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2 変身! それとも、早着替え?

 まずは、自己紹介といこうか!

 前回、うっかり名乗り忘れちゃったからね!


 あたしの名前は、真山風鈴。高校一年生。

 普通に“ふうりん”と読む。

 結構、可愛いし、気に入っている。

 親戚のおっちゃんが、あたしの名前を呼んで、あたしの胸の辺りを見ては、残念そうなため息をつくのは気にくわないけどね。

 なんでも、昔。フーミンとかいう、お胸の大きなアイドルがいたらしい。

 知らんっつの。

 てゆーか、ため息、ホント止めろ。

 まるで、あたしのお胸の成長がこれで終わっちゃったみたいじゃん。

 まだ、高一だっつの。

 発展途上だっつの。

 毎日、牛乳飲んでいるし。お風呂でマッサージもしているし。バストアップ体操もしているし。神への祈りも欠かしてないのに。

 神への祈りは遺伝子をも超越するとあたしは信じている!

 ……………………。

 えーと、まあ。あらゆる分野で平均点だけど、お胸のサイズは平均を下回る、そんな女子高生です……。

 ちなみに。具体的にどのくらいかって言うと。

 Aカップのブラが微妙に余っちゃうくらいの、慎ましく謙虚でお淑やかなサイズ。見下ろせば、自分のつま先がはっきり見える視界良好さ。遮るものがない視界って、素晴らしいですよね。みなさんも、そう思いませんか?

 …………………………。

 …………せめてCカップ。いや、贅沢は言わない! Bカップでもいい! せめて、もうちょっと、何とか。

 何とか! 神様!!


 えー。そんなあたしは今。

 二つの巨乳に囲まれています。

 おっぱいは二つとか、そういう意味ではなく。

 正確に言うと、二人の巨乳に囲まれています。

 一人は、連城美琴。

 幼馴染でクラスメート。長年連れ添った相方です。

 ゆるふわっと、おっとりしてそうな外見だけど、意外と好奇心旺盛で行動的なぽよんぽよん系美少女です。

 あまりのおっぱい格差に耐え切れず、おまえの胸は俺のものとか言って乱暴に揉みしだいたら、思いっきり殴られたりもしたっけ。遠い目。あたしに対してだけ、時折、暴力的になるんだよね、この人。

 そして、もう一人は。

 クラス一、いや、もしかしたら世界も狙えるんじゃないかというくらいに存在感の薄い地味少女、クラスメートの一色アゲハ。

 これが、あなた。なかなかの実力の持ち主ですよ?

 どうして、今まで見逃していたのか信じられないくらいですよ?

 まあ、実力のあるおっぱいの存在に気付く以前に、本人の存在に気付いていなかったんだろうけど。

 いや、それにしても。猫背なのは、おっぱいの重みに耐えかねてのことですか? よかったら、支えていましょうか? とか、思わず口走っちゃいそうなくらいに、ヤバいおっぱいですよ。両手に余るおっぱいですよ?

 余った分を、ぜひあたしに分けて欲しい。

 おさげ、野暮ったい眼鏡、そばかす、猫背、そして限りない可能性を秘めたおっぱい。

 こうしていると、秘められた実力を隠し続ける、存在感の薄い地味子なんだけど。この子ってば、実は……。


「えっと、それで、もう一度聞くけど。一色さんが、魔法蝶々のバタフライさんなんだよね? 物凄い早着替えだったけど、一色さんってマジシャンか何かなの?」

 美琴が、おっとり前のめりに一色さんに尋ねる。瞳がキラキラしております。

 あたしも、釘付けになっていた一色さんのおっぱいから目を上げて、俯いている一色さんの顔を見ながら頷く。

 そう、それ。

 それが、本題でした。

 魔法蝶々バタフライ。

 最近、時折。校内に突然現れては忽然と姿を消す、魔法少女の亜種のような、怪人のような、ただの痴女のような、スクール水着にバタフライマスクの正体不明の少女。

 その正体が、この一色アゲハではないと美琴は言うのだ。

 ついさっき、売店近くの自販機前に唐突に現れて、煙のように姿を消した……ようにあたしには見えたんだけど。どうやら、美琴はあり得ないくらいに一瞬でスク水から制服に早着替えるシーンを目撃したらしいのだ。

 それは最早、早着替えじゃなくて変身なんじゃないかと思うんだけど。

 やはり魔法蝶々は、魔法少女の亜種なのか!?

 詳しいことは本人に聞いてみようと言う美琴に合点承知して、ひっそりと自販機から立ち去る地味少女一色アゲハに声をかけたところ、何だか脈ありの様子だった。

 美琴が、さっきと同じ、ド直球の質問を投げかけると、顔を紅潮させ気の毒になるくらいにあたふたし始めたのだ。

「あ、あの、その。こ、ここでは何ですから、その。良かったら、私の家に……」

 というわけで、駅の近くのマンションの一室に連れ込まれた、あたしと美琴なのだった。


 一色さんのお部屋は、ぬいぐるみがいっぱいでファンシーな感じだ。ぬいぐるみも種類が豊富で、森の動物たちだけじゃなくて、イカとかタコとかペンギンとか海産物系もたくさんある。

「その、どうして、私のことが分かったんですか?」

「え? だって、見てたから。早着替え」

「でも、みんな。私に気が付かなかったのに……」

「あれ? そう言えば、そうだね? なんでだろう? はっ! もしかして、一色さんって、幽霊なの? そして、わたしは実は霊感少女だったの?」

 うちのおっぱいが、何かアホなこと言い始めた!

「…………あんまり、みんなに気付かれないので、自分でもそうなんじゃないかって思ったこともありますけど、たぶん、違うと思います。家族は、普通に接してくれますし。たぶん、まだ、生きてます……」

 いや、そこはもっと、自信をもって断言しようよ。

「あ、ご、ごめんなさい」

「いえ、いいんです。自分でも幽霊なんじゃないかって疑うくらいですから、他人にそう思われても仕方ありません。むしろ、どうして連城さんが私に気付いてくれたのか、その方が不思議です」

「んー、えっとさ。美琴って、昔から好奇心旺盛っていうか、他人が気づかないようなものを見つけちゃう率高いんだよね。草むらに隠れてた犬のウンコとか。草むらで、怪我して動けなくなってる鳥とか。だから、その好奇心アイが発動して、クラスのみんなもつい見過ごしがちな存在感の薄いクラスメートのことも気づけたんじゃないかな」

「ちょっと、風鈴! 犬のウンコと鳥さんを同列に語らないでよ! あと、一色さんにも失礼だから!」

「なるほど。そういうことだったんですね」

 美琴がおっとりプンプンしている横で、一色さんは得心がいったというように頷いている。そして、さらに。こんなことまで言い始めた。

「先生だって、どんなに声をかけても気が付いてくれないことが多いのに。私の存在に気が付いてくれる人が、家族以外でこの世に存在したなんて。あの、あの。良かったら、お友達になってもらえませんか?」

 上目遣いでの必死なお願いに、あたしと美琴は目を合わせて頷いた。

「もちろんだよ」

「これから、よろしく」

 まあ、地味で存在感が薄いだけで悪い子じゃなさそうだし。

 あと、面白そうだし。

 こんな時は、バッチリ以心伝心のあたしたちです。

「で。早速なんだけど、あの早着替えのこと、詳しく教えてもらってもいい?」

 もう。うちの見た目はおっとり系おっぱいさんってば、早速前のめりですよ。

「あ。はい、その。自販機でジュースを買った後、お釣りを取り忘れていたことに気が付いたんですけど、慌てて引き返した時には、もうあの男子がお釣りを取り出していて。何度も声をかけて、私の取り忘れたお釣りだって言ったのに、全然気が付いてもらえなくて」

「ふむふむ」

 なんか、その様子が目に浮かぶなあ。

「気がついたら、変身していたんです」

「え? 変身? 早着替えじゃないの?」

「え? やっぱり、魔法少女の亜種だったの?」

 一瞬、沈黙が落ちる。

 あたしと美琴は目を合わせて頷き合うと、一色さんに話の先を促した。

「その、私にも、理由はよく分からないんですけど。どうしても気が付いて欲しいのに気づいてもらえなくて、ストレスが最高潮に達した時に、変身しちゃうみたいなんです」

「まさかのストレス系魔法少女!」

「ストレスのあまり、本人も気が付かないうちに、目にもとまらぬ速さで早着替えをしちゃってるってことかな?」

「あ、その。分かりません。自分では、変身だと思ってました……」

 話はそこで終わりなのか、一色さんは俯いてモジモジし始めた。

 あたしと美琴はまた目を合わせて頷き合う。

 話がそれで終わりなら、ここから先は質問タイムといこうか!

 と、ここまでは通じ合っているけど、質問の内容はまったく心と心が通じ合っていないと思う。

 幽霊とか言ってたくせに、一色アゲハが魔法少女だってことは信じてないみたいだし。

 話が脱線する前に、ここは先に行かせてもらうぜ!

「ていうか、魔法蝶々って、何? 魔法少女じゃダメなの?」

 変身したなら魔法少女っていう思考は、あたしにも理解できる。それは、そういうものだ。

 変身して、魔法少女になる。

 それは、日本人女子の遺伝子に組み込まれた魔法の言葉だからだ。

 だが、なぜに、蝶々?

「あ、それは、名前がアゲハだから……そこから……。それに、もう高校生なのに、魔法少女とか名乗るの、恥ずかしいし……」

 魔法蝶々は恥ずかしくないのか? という問いは封印することにした。まあ、感性は人それぞれだからね。うん。

「どうして、スクール水着なの?」

 これは美琴だ。そこは、あたしも気になっていた。もしかして今日は、完璧に心が通じ合っちゃってる?

「それは、その。変身するときに、フッと魔法蝶々バタフライって思い浮かんだんですけど。その時に、バタフライって水泳の種目にあったなあって、つい考えてしまって。そのせいだと思います」

「だったら、競泳水着の方がよくない?」

 おっと、それは思いつかなかったぜ。以心伝心もここまでか。

「その、スクール水着しか、水着を持っていないので……」

 え? そんな理由。

「そっかあ。じゃあ、今度水着を買いに行こうかー。それで、一色さんは、これからも魔法蝶々として学園内の小さな悪を取り締まっていくつもりなの?」

「え? いえ、あれは、その。変身すると、普段より気が大きくなってしまって、つい言ってしまっただけで。そんな大それたことをするつもりではなくて。それに、いつ変身するかも分かりませんし」

 それもそっかあ、って。

 気が大きくなったんなら、この世の悪をうち滅ぼすくらい大きいこと言っておこうよ。普段、どれだけ気が小さいんだよ。

「ふーむ。これは、今後の方針を考える必要があるね!」

 美琴の目がキラキラと輝いている。

 いいけど。何をどういう方向で考えるつもりなんだろう?

「あ、は、はい! お願い、します」

 一色さんも素直に頷いてるけど、本当にそいつに任せていいの?

 そいつ、魔法少女の存在を信じていない非国民だよ?


 …………ふう。仕方ないな。

 ここは、このあたしが何とかせねば!


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