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次から次へと……



 ついベルを褒められて嬉しくなって、ついでにリンの自慢まで入って1時間近く語ってしまった。


「……すみません、クリスさん。つい、熱くなってしまって……」

「……私も別の意味で熱くなりました」

「え?」

「い、いえ、お気になさらず……私が迂闊だったというだけですから……」


 長く付き合わせてしまったことを謝罪すると、クリスさんは何故か俺に背を向け肩で大きく息をしながら答えてきた。


「……み、ミヤマ様。申し訳ありません、私、このままでは精神的なダメージが深刻……いえ、用事を思い出してしまいまして、これで失礼します」

「あ、はい。重ね重ねお時間を取らせてしまって、申し訳ないです」

「い、いえ、たまにはこういうのも悪くは……失礼、やはり少々混乱しているようです! では、またの機会に」

「……え、ええ、お疲れ様です」


 どうやらクリスさんはかなり急いでいるみたいで、まくしたてるように告げてから早足で去っていってしまった。

 う~ん。本当に悪いことをしたなぁ……どうも、ベルとリンのことになると長く語っちゃうんだよな。これからはもう少し、気を付けることにしよう。


 クリスさんを見送ったあと、まだ待ち合わせまで1時間ちょっとあるので周囲を軽く散策することにした。

 誰か知り合いでもいれば、時間がつぶせて丁度いいんだけど……流石にそうそう上手くは……。


「お嬢様! 止めてください、なんて金額の物を買おうとしてるんですか!?」

「は、離してください! 限定模型なんです! この機を逃すと手に入らないかもしれないんですよ!?」

「ぐっ、強っ……ジークも見てないで手伝ってください!」

「……り、リリ? 流石にこれは……考え直してください。私やルナの年収くらいの価格ですし、何種類もありますし……なにより、ものすごく大きいですから……」


 聞こえてきた声に従い顔を向けると、そこにはひとつ数メートルはあろうかという巨大なドラゴンの模型がいくつも並んでおり、その前で揉めている三人組が居た。


「大丈夫です! 私の個人資産は十分ありますしから! 全種類買わせて下さい!!」

「駄目です! というか、どこに置くんですかこんなの! お嬢様の隠し部屋にだって入らないでしょうが……」

「だったら、庭に……」

「リリ、ベルちゃんやリンちゃんが怖がるのでやめてください……ともかく一度落ち着いて」


 ……あ~うん。アレだ。知り合いに似てる気がしたけど、知らない人だ。うん、ものすごく注目されてるのには気付いてないんだろうか? と、ともかく、俺はなにも見なかった。


 スッと視線を逸らし、ベルとリンをやや強引に引っ張ってその場から離れる。

 い、いや~広くてしょうがないとは言え、知り合いは見つからないなぁ~あ、あはは……。


「……いま、貴方、ミヤマ様を侮辱しましたよね? それは死にたいということでしょうか?」

「なっ!? ぱ、パンド――がはっ!?」

「……汚らわしい戦王配下の分際で、私の名を口にするな……どうやら躾る必要があるみたいだな」

「あがっ!? く、鎖……がぁっ!?」

「ほら、もっといい声で鳴きなさい。安心しなさい、殺しはしない……ギリギリまでいたぶってあげる」

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


 ……う、うん。知らない人だ。全然、これっぽっちも知らない人だ。空中から出現してる鎖で、嬉々としながら相手を縛りあげてるけど、まったく見覚えのない方だ。

 ま、まぁ、し、知らない人だけど……流石に、状況が状況だしなぁ……。


「アリス、GO」

「……あい」


 とりあえずアリスを差し向けて、俺はこの場から離脱することにした。おかしい、なんで妙な場面ばっかりに遭遇するんだ?

 と、とりあえず知らない振りをして危機を回避しよう。絶対ロクなことにならないから……。


 そんなことを考えながら早足で移動し、十分に離れてから溜息を吐く。ここまで離れれば大丈夫だろう。


「……おや? 我が子ではありませんか?」

「……」


 ……終わった。完全に終わった。危機を回避したと思ったら、到着した場所には巨大地雷が待ち構えていた。


「……え、えで、エデンさん? お、おはようございます」

「おはようございます。朝から愛しい我が子の顔が見れるなどとても幸せです。ああ、もしかして、母に会いに来てくれたのですか? ああ、そうなのですね! そうに違いありません! 流石愛しい我が子、母の求めるものをしっかりと理解しているのですね。ああ、素敵です。おや? しかし……『4時間52分23秒』しか寝てないのではありませんか? いけません、しっかりと睡眠をとらねば、我が子の体に触りますよ。ああ、そう、そうなのですね! 我が子は寂しかったのですね? 申し訳ありません、私としたことが我が子の素晴らしさを世に広めることばかりで我が子の元に行けていませんでしたね。ええ、大丈夫。もう大丈夫ですよ。母が添い寝をしてあげましょう。果てることのない愛情で、我が子を安らかな眠りにいざなってあげましょう!」


 ひ、ひぃぃぃぃ!? 怖ぇぇ!? やっぱり怖ぇよこの方! なんで、秒単位で俺の睡眠時間を把握してるの!? しかも、当然の如くこっちが話すより先にガンガン喋るし……。

 エデンさんは目の奥にどす黒いハートを浮かべながら、俺ににじり寄ってきて……直後に出現したクロのアッパーカットが顎に突き刺さった。


 クロのアッパー……その一撃は、上空にあった雲を全て消し飛ばすほどの威力。しかし、それほどの威力の拳を受けながらも、エデンさんは少し仰け反っただけだった。


「……毎度毎度、よくも我が子との語らいを邪魔してくれますね。『温厚な私』でも、流石に我慢の限界がありますよ?」


 異議あり! 貴方のどこが温厚なんですか? むしろ、完全にバーサーカーなんですけど!?


「こっちの台詞だからね! なんど、注意すれば自重って言葉を覚えるの!」

「ひとつの世界の頂点たる私に、自重などという言葉は必要ありません」

「あぁ、もうっ! 相変わらず性質の悪い……いい加減ぶっ飛ばすよ!」

「やれるものならやってみなさい」

「……」

「……」


 クロとエデンさん、二人の間にバチバチと火花が散る。そしてクロが無言で空中に渦を造り出すと、睨み合ったまま両者とも渦の中に消えていった。


 拝啓、母さん、父さん――うん、もう、なんて言うか……幸先不安ってレベルじゃないんだけど……まだ、フィーア先生とノインさんと合流すらしてないんだよ? なのにどうして、こんな――次から次へと……。





???「あ、ありのままにいま起こったことを話しますよ? わた……アリスちゃんがパンドラをハウスしたと思ったら、化け物二体が喧嘩してた……な、なにを言ってるか(ry」


【シリアス先輩改修完了まで……あと一話】

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