挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

329/526

バレンタイン番外編~シア&メギド~

本日十話目!


 魔界でも生半可な覚悟で足を踏み入れることは許されないと言われ、特に危険と認識される場所……戦王の居城。
 天を突くほど巨大なその城のドアを、とある神が無造作に蹴り破る。

「……邪魔するよ。ゴリラ」
「うん? おぉ、シアじゃねぇか……ドア壊すなよ」
「だったら、私の手の届く位置にドアノブつけろ」
「……俺にしたら低過ぎるんだよなぁその位置は……」

 ドアを壊して入ってきた災厄神シアを見て、メギドはのんびりした口調で話す。
 あまりにも無礼な態度ではあるが、互いに気心知れた相手ということもあり、険悪な雰囲気になったりはしなかった。

「んで? 今日はなんだ? 喧嘩でもしにきたのか!」
「それお前がしたいだけだろ……ちょっと、キッチン貸せ」
「お? おぉ……」
「あと、ゴリラ……お前なんで、人化してるの?」

 来るなりキッチンを貸せと言ってくるシアに、メギドはやや戸惑いつつもキッチンへと案内する。
 現在のメギドが普段の巨大な姿ではなく、人化した状態であり、それを疑問に思ったシアが尋ねると、メギドは一冊の本を取り出す。

「元の姿じゃ本が読めねぇからな……新しい魔法理論が出たから、頭に入れてんだよ」
「勤勉なゴリラとか……」
「あ゛? 知力だって力だろ? それを磨くのを怠ったりはしねぇよ」
「相変わらずの鍛錬馬鹿……暑苦し過ぎる」

 そんな風に雑談を交わしながらキッチンに辿り着くと、シアは勝手知ったる他人の家といった感じで、材料を並べ始める。

「……しかし、なに作ろうってんだ?」
「チョコレート……」
「あん? チョコレートだぁ? お前、なんであんな甘ったるいもの……」

 シアの口からでたチョコレートという言葉を聞き、大の辛党であるメギドは眉をしかめる。
 辛党なのはシアも同様……というよりは、そもそもメギドとシアが親友関係なのは、互いに辛いものが好きという共通点から。
 だからこそ、チョコレートを作るというシアの言葉が信じられなかった。

「……チョコレートにも色々種類がある……ほら、こんなのもある」
「うん? どれどれ……ほぅ、ちと苦みが足りねぇが、中々じゃねぇか、なんてチョコレートだ?」
「カカオ99%チョコレート……これをベースにする」

 猛烈に苦いカカオ99%チョコレートを食べ、苦みが足りないと言ってのけるメギドに、シアも同感だと頷きながら、それをベースに改良すると告げる。

「……まぁ、あの人間にはちょっとばかし世話になったし……べ、別にバレンタインだからなんだってわけじゃないけど……ま、まぁ、慈悲深い神としては、チョコレートの一つぐらいくれてやろうと思ってね」
「おぉ、カイトにやんのか……じゃあ、美味いやつ作ってやってくれ!」
「料理は結構得意……問題無い。ああ、そうだ。ゴリラ、『クリムゾンソース』あるか?」
「勿論あるぜ……『何本』使うんだ?」
「とりあえず、一本で試してみる」

 シアの言葉を聞き、メギドはキッチンの棚から燃え盛る炎のように赤いソースを取り出し、それをシアに手渡す。
 するとシアはなんの躊躇もなく、材料の中にそれを丸々一本加えてチョコレート作りを進めていった。







 しばらく経ち、試作品のチョコレートが完成した。
 赤黒いそのチョコレートを、シアとメギドは味見の為に口に運び……微妙な顔になる。

「おい……いくらなんでも『甘すぎ』ねぇか?」
「……私もそう思った。辛さが足りない」
「クリムゾンソース追加するか?」
「うん……『五本』入れよう」
「だな」

 常人なら火を吹くレベルの辛さではあったが、二人からしてみれば甘すぎた。
 というのも、辛味とは痛覚で感じる味であり、痛みに対して強ければ強いほど、辛さは感じにくくなる。
 そもそもの耐久力が桁違いというのも原因の一つではあるが、それ以上に……メギドは生粋のバトルマニアであり、痛みは喜び。シアも本人は否定するが性質的に痛みを快楽に感じるドMであるため、両者とも異常なほど痛みに強い。

 そのため、この猛烈に辛いチョコレートも……二人にしてみれば物足りないという結果になってしまった。
 そしてさらにクリムゾンソースが投入され、他の材料など使っていないのに……チョコレートは真っ赤に変色してしまう。

 見た目だけならストロベリーチョコかと思うような出来だが、実際は一滴でタバスコ一本分に匹敵するほど辛いクリムゾンソースが、これでもかというほど使われた一品。
 もはやチョコレートではなく、クリムゾンソースの塊と化したそれを二人は口に運び……今度は笑みを浮かべる。

「おぉ、いい感じじゃねぇか!」
「うん、美味しい……流石、私」
「なんだ、チョコレートってのも結構美味いもんだな」
「でしょ? あの人間も泣いて喜ぶだろう」

 確かにそれを食べたら、快人は泣くだろう……喜びとは別の感情で。

「しっかし、テメェがここまでしてやるなんざ……カイトは愛されてんな~」
「なっ!? ば、馬鹿! わ、私は、あくまで、神としての慈悲を……」
「あ~はいはい」
「こ、このっ、ゴリラが……」

 顔を真っ赤にして抗議するシアに対し、メギドは軽い口調で答える。
 それを見てプルプルと体を震わせながら、ふとシアはキッチンの端に置いてある袋に気がつく。

「……ゴリラ、あの袋はなに?」
「あ゛? あぁ……あれは、その『チョコレートベビーカステラ』だ……」
「……なにその聞くだけで甘そうな名前」
「クロムエイナがくれたんだよ……だから、全部食う」
「……お前、正気か? 地獄だぞ?」
「……クロムエイナに貰ったものを残すぐらいなら、俺は死ぬ」
「……マザコン」
「うるせぇ!」

 甘いものは嫌いだが、クロムエイナから貰ったのであれば全て食べると告げるメギドを、シアは半目で見ながら呟く。
 その直後、メギドが反射的に拳を振るい、シアは上半身を逸らして回避する。

「マザコンを、マザコンといってなにが悪い?」
「あ゛? てめぇ、やんのか? カイトに素直になれぇツンデレ女のくせして……」
「あ゛ん? ゴリラ、お前……死にたいらしいな?」
「上等だ! 表へ出やがれ!」
「望むところ……どっちが上かハッキリさせてやる!」

 魔力が暴風となって吹き荒れ、メギドが本来の姿に戻り、シアは大鎌を取り出す。
 そのまま二人は城の外に出て、激しい戦闘を繰り広げることになり、キッチンには真っ赤なチョコレートだけが残された。

 そのチョコレートを口にした快人が、いまだかつてない地獄を味わうのは……もうそう遠くない話だった。



二人は仲良し。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ