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龍神

 龍神りゅうしんの血は甘いような苦いような辛いような……不思議な味だった。


「……なんともなッ!!」


 ドクンッ! と俺の体内で何かが大きく脈打つ。

 それと同時に身体全体が焼けるように熱くなっていき、身体がふらついてその場に膝を付く。


(体が熱いッ……それに、俺の中から何かが消えて行く感じがする……)


 ブンッという低い音に視線を上げてみれば、そこには半透明の板――俺のステータスが表示されてた物が浮かんでいた。

 半透明の板は、俺が書いてある文字を読む前に光の欠片となって宙へと消えて行く。


『ほう……人間とは久しいな』

「――ッ!?」


 どこからともなく聞こえて来た低い声に驚いて周囲を見回してみて、俺が先ほどの平原とは別の場所に居る事に初めて気づいた。


 地面は何回も踏みしめられたように硬くなっており、周りには木や草が一本も生えていない。その代わり大小様々な岩が辺りに散乱していた。

 そして、俺と丁度向かい合うように“ソレ”はいた。


『ここに人間が来るのは数万年ぶりだな……』


 黒い鱗をその身に纏い、全てを威圧するような魔力を周囲に放出している巨大な龍――恐らく、龍神と呼ばれている存在がそう言って青く澄んだ空を見上げた。


『それにしても、お主はボロボロだな』


 呆れたように放たれた言葉に一瞬だけ首を傾げたが、そこで初めて片目が見えていない事に気づいた。ハッとなって左腕を見てみれば、そこには何もないように服の袖が垂れ下がっているだけだった。次いで右手を見てみれば、人差し指がない。


 魔刀と契約した事で修復されていた場所が、無くなっていた。

 それどころか、腰に差していた桜花達も無くなっている。


『お主は我の血を飲んだ事で、ここに招待されたのだよ……ここは、我の憧憬、我の故郷、我の愛した土地』

「……」

『我は封印されている故に、ここには魂の姿でしか来ることが出来ん。お主がボロボロなのも恐らくはそれに起因しているのだろうな』

「なるほど? てか、さっきここに人間が来るのは数万年ぶりって言ってたけど、俺の他にも来たヤツが居るのか?」

『ふむ……過去に一度だけ、小さな女の子が来た事がある。白に青みがかった美しい髪を持つ子だった。まぁ、悲しい運命を背負っていたがな』


 そう言って龍神は俺に向かって首を下げた。

 龍神の大きさは目に見えている以上であり、首を下げるだけで俺との距離を一気に詰められた。


『いい目をしているな』


 至近距離で俺の目を赤い瞳が見てくる。

 俺の全てを見透かすような視線に、目を逸らす事が出来ない。ジックリと見つめ合う事数分、龍神はその口元に笑みを浮かべて少しだけ首を上げた。


『素養はあるみたいだな……時期、お主の身体に我が血が馴染んでくる。そうなれば、契約する事が出来るだろう。だが、本当にいいのか? 我と契約するという事は人間を辞めるという事だ。お主は絶大な力を手に入れ、人間としての理を外れる事になる……本当にいいのか?』

「いいさ……俺には、力が必要なんだ」


 俺の言葉に、龍神はニヤリと笑った。

 その顔が何故か印象的だった。

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