同居者③
ヴァネッサさんとの部屋飲み、ノーブラで下着プラスTシャツというかなりきわどい格好で対面に座っているヴァネッサさんは見た目もダウナー系美人って感じで、普通ならかなりドギマギしそうなものだが、とりあえずいまのところはビール飲みながらタバコ吸ってる姿や仕草があまりにもおっさん感が強くて、ギリギリ中和されて……中和かコレ? 混沌になってるだけな気もするが……
「そういえば、ヴァネッサさんは今日はカジノでなんのゲームをしたんですか?」
「今日はセブンカードポーカーをやってきたね」
「あ~たしか、七枚の手札から五枚選んで役を作るやつでしたっけ?」
「そうそう、私がやったやつは勝ち負けだけじゃなくて、いかに強い役で買ったかで倍率が変わるタイプだったね。上手く強い役を作って勝てばそれだけ大きくリターンがある感じだね」
ヴァネッサさんがプレイしたセブンカードポーカーというのは、以前俺がアリスといったカジノにもあったゲームだ。
通常は五枚でプレイするポーカーの手札が七枚になったもので、その分役を作りやすいのだが必然的にディーラー側も強い役を出してくることが多いのでツーペアとかではほぼ勝てない感じで、少し大味になったポーカーという感じのゲームだ。
「いや~惜しかったんだよ。最後のゲームのチェンジでハートが来てればフラッシュだったし、3が来てればストレートだったし、ハートの3ならストレートフラッシュって感じの熱い手札だったんだよ。完全に流れが来てると思って大きく張ったんだけど……結果はまさかの3枚チェンジでハートも3も引けずにワンペアで終わりだったね」
「それは惜しいですね。3はともかく、確率的にハート引いてフラッシュは十分あり得そうな感じですしね。いやでも、チェンジ時点で役がまだできてないなら大きく張るべきでは無かった気も……」
「後になるとそう思うんだけどね~。やってる時はつい張っちゃうよね……カイトくんは、カジノとか強そうだけど?」
「王都の北区近くのカジノなら出禁になってます」
「あはは、カイトくんが不正とかするとは思えないし、勝ちすぎて出禁のパターンかな? なにで遊んだの?」
以前アリスと一緒に行って、カジノの支配人に「お願いですからもう来ないでください」と半泣きで土下座されて出禁になった話をすると、ヴァネッサさんは愉快そうに膝を叩く。
「いろいろやりましたが、ポーカーだと……ジョーカー有りのタイプのやつをやりましたね」
「ああ、ファイブカードが一番強い役になるやつだね。それで、どんな無双っぷりを発揮したの?」
「三回やりましたが、カード配られた時点で、ファイブカード、ロイヤルストレートフラッシュ、ファイブカードでしたね」
「ぶあははは、そりゃ反則だ! 祝福の影響でカイトくんの運はとんでもないもんね。あ~でも、常勝過ぎてもつまらないか……カイトくんの場合は、お金欲しいわけじゃないだろうし」
実際のところあの時点ではそんな感じだったが、いまはあの時以上にいろいろな祝福があるっぽいので、三回全部初手ファイブカードになりそうな気もする。
確かにそれではヴァネッサさんの言う通りに楽しくないので、出禁になってなくてもカジノにはいかない気がする。
「ああでも、モンスターレースとかで自分で考えて選ぶと祝福の影響はないんですよ。よく分からないから適当に~ってやると運で当たっちゃうんですけど……」
「あ~なるほど、自分で考えて選ぶパターンなら大丈夫なんだ。モンスターレースは、私も好きだけど王都にはレース場無いんだよね。カジノと客の取り合いになるからかもだけど……」
「俺が遊んだ時も、アルクレシア帝国でしたね」
「そういえば、カイトくんの世界じゃ馬のレースでお金かけたりするんだっけ?」
「ええ、競馬ですね。こっちの世界では見たこと無いですが……」
俺の印象としてはモンスターレースがいわゆる競馬の位置づけなのだと思っていたが、実際のところはどうなのだろうか? 馬のレース自体はあったりするんだろうか?
「馬のレースはあるけど、貴族とかが自分の所有する馬を競わせる感じで、賭けはほぼない……というか一般にはあんまり公開されない、貴族主催の行事のひとつみたいな感じかな。リリアちゃんもたまに所有馬を出してるよ。まぁ、あくまで貴族間の付き合いの一巻で、リリアちゃん自身はあまり興味無さそうだけどね」
「ああ、馬のレース自体はあるんですね。じゃあ、競馬もあってもおかしくなさそうですけど……やっぱモンスターレースがあるからですかね?」
「それもあるとは思うけど、単純に馬型の魔物と普通の馬の区別が難しいからじゃないかな? 見た目ほとんど変わらないのが多いし……でも見た目は変わらなくても、足は魔力がある魔物の方が圧倒的に早いしね」
「でも魔力見れば分かりそうな……あっ、そっか」
「そうそう、人族は魔法使える人自体が少ないからね。負けた時とかに、馬型の魔物が紛れ込んでたとか騒がれても大変だろうし賭博としてやるには面倒が多いんだろうね~」
「なるほど……」
魔物と普通の動物の違いは魔力があるかどうかなので、魔法が使える人が見ればすぐに分かるが、魔法習得者が少ない人族だと見た目で区別がつかないとトラブルの元になるわけだ。
魔物の参加を有りにするなら、それこそモンスターレースでいいわけだし、競馬でやる意味もない感じか……。
「さすが、ヴァネッサさん……ギャンブル関連に詳しい」
「任せてよ。人生に対して役に立たない知識の豊富さなら自信あるから……チョコレート食べた時って、脳がキスの4倍ぐらい興奮するらしいよ……試してみる?」
「ビールにチョコレートは合わなくないですか?」
「それは確かに……ワインとかウィスキー飲んでる時にするかね~」
からかい半分の冗談だとは思うのだが……なんだろう? 仮にノリではいと返答した場合、ヴァネッサさんは普通にやってきそうな気がするので、話題を逸らして対応することにした。
シリアス先輩「元々は、ダークチョコレートを舌の上で溶かした場合の快感の持続時間が、濃厚なキスの四倍って感じの話じゃなかったかな……」




