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那由多の剣と魔導士の卵  作者: ナンプラー
1章 エルタージュ編
25/53

意地の汚い大バカ者


「何ですかこの威力の魔法はぁ?!」


 錯乱しながらうろたえるメレオニダス。そして攻撃を受けた方向を見る。


「なに……あの足手まといの魔法使いですか?!」


 驚くだろうな。俺も驚いたんだから。

 ミカが魔法を使っただって?

 最上級魔法以外のものを?

 にわかには信じられない話だった。


「何やってんだミカ! こいつはやばいから逃げろ!!」


 そうだ。仮にさっきのがミカがやったことだとしてもこいつは不意打ち以外の攻撃を許さないくらいには強い。

 バレてる状態でアイツが許す訳がない。


「許せない許せない! 今すぐ蹴散らしましょう!!」


 そう言って棒を伸ばした。

 ミカはそれを見てしっかり逃げる。


「させるかあ!!」


 俺も攻撃させまいと決死で光を纏わせ攻撃する。


 しかし、やはり利き腕ではない方の腕では慣れが出ておらず簡単に回避される。


「あなたの相手なんてしてられないんです! 目障りです!!」


 そう言って相手は薙ぎ払う。何とか屈んで避けるが、さっきの様に剣で受け止められないのはかなり不安な要素となってしまっている。

 ただでさえ戦闘経験も少ないのに負傷状態で戦えだなんて無茶にも程がある。

 

 何とかうまく躱しながらミカに攻撃が向かない様に集中する。

 彼女はどうしてるか確認のため横目で見る。

 その時ハッとした。あのポーズをどこかで見たような気がする。

 それはナナミがミカに教えている時、確かオリジンを集める練習をしていて……


「そうか魔力玉か!」


 中々彼女も無茶をする。

 この土壇場でオリジンを集め魔力玉の生成まで成したのだ。

 どうして魔力を補ってるのかについては全く分からない。

 だがなんてことだ。この窮地が俺たちの成長を促している。

 それにあの子の成長スピードが未知数過ぎる。

 こんなピンチの状況なのに嬉しくなってしまう俺はおかしいのだろうか。

 なら尚更負けられない。

 例えポンコツ勇者一行だと言われ続けても次へ進むためにここだけは乗り切らねばならない。


 だったら俺の出来ることは一つ。

 無茶をしてでもターゲットを集める事だ!


「うおおおおお!!」


 素早くメレオニダスの背後を取る。


「ちょこまかと!」


 棒の後方頂点の側を伸ばし俺に攻撃する。

 だがあくまで気を引くのが最大の目的だ。攻撃は当たれば御の字。当たらなければいい。

 ひょいと簡単に見躱す。

 そしてそのまま突きで突進する。


 だがあと一歩届かない。

 そのまま敵は伸ばした後方の棒を地面に突き刺した状態で伸ばし前進する。


「ちい!」


鬱陶(うっとう)しいのですよあなた!! ガフゥ?!」


 着地した敵に魔力玉が側面から着弾する。

 その威力はかなり大きいのだろう。相手は初めてダウンしたのだ。


「ナイスだミカ!」


 その隙を逃しはしない。俺は全力で走る。無我夢中に。バカみたいに。


「くそ……どうにかしてあの小娘を!」


 とはいうものの俺をどうにかしないと何も手出し出来ないだろ?

 だったら諦めて俺と戦い続けろ。


 そしてその思いに応えるかの様に相手はこっちを見る。


「くそ! くそ! クソォ!! そんな馬鹿の一つ覚えみたいに詰めて!! 馬鹿らしくくたばりなさい!!」


 伸ばす渾身の突きが猛スピードで俺に向かって飛ぶ。

 だが甘い。

 そんなヤケクソの一撃、屁でもない。


「馬鹿の一つ覚えと言うのなら!! なってやるさ!! 正真正銘、大馬鹿者にいいいいいいい!!」


〘致命招来―クリティカル・コール―〙


 メレオニダスはその気迫に押し負け動揺する。

 いや、それだけではない。刀身が眩く煌めいているのに驚いてもいる。


 突きの着弾予測は恐らく全力で走って腹部下をぶち抜くくらいだ。

 なら少し手前で減速し、踏み込んで前に飛ぶ。

 予想は的中する。軌道は飛んだ丁度真下を潜り抜けて後方に突き刺さる。

 それ見た事かと更にそこから突き刺さった赤い棒を足場にし踏み込んだ。

 俺の跳躍は今や風のように速い。

 

「何ですって?!」


 早急に棒を縮小し防御に入る。

 流石は戦闘に長けた魔物だ。対応が早い。

 だが今の俺に怖いものなどなかった。

 受け止められると分かっていても貫ける気がした。

 この瞬間、この一太刀に絶対に勝ちたいという思いを乗算させ、左手の剣を右肩に構える。


 全身全霊の振りかぶり。その身に刻むといい!


 その輝く剣は赤い棒によって防がれた。

 だが不思議なことにその防がれた一撃はいとも簡単にすり抜け振り切ることが出来た。

 そのまま俺はメレオニダスの後方まで滑り着地する。

 奇妙な感触だ。流れ落ちる水を斬ったような、触れたけど何も存在しない物を切り伏せたような感触がイメージにピンとこなかった。


 だが結果が物語る。

 相手の持つ棒の先端は切りつけた部分からボトリと落ちて、敵の本体胴より上部も転がり下部も倒れる。

 棒から謎の液体が飛び散る。恐らくこいつの血液だ。

 何故舌からも出血したのかは分からないが、どうやら何とか討伐できたらしい。


『―――あの時、あなたは偶に急所を突ける力を不満がってましたが、急所に入るとは本来致命傷になるほどのダメージです。致命傷とは死に至る傷のことです。たった一撫で触れるだけで腕を削ぎ胴を割る。それが〘致命招来―クリティカル・コール―〙の力です。そんな出鱈目な力が強くない訳ないじゃないですか』


 俺に剣は語りかける。


「できればもうちょっと早く情報を聞いておきたかったな」


 とはいえこの肝心なタイミングで発揮してくれたそれに感謝をしなければ。

 後ろを振り返る。真っ二つになった魔物と軟体化した棒が転がっている。

 よくよく見ると舌に見えなくもないその赤い棒を見て気づく。

 擬態、舌での捕獲。なるほど。納得した内容を口にした。


「カメレオンなんだな。道理で既視感があったのか」


 何となくその光景を眺めていた。

 倒した余韻に浸るとか、そういった意味はなかったのだがそのまま目が離せなかった。

 だがその行為が偶然か、必然か。定かではないが、注目していた為に耳にしてしまう。


「すみません……リベリオ様……」


「何?」


 リベリオだと?

 その名前は確か魔王の名前だ。

 くそ。何か知ってるかもしれないのに完全に切り伏せてしまった。

 俺は思わず近づいて剣を向け問いかける。


「お前まさか魔王の手下か? おい答えろ! 何をしようとしてた!!」


 鬼気迫る声で圧をかける。

 しかし相手はこちらをうつろな目で見るも、黙秘を選び絶命する。


「くそ……折角の手がかりが」


 俺はそこから動けずにいた。


 戦闘が終わってすぐ、ミカが助けを頼んだお陰で冒険者や教会の方々が到着する。


「なんだこれは……どうなっているんだ」


 冒険者は戸惑い、神官達は急いで手当に入る。

 ミカは状況を説明しアントン達の救助を促している。

 そしてこの一連の戦闘が幕を閉じるのだ。






――――――







 この世界では、病院は2種類のタイプが存在している。

 一つは俺もよく知っている地球に存在しているような薬や手術によって治療するタイプの病院。

 よくあるタイプのものだ。

 だがこの世界では外傷の治癒に関しては魔法が秀でている為、治癒魔法の使える者の多い施設が患者を匿うことになる。

 それを使える者が基本的に僧侶とかプリースト、シスターだのといった役職者になる為、緊急外来みたいな形で教会が受け持っている。


 俺は怪我の為教会の方の病室で治療を受け、入院している最中だった。

 あの戦闘で自覚はしていたが、案の定右腕が骨折していた。

 戦っている最中はアドレナリンが出ていたせいかあまり痛みを覚えていなかったが、ある程度落ち着いてくると次第に激痛へと変化する。

 アントン達が応急手当を受ける中俺も連れられてミカと顔を合わせる間もなく一緒に入院するという形になってしまった。

 これ程大きな怪我は今までしたことなかったから痛みの比較はできないが、人は骨折の痛みは我慢できるものではないという事実を再確認する。


 入院中はとにかくやることがなく、暇で仕方ない。

 あっちの世界ではスマホなんてあるせいで不自由でも時間は潰せたからこんなに暇に感じるとは思ってもいなかった。

 だから今日にいたるまで外の風景をボケーッと眺めたり、頑張って教会の人と話を長引かせ、どうしても何もできなければ寝る。

 そんな時間を過ごし続けた。

 ただその代わり、あっちの世界じゃどう頑張っても骨が折れては一月以上時間がかかるが、一週間程で退院できるほど完治が早い。

 今日は入床から3日目だ。三角巾を付けながら安静にしている。


「暇だーー」


 重力に身を任せ体をベッドに委ねる。

 どうしても退屈な時間が苦で仕方がないのだ。

 今日もこのまま何もなく一日が過ぎると思うとため息も出てしまう。


 そんな悩みから不意にミカの事を思い出す。

 あいつどうしてるのかなとか。

 大丈夫かなとか、一人で依頼をこなせてるかなど。

 他愛のない想像が浮かぶ。それで更に連なって思い出す。


「そういえば、お見舞いには来てくれないのかな」


 何となく、不安になった。

 そう、仲間なら来てくれてもいいのではと疑問を感じた。

 なら時間も長く感じずに済むのになと不満に思う。

 悲しさを感じてしまったせいか、ちらっと入り口を見てしまう。


 やっぱりいないか。

 と思っていたのだが、部屋の入口のドア代わりのカーテンから少しだけ顔を出し覗き込んでいる人がいる事に気づく。


「ん?」


 向こうもこっちが見てるのを気づいたのか、そこから見られたくないのか慌てて隠れる。

 多分今のはミカだよな。何でそんな会いづらそうにしてるんだ。

 せっかくだから話し相手になってくれても良いのに。


 まあ、どんなにこっちがオープンにしてても話し辛い何かがあるのだろう。

 大げさに、聞こえる様に言ってみる。


「あーあ、話し相手でもいればこの暇な時間も良くなるのになー」


 滅茶苦茶あからさまに言ったが、そうでもしないと来てくれない気もした。

 ちらっともう一度窺う。


 だが来ない。

 仕方ないな。あまり動くなと言われてるけど、部屋の中くらいなら良いか。

 ゆっくりと起き、忍び足で入り口まで向かう。

 がっと頭を仕切りから飛び出させいると思われる位置に目を向ける。


「やっぱいた」


「ひゃあ!?」


 壁の縁で腰を抜かす魔法使いが1匹。

 嬉しいため息が出てしまう。


「気なんて使うなよ……とりあえず中に入れよ」


「す、すみません」


 見つけた話し相手を部屋に誘い、俺はベットに座りミカは近くにある椅子に腰かける。

 すると彼女が手に持っていた籠をベット横の小棚の上に置く。


「良かったらこれをどうぞ」


 見ると籠の中にはオレンジ色ではなく、赤い色のミカンに近い果物がいくつか入っていた。


「レンカの実です。体に良いそうで」


「おお、果物か! ありがとう」


「い、いえ」


 俺は一つ、怪我のしていない左手で取り頑張って皮を剥こうとする。

 しかし皮が剥けない。超固い。


「あれ」


「何してるんですか!? 手で剥ける訳ないじゃないですか!」


「え、そうなの?」


 彼女は慌ててレンカを取り返し、道具袋の中から折り畳み式の小型ナイフを取り出した。

 スッと一筋切れ目を入れた後はそこから固い服を脱がしいつものミカンの形の実が出てくる。


 しまった。つい先入観で同じようにしてしまった。

 片腕が骨折してるのもあり、片手でも向ける果物を持ってきてくれたというつもりの品じゃなかったようだ。


「……もしかして初めて食べるんですか?」


「ああ、似たような物は食べた事あるんだけどね」


「そうなんですね。結構有名な食べ物だと思ってたんですけど、世界は広いですね」


 別にバレてはいけないという訳ではないが、あまり疑問も持たれたくない。

 その世界の生活と違うことをしては不信に思われるかもしれないし、何より説明が難しくて面倒だから。

 手渡された中身の一粒を受け取り、口の中に入れる。

 成程。味はまんまミカンだ。


「味は一緒だ。うん、美味い」


「良かった」


 固まった彼女の顔が笑顔で少しだけ和らいだ気がした。


 そういえばあのカメレオンと戦った後、話す機会もないまま入院してしまったから聞きそびれてた事があったんだよな。

 丁度良いタイミングだし聞いてみよう。


「聞きたかったんだけどさ。あの時どうして魔法を使えたんだ?」


 あの時俺を救ってくれた一撃は、二つの高い壁によって阻まれていたはずだった。

 一つはそもそも魔力玉を作る段階まで練習できていなかったこと。それに関してはやり方はナナミさんから聞いているので出来る可能性はあるくらいだ。

 だがもう一つの問題はあの日彼女は魔力が全くない状態だったことだ。

 どうして工面できたのかは正直気になる。


 ミカは少し苦笑いしながら言葉を続けながらローブの裏からあるものを取り出した。


「……正直殆ど賭けだったんです。救援を頼みに酒場に寄った時、道具屋で見た時ピンと来て」


 手に持っていたのは青い液体の入った瓶だった。


「何これ?」


「魔力ポーションです。飲んだらちょっとだけ魔力が回復するんです。飲み過ぎ厳禁なんですけど、3本買って1本がぶ飲みしました」


「魔力ポーション!?」


 不意を突かれ感嘆の声が漏れてしまう。まさかこの命で魔力回復薬なんて拝めることができるとは思ってもみなかったからだ。

 思わずかぶりつく様に見る。


「それであとは、教えてもらった魔力玉の作り方を思い出しながら無理矢理突貫で戦いました。根性で」


「そっかそれで魔法が、根性!?」


「は、はい」


 到底魔法使いから出るような言葉ではない根性論が出てきた事に耳を疑う。

 才能の使い方がインチキ染みてる。そこまでセンスで戦われると味方ながら引きそうになる。

 話の理論がぶっ飛びすぎてて笑うしかなかった。


「ははは! そりゃ凄いな。ミカ本当に魔法の才能あるんだな。魔王も倒せるかもしれないぞ!」


 心の中で少しずつだが、本当に魔王を倒せるのではないかと思い始めていた。

 圧倒的実力差は確かにあったしひしひしと感じた。だがそれ以上に自分たちの進化するスピードに可能性を感じてしまったのだ。

 実際偶然とはいえ魔王に関係している魔物を倒している。

 感じずにはいられなかった。劔小隊の伸びしろを。

 最初は絶対無理だと思っていた魔王討伐も微かにだが現実味を帯び始めていた


 そんな俺の高笑いを暗い顔で俯きながら聞くミカの表情があるのは予想外だった。


「……どうした?」


 何だろう。何か不安なことがあるのだろうか。


「無理かもしれません」


「え?」


「私、やっぱり勇者隊で旅していいような魔法使いじゃないんです」


 さっきまでの上機嫌を一気に暴落させる発言を聞いた。


ミカがパーティーメンバーから外れますか……?


良ければ感想、評価、ブクマしていただけた時作者が天国まで召されます。

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