1 進路
終章になります。
寒い冬が終わりを迎え、暖かな陽気が『おはよう』と言ってくる。そう、後2ヶ月もすれば私も、もう3年生になる。会長や高橋先輩が卒業するタイミングでもある・・・。
私はいつもの通り生徒会室にいた。他には誰も居ない。
「もう2月か・・・。あと少しで会長達は卒業してしまう――――。会長へ何か恩返しができないだろうか。」
「ほう・・・何かしてくれるのかい?」
私しか居なかった生徒会室に会長と高橋先輩が入ってきた。
「会長!?あれ?もう登校しなくてもいい時期じゃないですか?」
「まぁそうだな。私も裕美も学校に来る必要はないのだが、やっぱり橘君の事が気になってな。」
「私の事ですか?」
「あぁ。元々君のために作った部活動だったわけだしな。何か進路のヒントになっただろうか?」
「・・・色々勉強にはなりましたよ。」
「そうか。ならもう少し話をしようか。」
「話ですか?」
「橘君は行動経済学というのは必要だと思うか?」
「そうですね。皆が合理的に物事を考えられればいいってことですもんね。」
「1人の目線ならそれでいいのだが、皆がそれだとダメなんだよ。」
「ダメってどういうことですか?」
「皆が合理的に考えると誰も無駄がないわけだ。つまり、無駄な消費がない。これは実に危険なんだ。」
「危険というのは?」
「つまり自身にマイナスが発生する可能性がでると消費しなくなるのだよ。消費する予定だったものが消費されなくなる。これがどういうことかわかるかい?」
「いわゆるキャンセルやドタキャンと同じ原理ですか?」
「そうだ。じゃあ逆に非合理的な人ばかりだと、消費が抑えられないからお金が回り経済が回るんだ。だからといって無駄遣いをしたらいいというわけじゃないからな?」
こうやって会長に何かを教えてもらうっていうのは凄く久しぶりだな。
「ありがとうございます。会長。私進路決めました!」
「急だな。で、どうするんだ?」
「私、大学へ進学して教師になります。」
「教師か・・・。良いじゃないか。じゃあ萩原先生へ報告してくるといい。」
「そ、そうですね!じゃあ行ってきます!」
私は生徒会室を出て職員室へと向かった。
◇生徒会室
私とかげちゃんは生徒会室に残っていた。
「かげちゃん?いいの?もう卒業になるんだよ?」
「いいって何がだ?」
「何って私が何もわかってないとでも思ってる?一応これでも幼なじみなんだけど?」
「そうですよ、会長。はっきりしたらどうですか?」
私の右側から男の声が聞こえた。
「日高か・・・。お前も裕美と同じような事を言っているんだな。」
「もう!びっくりした。急に出てこないでよ、ひっくん。」
「はは、なんだか懐かしいですね『ひっくん』なんて。でもひろちゃんもそう思うでしょ?会長の行動につてはモヤモヤするばかりです。」
口ごもるかげちゃん。
「ねぇ本当はわかってるんでしょ?このままじゃもうさよならかもしれないよ?」
「・・・よくはない。だが、私はどうすればいいかわからない。彼についてきて欲しいなんてこと言えない。せっかく彼は自分の行く道を決めたのに・・・。」
「思いを告げるだけでいいんじゃないですか?」
「そうよ。かげちゃんの思いを告げるべきよ。」
「思いか・・・。」
◇職員室
「萩原先生はおられますか?」
「あら?橘君?どうしたの?」
「萩原先生・・・私教師になろうと思います。」
「あら・・・、おめでとう。ようやく進路を決めたのね。でもどうして教師なの?」
「会長を見ていて思ったんです。こんな風に何かを人に教えられるような人になりたいって。」
「髙山さんの後は追わなくてもいいの?」
「会長は私にとって憧れであり目標なんです。でも私の実力じゃ会長の後追っても追いつけないですよね?だから追わないです。」
先生は顔をにやつかせながらこちらをまじまじと見ている。
「青春ねぇ~。いいわねそういうの。動機も別に不純って訳じゃないしいいんじゃない?じゃあ教師になって何を教えたいの?」
「特にそれについては余り考えてないですけど、私が会長に教わったように進路や何か困っている生徒に対して手を差し伸べれるような教師になりたいです。」
先生はニコっと微笑んでくれた。
「よし!じゃあそうなれるように頑張りなさい!私も現役教師として陰ながら応援するわ!」
「そこは堂々と応援してくださいよ。」
「そうだったわね。ふふふ。」
先生と進路の話をして私は職員室を後にした。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回は11月22日(木)午後6時頃を予定しています。
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