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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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可愛らしいお願いだった



 オズマさんが淹れてくれたコーヒーを飲み終わり、ある程度疲労が回復してから立ち上がる。
 そしてオズマさんにお礼を言って、その場を立ち去ろうとすると……オズマさんが口を開いた。

「あ~ミヤマくん」
「はい?」
「余計なお世話かもしれないけどさ、少しだけ年長者としてアドバイスしてもいいかな?」
「え、ええ、是非お願いします」

 ボサボサの髪を手でかきながら、オズマさんは優しげな目で俺を見て言葉を続ける。

「君は優しく謙虚な好青年だよ。けどね、場合によっては、その謙虚さが美徳ではないこともあるって、覚えておいてほしいんだ」
「……え?」
「ミヤマくんはさ、誰かに力を借りることを……心のどこかで申し訳ないって思ってるでしょ? いや、別に悪く言ってるわけじゃないよ。『君も意識して直そうとしている』のは、おじさんも分かってる」
「……」

 そのことは、以前シアさんにも指摘された。力を貸してくれる絆も含めて俺自身の力だと……。
 オズマさんの言う通り、俺はそれ以降、考え方を出来るだけ意識して直そうとしてきた。ただ、うん。やっぱり、元々の性格というのか、いままでの慣れというのか……やはり、どこかで申し訳なく感じている部分はあると思う。

「おじさんはさ、ミヤマくんはアレコレ難しく考えすぎてるんじゃないかって思うわけだ。もうちょっと、緩い感じでいいんじゃないかな~ってね」
「緩い感じ、ですか?」
「うん。君に力を貸してくれる人達はさ、皆君が好きで協力してくれるわけだ。難しく考えなくていいんだよ。好きだから助ける。ミヤマくんだって、好きな子を助けてあげるのを苦労だなんて思わないでしょ? そういうことだよ」
「……そう、ですね」
「誰だって、誰かに助けてもらってる。おじさんだって、六王だって、創造神様だって……心を持って生きている以上、誰かに助けられてる。だからさ、そういう時は一言でいいんだ。『ありがとう』ってね」
「……はい!」

 オズマさんはそう言って優しく笑った後、ガシガシと少し乱暴に俺の頭を撫でてきた。

「まぁ、君はこれからもいろいろ大変だろうね。助けられることもいっぱいあるだろうし、助けることだっていっぱいある」
「はい」
「これからもいろいろ悩んだりするだろうし、苦しむこともあると思う。それもいいさ……いろいろ挑戦して、失敗してみるのもいい。君はまだ若いんだ。積み重ねた分だけ、どんどん魅力的になれるよ。『妥協』なんて面倒なことはさ、おじさんぐらい歳取ってからゆっくり覚えていけばいいさ」

 それは本当に、年長者からの嫌味の無いアドバイスだった。
 悩んでもいい、失敗してもいい……その分だけ成長できるからと、そんな優しい応援の言葉。

「……なんてね。こんな真面目な言葉は、おじさんの柄じゃ無かったかな~?」
「いえ、ありがとうございます! なんていうか、その、いろいろ頑張ってみようって……改めて思うことが出来ました」
「そっか、それなら良かったよ」

 そう告げながら、もう一度俺の頭を撫で、オズマさんは手を離して穏やかに微笑む。
 再び取り出した煙草を加える仕草は、なんというか大人のカッコよさみたいなのを感じた。

 だから、だろうか? つい、厚かましくはあるが、ある言葉が口を突いて出た。

「……また悩んだりした時は、相談に乗っていただいてもいいですか?」
「おじさんに相談するのは、人選ミスだと思うけど?」
「そんなことは、無いと思います」
「う~ん。そうかい? まぁ、しみったれたおじさん相手でよければ、いつでも遊びにおいで……コーヒーぐらいならご馳走してあげるよ」
「はい! ありがとうございます!」

 苦笑を浮かべながら、それでもいつでも相談に来ればいいと、少し遠回しに言ってくれたオズマさんに、もう一度深く頭を下げてお礼を告げる。

「うん。まぁ、それじゃあ、次はアグニちゃんのところだったっけ? 頑張ってね~」

 そう言って小さく手を振るオズマさんに軽く会釈をして、アニマと一緒に次の闘技場を目指してこの場を後にした。







 アニマと並んで五つ目の闘技場を目指して進む。
 手元のスタンプカードには、戦王五将を倒した証である特大スタンプが四つ。道中に参加したアトラクションのスタンプは、メギドさんのところへ向かうのには関係ないのでカウントしないとして……次が五つ目。最後の一つだ。

「ご主人様、ハミングバードが……」
「うん? リリアさんからだ」

 どこか感慨深い気持ちになっていると、丁度そのタイミングでリリアさんからのハミングバードが届いた。
 なんでも、リリアさん達はバッカスさんの闘技場に挑戦し終え、俺とは逆の順番……バッカスさんの次にアグニさんの闘技場に向かっているらしい。『そこで合流できるでしょうか?』という文で締めくくられていた。
 実際丁度いいタイミングだったので、俺達もアグニさんの闘技場に向かっているという返事を送り、そちらで合流することに決まった。

 ならばと思って、少し歩くスピードを速めようと思ったところで、服の裾が控え目に摘まれた。

「……え? アニマ?」
「あっ、も、申し訳ありません!? つ、つい……」
「いや、大丈夫だけど……どうしたの?」
「い、いえ、その……」

 なにか用があるのかと首を傾げながら尋ねると、アニマは顔を赤くして俯きながら、彼女にしては珍しく小さな声で呟いてきた。

「……ぶ、無礼なのは承知していますが……えと……あの……」
「うん?」
「も、もう少しだけ……『二人きり』……で……その……も、申し訳ありません! なんでもないです!」
「……」

 それはとても珍しい、いや、たぶんアニマと出会ってから初めて告げられた……小さく、控えめな我儘だった。
 最後まで言葉は言い切らなかったけど、それでもアニマがなにを求めているかは理解できたし……正直、嬉しくもあった。
 だから俺は、深く頭を下げるアニマに顔を上げるように伝え、出来るだけ優しく笑みを浮かべながら口を開いた。

「……実はさっき動きまわったせいか、お腹空いちゃってね。なにか食べていきたいんだ。リリアさんたちには少し遅れるって伝えるから、俺の我儘に付き合ってくれるかな?」
「ご主人様……は、はい! 喜んで!」
「じゃあ、あっちに飲食関係の出店があるみたいだから、行ってみよう」
「はい! あっ、その……ご主人様」
「うん?」
「……ありがとうございます」

 控えめに告げられたお礼の言葉に微笑み、アニマと一緒に出店の並ぶエリアへ向かった。

 拝啓、母さん、父さん――オズマさんはなんというか、大人の男性って感じで、頼りになりそうな感じで……出会えて本当に良かったと思う。そして、それとは別の話だけど、アニマの小さな我儘に付き合うことになったよ。いや、我儘……ではないね。これは、そう。自分から要求というものをほとんどしない彼女が、初めて口にしてくれた――可愛らしいお願いだった。



【祝・シリアス先輩あとがき部門一位】

シリアス先輩「ふ、ふふふ、一位……そう、私が一位だ! 時代はシリアスを求めている! ついに長年の苦労が報われる時……ここからはずっとシリアスのターン!!」

???「いや、求められてるのは不遇な貴女であって、シリアスではないですよ」

シリアス先輩「出やがったな、我が宿敵???……しかし、それも今日まで! 私は一位! お前は二位! つまり、私の方が上!! 今までの恨み、存分に味わえ! 覚悟ぉぉぉぉ!!」

???「……まぁ、別に順位が戦闘力に関係する訳じゃないっすけどね」

シリアス先輩「え? あっ……ご、ごめんなさい、調子乗りました……まって……落ち着いて……話し合いを――ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!?」
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