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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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バレンタイン番外編~クロノア&ライフ~

本日十一話目


 神界の上層……そこにある神殿の中では、時空神クロノアが真剣な表情で腕を組んで、一点を見つめていた。

「……いや、ないな……」

 静かにそう呟き首を振る。まるで自分が今見ているものを否定するように……。

「……そう、ありえん話だ。最高神たる我が、人界の行事にうつつを抜かすなど、あってはならぬことだ……うむ、やはりないな……いや、しかし……ミヤマは人間だ。なれば、人間に合わせることも必要か? いやいや、だからと言って、これは無いだろう……我が、ちょ、チョコレートなど……」

 クロノアが腕を組んで見つめる先には、綺麗にラッピングされたチョコレート……言うまでもなく彼女が作ったそれが置いてあった。
 そのチョコレートを射殺さんばかりに睨みながら、なおもクロノアは独り言を続ける。

「そ、そもそも、これを渡せば……ま、まるで我が、ミヤマに想い焦がれているようではないか……い、いや、正直否定する要素は無いが……い、いや、しかし、我にも最高神としての面子があるわけだから……やはりこれは……いや、まて、それだとミヤマより面子を優先したことになってしまう。そ、それは、納得できん」

 ブツブツと呟きながら、何度もチョコレートの前を行ったり来たりするクロノア。
 そもそも、もう作ってしまっているのだから贈ればいいとも思うが、こういった行事とはいままで無縁だった彼女にしてみれば、快人に手渡すのが非常に難易度が高かい。

「む、むぅ、しかし、最高神である我が、ここまで一人の人間に執着して良いものか……いや、ミヤマを有象無象と同じと思っているわけではないが……だとしても、これはないな……想いを伝えるならもっと他の方法でもよかろう……いや、待て待て、それではまるで、我がミヤマに想いを伝えたいようではないか!」

 足を止め、誰もいない虚空に向かっていい訳をしながら首を振る。そもそも、いまの姿が最高神としては滑稽ではあるが、幸か不幸かそれには気付いていない。

「み、ミヤマはシャローヴァナル様が懇意にしている人間で、故に我も友好的に……い、いや、まぁ、我がミヤマ自身を気に入っているという理由も、無いわけではないが……い、いや、まぁ、好きではあるが……しかし、やはりこれは……ぬぉぉぉぉ! いったい、我はどうすれば……」
「素直に渡せばいいのでは?」
「いや、そうは言うがな、我にそのような姿は似合わぬだろう」
「いえ、時空神はとても可愛らしいですよ……ミヤマさんも、きっと喜んでくれます」
「そう、そうか、生命神がそういうのであれば……うん? 生命神……なぁっ!? き、きき、貴様! い、いい、いつからそこに!?」

 クロノアが壊れた人形のような動きで振り返ると、そこにはゆるい微笑みを浮かべている生命神ライフの姿があった。

「最高神たる我が~あたりからですね」
「ほとんど最初からではないか!? そもそもなぜ、我の神殿に居る!!」
「いえ、さしたる用事は無いのですが、通りがかったついでに寄っただけです。しかし、ふふふ……時空神は、ずいぶん……お可愛いのですね」
「ぬぁぁぁぁぁ!? 忘れろ! いますぐに忘れ……うん? おい、待て……なんだそれは……」

 見られたくない場面を見られ、悶絶するクロノアだが、直後にライフの手にあるものを見て硬直した。

「なにが、ですか?」
「……なぜ『豊穣神を魔力で拘束』して引っ張っている?」
「逃げたので、捕まえてきました」
「待て、どういうことだ? 豊穣神になにをやらせた?」
「別になにも……ただ、僭越ながら私もミヤマさんにチョコレートを贈ろうと思いまして、その味見役に選んだだけです。ねぇ、豊穣神? 私の手料理を口に出来るのです。栄誉なことでしょう?」

 魔力によって出来た紐で、あられもない姿で拘束されている豊穣神を見て、クロノアは怪訝そうな表情で尋ねるが……ライフはあっさりと、味見役として連れて来たと言った。
 しかし、心なしか……その笑顔は、黒かった。

「……は、はい。大変栄誉なことです……」

 『過去の経験』からロクなことにならないだろうと逃げた豊穣神だが、つかまってしまえば絶対的な上下社会である神界において、格上の生命神に逆らうことはできない。
 ガタガタと震える豊穣神を見て、ニッコリと恐ろしい笑みを浮かべ、生命神はどこからともなく取り出したチョコレートを差し出す。

「では、さっそくお願いします」
「……は、はは、はい」
「おい、生命神。それは本当に普通のチョコレートなのであろうな?」
「はい。大丈夫ですよ。ちゃんと食べられます」

 クロノアが心配そうに尋ねるが、ライフは問題無いと笑顔で答える。
 どうにも怪しかったが、流石に毒などは入れていないだろうと判断し成り行きを見守っていると、豊穣神が恐る恐るチョコレートを食べる。

「……あれ? 普通に美味しいです。これなら……ふぇっ!? あ、あれ……なんだか、急に体が熱く……え? あ、あ゛あ゛ぁ゛!?」
「お、おいっ、豊穣神。どうした!?」
「ふひゃぁぁぁ!? だ、駄目です。時空神様……い、いま触ったら……んあぁぁぁぁぁぁ……ぁぁ……ぁ……」
「……おい、生命神。なにを入れた? なにがどうなったら、チョコレートを食べただけで痙攣して気絶する?」

 チョコレートを食べた豊穣神は、直後に体を震わせながら叫び声を上げ、震えは痙攣と呼べるレベルにまで達し、ついには白目になって気絶してしまった。

「別になにも? ちょっと気持ちよくなるお薬を入れただけです」
「『媚薬』であろうが!? いったいどんなレベルのものを使った! 神族が気絶するなど異常だそ!?」
「いえ、特別に調合したものです。本来は1000倍に薄めて使いますが、試しに原液で……」
「なにをしておるんだ貴様は!! すぐに治せ、殺す気か!?」
「ふむ、そうですね。では……」

 慌てるクロノアに対し、ライフはあくまで冷静なまま指を横に振る。すると白目をむいて痙攣していた豊穣神が光に包まれる。そして、体内の媚薬は全て消滅した。尤も、気絶したままだが……。

「……生命神、貴様。ミヤマになにを食べさせようとしている……」
「……そろそろ、ミヤマさんも私を組み倒してくれないかと……」
「……ミヤマに毒は効かんぞ?」
「ええ、ですがお酒を飲むとほろ酔い程度まではいくので、それに近い状態に出来ないかと思考錯誤しています」
「なぜ、ミヤマに直接食べさせない?」
「いやですね、時空神。ミヤマさんを実験動物みたいに扱えませんよ」
「豊穣神ならよいのか!? 豊穣神なら!!」
「べつに死んでも生き返らせ……いえ、もちろん体には配慮しています」
「……おい、目を逸らすな」

 その後、クロノアの一喝により、生命神は神族を実験に使うことを固く禁止されのは言うまでもない。



ライフ、腹黒説。
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