1 一つの恋
新章です。3章と同じ感じで進んで行きます。
春は恋の季節。一人の女子生徒は一人の男子生徒への恋心を心に秘め、学生生活を過ごしていた。彼女の名前は『多田紫』。この学校の高校3年生だ。周りからは悪口としか言いようがない程のあだ名を付けられていた。
でも彼女は気にしない。なぜなら、自分を庇ってくれた同級生に恋をしてしまったから。
それは1年生の頃…。
◇2年前
「じゃあ出席番号順に自己紹介をしてくれ。」
お決まりの自己紹介を促す先生。私は人見知りで自己紹介でもアピールするものもない。でも、中学までの私とはさよならしたの。高校ではちゃんと仲の良い友達を作ってエンジョイするんだ!
「じゃあ次!多田!…おい、多田紫。聞いてるのか?」
私は考え込むと周りが見えなくなるタイプで今回も自己紹介を考えていたらあっという間に私の番になってしまったようだ。そしてそれに気づかず担任の先生が私のフルネームを連呼している。
「多田さん…。自己紹介多田さんの番だよ。」
後ろから声が聞こえてきた。私の後ろに座っている『角田心』さんだ。
ふと我に返った私は勢いよく席を立った。
「は、はひぃ!!」
勢いよく席を立ってしまった事で、椅子が後ろの席で止まり椅子と足の幅に押された机が前に倒れようとする。
私は咄嗟にその机が前へ倒れるのを阻止するために両手を机の上へ当てる。
バンッ!大きな音が教室に響いた。
「おい、大丈夫か?」
先生が心配になって私に駆け寄ってくるが、それを右手で大丈夫と意思表示する。
だが、あまりに突然の出来事に私は考えていた事が全て飛んでしまった。
仕方なく、自己紹介を再開するが何を言おうとしたのか思い出せない。結果的に最低限の紹介のみになってしまった。
「えっと、多田紫です。第一中学から来ました…。よろしくお願いします。」
この日以来私は陰で、豚だのイノシシだのと呼ばれるようになってしまった。主に私の体の事を指している。小学校から運動するのが嫌で体型はどんどん横に大きくなっていった。中学校では体重が80キロを超えたが、身長が170を超えていた私からするとなんでもなかった。
「おい、あれだろ?超巨大ロボMAXってさ。」
そんな声が廊下の端から聞こえてくる。
そう、私は女子の中ではトップクラスに身長が高かったため、ロボット扱いされていた。
私としては何とあだ名を付けられようが気にしていなかった。それは、同じクラスの『合田隆史』君を影から見られれば満足。
そんな合田君がうれしい事に私を庇ってくれた。
◇教室
「おい、ロボMAX、お前が後は全部やれよ。お前ならあっという間にできるだろ?ロボットなんだしな!」
一部の男子からそう言われ箒を渡される。これは毎日の事だ。私は特に気にせずに受け取った箒で教室の床を掃いていく。同じクラスの女子からは断ればいいのにとささやかれつつも誰も止めに入らない。そんな中一人の男子生徒が止めに入ってくれた。そう、それが合田君だったのだ。
「美山、もうそれぐらいでいいんじゃないか?せっかくのクラスメイトなんだから仲良くしようぜ。それに人の体について色々言うのは良くないと思うぞ。」
「ッチ。合田か…。」
合田君がそういうと、嫌な事をいう美山は逃げるように去って行った。
「多田さんもあんまり言いたい放題言わせない方がいいよ。嫌なものはいやと言う事も大切だと思うよ。掃除は僕も手伝うから一緒に掃除しよう。」
私の嫌な美山に注意してくれただけでなく、一緒に掃除までしてくれた。私は胸の鼓動が小さな鼓動から大きな鼓動へと変わっていくのを感じた。恋に落ちた瞬間だ。
それから2年間独自に合田君をサーチして好みを調べた。あいにく、合田君を好きという女子はあまりおらず、そのためか情報も中々入手できなかった。
しかし、私は2年生の時に合田君と急接近する機会があって、それ以来一緒に話す様になったのだ。
◇図書室
私はいわゆる図書館の主と呼ばれるほど居ついている
「ここいいかな?」
隣に男子生徒が座る。いつもなら特に何も思わないが今日は違った。
胸がドキドキしている。不思議な感覚だ。いつもと違う。ふと横を見ると、そこには合田君がいた。
「合田君!?」
私は、驚いて大きな声を出してしまった。
「多田さん、しー。」
合田君が人差し指を口に添え静粛を促す。
私は合田君に筆談を持ち掛けた。
「合田君はいつもここへ来ているの?」
「毎日じゃないけど、よく来るよ。」
「何の本を読んでいるの?」
「小説かなー。いろんな小説を読んでいるんだ。多田さんは?」
「私は…、合田君と同じ色んな小説かな。」
「そうなの?じゃあ僕に何かおすすめの小説ある?」
「テトラファンタジーっていうファンタジーがあるんだけど、読んだことあるかな?」
「いや…、読んだことないね。それってどこに置いてあるの?今日借りて帰るよ。」
たわいのない話から私のおすすめの小説を紹介する事ができた。まさに奇跡だ。
そこから私はたまに合田君と小説の話をするようになった。
合田君と小説の話をしながら帰っていると、前方に同じ学年のカップルがいた。男女とも痩せていて、バランスの取れたカップルだ。
一方私は…、私は身長174センチ、体重94キロの大木の様な女子。合田君は170センチ、体重62キロでやややせ形だがマッチョのイケメン。
私って合田君の横を歩く資格があるんだろうか。
家へ帰ると、すぐインターネットで恋愛について調べた。どのサイトを見ても女性は綺麗な方がよい。男子がイケメンなら尚の事だそうだ。
「はぁ…じゃあ私は合田君に見合ってないって事?」
落ち込んでいた所に、一つの広告が目についた。
“誰でも簡単に痩せられる!今すぐここをクリック!”
普通に考えれば怪しい広告だが、私の頭は合田君に見合う体を手に入れるため、頭がそこまで回らなかった。
早速クリックし、購入する。
それから3か月…。
「全く効果がでないじゃない!早くしないと3年生になったら受験でこんなことできなくなる!」
私は完全に焦っていたのだ。
いろんなダイエット方法を試したが、続かず効果がでずだ。
そんな時、相談ボックスなるものを発見した。
私は藁にもすがる思いで相談カードへ思いを投函した。
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
次回の更新は11月4日(日)午後8時予定です。
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