろう。

 そしてその迷惑を多くかけていた時期をこいつらは知っているということなのだろう。


 更にこれは妄想でしかないのだが、ガラテンは次第に俺たちにやった様に依頼にすることでしか共闘してもらえなかったのだろう。

 それをこいつらは利用してカモにしているんだ。

 そうじゃなければこいつらと話すときにこんなばつの悪そうな顔になるわけがない。

 だからあのクソ野郎どもは金のバッチが錆びたと罵ったのだ。

 全ての事情を知った上で、俺たちに意気揚々と振りまいたのだ。ああ全く。反吐が出る。


 それにしても、そうなるとガラテンは6年も国と酒場を転々とし、エルタージュのあるエオル領まで来たことになる。

 それほどの執念を持たせた騎士団長、ティルグリムとは一体何者なのか。

 彼にここまでの野望を持たせた罪とは何か。気になって仕方がないが、とにかく今はこの状況をどうにかするしかない。

 今まであまり接点がなかったが、一度一緒に戦った仲の戦士を愚弄されるのは俺にとって癪で仕方がない。


「全部分かってるくせに、それでも罵れる畜生共を上司となんて呼ぶのはごめんだね」


「ああ?」


 俺の犯行に外道3人が詰め寄る。


「てめぇ。あのバッジを見せた上で盾突くなんて分かって言ってるんだよなあ?」


「一海だけじゃないですよ。私だってごめんですよ。あなた達みたいなの」


 俺の犯行に乗って家の魔導士も盾突く。

 そしてロン毛が突っかかってくる。


「おっと、威勢がいい嬢ちゃんは好きだぜ」


「その鼻へし折って飽きるまで吠え面かかせるのが大好物なんだよ」


 そしてゲスな高笑いを決め取り巻き共は腹を抱える。

 ミカは彼らの言動に動じはしていないがあからさまに生理的嫌悪感で不快に感じた表情をしていた。

 弱者に対してマウントしか取れないスタイルは見ていても限度を超えている。


「取らぬ狸に舌なめずりとはいい度胸をしているな。そのバッジ塗装でもしてるんじゃないのか?」


「その言葉の意味は分からねえがてめえ本当にぶちのめされてえ様だなあ!!」


「待ってください!」


 本気の戦闘になりかけたその瞬間合間にガラテンが割入る。

 モヒカンは俺に対して剣を抜き出していたらしく、刃の部分を胸で受け止めていた。

 本当にどういう原理か理解できていないが、強靭きょうじんな体に深く生身に入れられているのに、包丁で皮をうっかり切ったくらいしか血が流れていない。


「けっ。生身に当たってビビったが、馬鹿みたいな頑丈さ忘れてたぜ」


 そう言いながら剣を納める。本当に切るつもりはなかったらしい。

 問題は庇ったガラテンだ。

 あまり深い傷じゃないみたいだがそれでも心配で声をかけた。普通は重症だから。


「ガラテンさん! なんで!!」


「格の違う相手に不用心に喧嘩を売るな。早死にするぞ」


「でも! ガラテンさんがこんなに言われてるのに黙ってるなんて私!」


 ミカの言葉を遮り、元騎士の男は深々と頭を下げた。


「申し訳ありませんウコッケさん……礼儀を彼らに教えなかった俺のせいです。俺が責任を取ります。どうか仲間の無礼をお許しください」


 そう深く謝辞を言うと、モヒカンの男ウコッケは小指で耳をほじくり語りだす。


「はぁ……もういいわ。めんどくせえ。……そうだガラテンちゃんよお。俺たちしばらくこの街に留まるんだわ。だからまた仲良く組んでやるからよお。だから今後ともよろしくな!」


 最後に頭を90度に下げているガラテンの肩を叩き、気楽な声で伝える。

 そして出口に足を進める。


「行くぞおめーら。あとそこの嬢ちゃんは遊びたくなったら声かけてくれよ。名一杯サービスすっからよお。俺たち三人で」


 こちらを振り返らず後ろ姿で手を振りながら去っていった。

 俺たちはこの光景を只々眺める事しか出来なかった。

ガラテンの今後はどうなる……?


良ければ感想、評価、ブクマしていただけた時作者が天国まで召されます。

面白いと感じたら気楽にお願いします。

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